IoT対応の遅れが日本にもたらす恐怖--NTT コミュニケーションズ指摘

鈴木恭子 怒賀新也 (編集部) 2016年03月15日 06時45分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

IoT対応の遅れが招く恐怖

 IoT(Internet of Things)の普及がグローバルで進んでいる。特にプラント、ガス・水道、工場などのエンジニアリング領域では急拡大している。しかし、日本企業はIoTの取り組みに積極的とは言いがたい。

 「IoTの取り組みの遅れにより、無視できない恐怖が待ち受けている」と警鐘を鳴らすのは、NTTコミュニケーションズ 技術開発部 IoTクラウド戦略ユニット 経営企画部 IoT推進室 IoT・エバンジェリストの境野哲氏だ。同氏は「セキュリティ」と「国際競争力」の観点から、IoTに取り組む必要性を訴える。同氏の言う「無視できない恐怖」とは何か、そしてそれを取り払うために日本企業はすべきことは何か。話を聞いた。

――IoTをどのように定義していますか?

 全体的な定義は、文字どおり「Thing(モノ)」がネットワークに接続されている状態を指していると思います。

NTTコミュニケーションズ 技術開発部 IoTクラウド戦略ユニット 経営企画部 IoT推進室 IoT・エバンジェリストの境野哲氏
NTTコミュニケーションズ 技術開発部 IoTクラウド戦略ユニット 経営企画部 IoT推進室 IoT・エバンジェリストの境野哲氏

 しかし、これでは“幅”が広すぎるので、IoTについて議論する場合には、その“モノ”が民生品なのか、公共インフラなのか 製造機器なのかを明らかにしてから議論するようにしています。

 また、「Internet」はオープンなネットワーク網だけでなく、閉域網も含め、相互接続を実現するネットワークであると定義しています。

 今は、「IoTとそれ以外」という線引きは難しくなっていると考えます。例えば、街中にあるセンサカメラとそのデータを扱うパソコンは接続されています。これをIoTと定義するかは意見の分かれるところでしょう。


――エンジニアリング領域をコントロールする制御系システムのセキュリティリスクを指摘しています。具体的にどのようなリスクなのでしょうか。


 制御系システムは、工場内の製造機械や、製薬/化学工場にあるモーターやバルブといった機器をコントロールするものです。鉄道車両や交通機関の信号システム、金融システムなど、ありとあらゆるシステムを制御しています。

 もし、制御システム(ソフトウエア)の脆弱性が原因で、システムが正常に動作しなければ、甚大な事故が発生します。例えば、スマートハウスの制御システムでトラブルが発生すれば、一戸だけでなく接続している周辺地域まで停電する可能性があります。

 交通インフラの運用を担うシステムが誤作動した場合には、遮断機が下りなかったり信号機が正常に動作しなかったりして人身事故につながる危険性もあるのです。

日本にはないインシデント報告義務

 実は、こうした制御系システムが、情報系のシステムと同じくらいサイバー攻撃のターゲットになっているのです。米国や欧州政府は、サイバーセキュリティインシデントが発生した場合、政府への報告を義務づけています。

 その統計を見ると、北米では、電機、自動車、金属といった「クリティカル・マニュファクチャリング」と呼ばれる重要産業でインシデントが数多く発生しています。また、ガス、電気、石油などのエネルギー産業に対する攻撃も急増しています。こうした社会インフラの根幹を支える産業の制御系システムが、サイバー攻撃のターゲットになっているのが現状です。

 一方、日本企業の制御系システムに対するサイバー攻撃は、その実態がよく分かっていません。日本では欧米のようにサイバーセキュリティインシデント発生の報告義務がありません。ですから、インシデントが発生しても、その情報が公開されないのです。

――制御系システムへのサイバー攻撃として、過去にはどのような攻撃があったのでしょうか。

 制御系システム攻撃の“先駆け”となったのは、2010年に報告された「Stuxnet(スタックスネット) 」です。これは、イランの核施設にあるウランを濃縮する遠心分離機のスピードを制御するシステムをターゲットにしたマルウエアでした。

 同施設が所有する遠心分離機の20%が破損したとも言われています。また、2014年12月にはドイツの製鉄所がサイバー攻撃にあい、溶鉱炉が正常にシャットダウンできず、溶鉱炉が廃炉になったという事件がありました。こうした事件は、決して他人事ではありません。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
データドリブンな経営
情報通信技術の新しい使い方
米ZDNet編集長Larryの独り言
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
田中克己「2020年のIT企業」
大木豊成「Apple法人ユースの取説」
林雅之「スマートマシン時代」
デジタルバリューシフト
モノのインターネットの衝撃
松岡功「一言もの申す」
三国大洋のスクラップブック
大河原克行のエンプラ徒然
今週の明言
アナリストの視点
コミュニケーション
情報系システム最適化
モバイル
モバイルファーストは不可逆
通信のゆくえを追う
スマートデバイス戦略
セキュリティ
ベネッセ情報漏えい
ネットワークセキュリティ
セキュリティの論点
OS
XP後のコンピュータ
スペシャル
より賢く活用するためのOSS最新動向
HPE Discover
Oracle OpenWorld
AWS re:Invent 2015 Report
「Windows 10」法人導入の手引き
北川裕康「データアナリティクスの勘所」
Windows Server 2003サポート終了へ秒読み
米株式動向
マーケティングオートメーション
AWS re:Invent 2014
Teradata 2014 PARTNERS
Dreamforce 2014
Windows Server 2003サポート終了
実践ビッグデータ
VMworld 2014
中国ビジネス四方山話
日本株展望
ベトナムでビジネス
アジアのIT
10の事情
エンタープライズトレンド
クラウドと仮想化
NSAデータ収集問題