中国政府が、同政府の最重要とする指名手配者の引き渡しを米連邦検察が拒んだ場合は、米国に司法的な協力を停止すると警告していることが、米中両政府の関係者の話で明らかになった。
中国公安省は米国在住の実業家、令完成氏の引き渡しを昨年から強く求めている。
同氏の兄の計画氏は胡錦濤前国家主席の側近だった人で、中国共産党の反汚職運動で捕まった最も職位の高い人物の1人だ。
この引き渡し交渉に詳しい政府関係者によると、中国の警察は米国の警察に対し、もし米国側が今月、令氏の引き渡しに原則的に合意しない場合は、今後は協力しないと数カ月前から伝えてきているという。
中国公安省国際協力局の廖進栄局長は今月ワシントンを訪問し、令氏の件について協議した。
令氏は、同氏の兄が胡錦濤政権の高官だったことから非常に価値の高い情報を持っていると見られており、米国が中国への引き渡しをしぶることが予想される。
■汚職関与の疑い
中国政府が令氏に掛けている容疑について米国側で捜査を担当しているのは、令氏が以前住んでいたカリフォルニア州サクラメントの連邦検察官、ニラブ・デサイ氏だ。同氏のチームは1月に北京を訪れている。
この協議に詳しい人物によると、中国警察は米連邦検察に対し、令氏が少なくとも3件の汚職事件や10億ドルにものぼる資金洗浄に関与した疑いがあると伝えている。
だが、米政府関係者は令氏がそれほど巨額の資金を動かしたり蓄えたりした証拠を発見できていない。
また、米政府関係者は中国公安省が指摘した2件については引き渡しに十分な根拠がないと疑っているものの、米国の上場企業が関係する3つ目の容疑については捜査を続けている。
クリントン政権時代にホワイトハウスで法律顧問を務めたワシントンに拠点を置く弁護士、グレッグ・スミス氏は「私のクライアントの令完成氏に関して多くの誤った情報が流されている。最初は令氏が(中国の)国家機密を漏らしたということで、今度は汚職だ」と話した。
同氏はまた、「令氏が悪者であると世間を納得させようとしてマスコミを操る組織立った運動が繰り広げられている」とした上で「しかし、米政府はこの状況下で責任を持って適切に行動し、令氏の容疑に関して捜査する際にはそれがどんなにでたらめな容疑であっても令氏の権利を尊重してくれると信じている」とも述べた。