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マイナス金利、家計にも波及

2016/2/9 18:00 (2016/3/9 18:00更新)
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金融政策決定会合でマイナス金利政策の導入を決定し、記者会見する日銀の黒田総裁(1月29日、日銀本店)

金融政策決定会合でマイナス金利政策の導入を決定し、記者会見する日銀の黒田総裁(1月29日、日銀本店)

 2月半ばに適用が始まったマイナス金利政策。家計への影響が鮮明になってきた。

■マイナス金利、対象は民間銀行の日銀への預金

(マイナス金利政策とは)中央銀行が政策金利をゼロ%よりも低い水準にする政策。民間銀行が中央銀行に預け入れる預金の金利をマイナスにするのが一般的。

民間銀行は日銀に資金を預けると、金利を支払う必要が出てくるため、民間企業の融資や有価証券の購入に資金を振り向ける効果を見込む。中央銀行が供給した資金を実体経済に回りやすくする狙いがある。

マイナス金利政策とは(1月29日)

背水のマイナス金利 日銀、異次元緩和を強化(1月30日)

日銀は1月29日にマイナス金利政策の導入を決め、2月16日から実際に適用を始めた。

具体的には日銀が金融機関からお金を預かる日銀当座預金の一部に年マイナス0.1%の金利を課した。これまでは日銀にお金を預けると年0.1%の金利を得られたが、新たに預けるお金の一部は反対に金利を取られる形になる。

金融機関が日銀に対し、貸金庫の利用料を支払うようなイメージだ。

本来の狙いは? 投資・消費促しデフレ脱却(2月27日)

■本来の目的はデフレ脱却

異次元緩和に新たにマイナス金利政策を加えるように日銀の背中を押したのは、年明けからの金融市場の動揺だ。

企業や家計が景気の先行きに対する不安感から「物価は上がりづらい」と考え始めると、お金を使うことを次第にためらうようになり、実際の物価も上がりづらくなる。

長期にわたって経済と物価の悪循環が続くデフレ状態に逆戻りさせないため、日銀は過去に例のないマイナス金利政策を導入してでも阻止する姿勢を示したわけだ。

本来の狙いは? 投資・消費促しデフレ脱却(2月27日)

■私たちの暮らしはどう変わる?

政策の影響がはっきりと表れるのは様々な金利の低下だ。金利が下がると、暮らしにはプラスとマイナスの両面がある。

例えば銀行にお金を預ける際に得られる利息が少なくなる。反対に住宅や自動車を買う場合に組むローンの利子も減ることになる。

暮らし 影響は両面 預金金利下げ続く 住宅ローン負担減(2月27日)

普通預金金利を0.001%に引き下げた三井住友銀行(2月16日、東京・丸の内)

普通預金金利を0.001%に引き下げた三井住友銀行(2月16日、東京・丸の内)

■預金金利の引き下げ相次ぐ

いち早く影響が表れたのはマイナス面に当たる預金金利の低下だ。

日銀の決定を受け、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3メガバンクは普通預金金利を一斉に年0.02%から年0.001%に引き下げた。

10万円の預金で年に20円もらえた利息(税引き前)はわずか1円になる。ゆうちょ銀行なども引き下げに動いた。

暮らし 影響は両面 預金金利下げ続く 住宅ローン負担減(2月27日)

みずほ銀行は4日、定期預金の金利を7日から金額や期間にかかわらず年0.025%から年0.01%に引き下げると発表した。三井住友信託銀行も一部を除く大半の定期預金で同様に引き下げる。

三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行はすでに同水準に下げており、大手5行で預金金利引き下げの足並みがそろった。

みずほ銀、定期預金金利年0.01%に引き下げ(3月4日)

定期預金金利の引き下げでも大手行の足並みがそろった
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定期預金金利の引き下げでも大手行の足並みがそろった

■マイナス金利政策でなぜ預金金利下がる?

カギは銀行の収益構造だ。

銀行は預金を原資にして国債や株式に投資したり企業や個人にお金を貸したりする。その利益の一部を預金の利息に回す。

マイナス金利政策では銀行が日銀に預けるお金にマイナス金利が課される。銀行は代わりに国債への投資や企業への融資にお金を振り向けるため、国債や融資の金利が下がって銀行の収益が減る。当然、預金金利として利息に回すお金も少なくなる。

暮らし 影響は両面 預金金利下げ続く 住宅ローン負担減(2月27日)

 預金金利はどこまで下がるのか?

銀行ごとの経営判断だが今のところ金利がマイナスになる可能性は低い。預金が流出する恐れがあるからだ。

マイナス金利政策で先行する欧州でも預金金利がゼロを下回った例は少ない。

■MMF、事実上姿消す

 資産運用面では預金以外にも影響が表れている。

野村アセットマネジメントなど資産運用大手はMMF(マネー・マネージメント・ファンド)の運用をやめ、資産を投資家に返す方針を固めた。マイナス金利のあおりで安定した利回りを確保できなくなったため。

MMFを扱う全11社が償還する見通しで、一時は残高が20兆円を超えた人気投資信託が事実上、姿を消す。

生保では、貯蓄性を重視した商品の販売を取りやめる動きが広がっている。

T&Dフィナンシャル生命保険は一時払い終身保険の一部販売を16日に休止する。太陽生命保険も提携先が取り扱う一時払い年金保険の販売を今月末でやめる。

MMF、全社が資金返還 マイナス金利で運用難(3月8日)

■住宅ローン金利は引き下げ競争

一方、近い将来に住居や自動車などの大きな買い物を考えている人はプラス面の恩恵を受けられそうだ。

暮らし 影響は両面 預金金利下げ続く 住宅ローン負担減(2月27日)

住宅ローンの商品説明書

住宅ローンの商品説明書

三井住友銀行とりそな銀行は2月29日、3月適用分の住宅ローン金利を引き下げると発表した。10年固定型の最優遇金利は2月から0.1%下がって年0.8%となる。

みずほ銀行も住宅ローン金利の引き下げを正式に発表した。すでに金利を公表している三菱東京UFJ銀行を含む大手4行で、10年固定型の最優遇金利が年0.8%で並ぶことになる。

三井住友信託銀行も3月1日から同行として最低の年0.5%に金利を下げることを公表している。

三井住友・みずほ・りそな、住宅ローン金利引き下げ発表(2月29日)

日銀のマイナス金利政策を受け、住宅ローンの借り換えが急増している。三井住友銀行など主要8行の2月の借り換え申込件数は約2万8千件で、前年同月比2.5倍に増えた。各行が住宅ローン金利を過去最低水準に引き下げたため。

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集計したのは三菱東京UFJ銀行をのぞく主要8行(三井住友、みずほ、りそな、三井住友信託、新生、住信SBI、ソニー、イオン)の借り換え申込件数。1月と比べても4倍に増えた。

■金利以外のお得感でアピール

銀行が金利以外で顧客に還元する動きが目立ってきた。

新生銀行は投資信託や外貨預金の取引で共通ポイント「Tポイント」がたまるサービスを始める。

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イオン銀行では、住宅ローンの利用者が買い物の割引を受けられるサービスの申し込みが急増している。

マイナス金利政策で預金金利の引き下げが相次ぐなか、金利以外のお得感を打ち出して顧客にアピールする動きが一段と広がりそうだ。

銀行、「金利以外」でお得感 新生銀はTポイント(3月6日)

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