日本労働者の非正規化?中年フリーターを含む非正規社員の割合が異常に高くなっているのは何故?
アベノミクスによる景気回復を背景に、2016年1月の有効求人倍率(厚生労働省が発表)が1.28倍にまで改善し、1991年12月以来24年ぶりの高い水準になるなど、求人倍率は上昇を続けています。
上記のグラフを見ると、2008年のリーマンショック以降、求人倍率はかなり回復してきており、求職者にとって仕事を探しやすい環境になってきてることが見てとれます。
(有効求人倍率とは、求職者1人当たりに企業から何件の求人があったかを示す指標で、これが高ければ高いほど求職者は仕事を見つけるやすくなりますし、逆に低ければ低いほど仕事が見つかりにくくなります。)
しかし一方で、2015年11月、厚生労働省の「雇用の構造に関する実態調査」の発表の際に『日本における非正規社員の割合が統計開始後初めて40%を越えた』ことが話題になりました。
これらのニュースをどう捉えればいいのでしょう?
『日本では非正規社員ばかり増えて、正社員の仕事を見つけるのは難しくなっているんじゃないの?非正規社員ばかりが増えたんじゃ、一般の労働者はあまり景気回復の恩恵を受けていないじゃないの?自分もあまり景気回復を感じないしなあ。』
このように思ってしまうかもしれません。今回はそうした疑問を解決すべく求人市場における統計データを整理してみました。
▼雇用形態別の非正規社員推移
では非正規社員はどのように増えているのでしょうか?厚生労働省が公表しているアルバイト・パート、派遣社員、契約社員・嘱託別に数の推移を見てみましょう。
近年における非正規社員の増加の要因は、パート・アルバイト、派遣社員が増えたことであることが分かります。非正規社員全体では、2004年の1,564万人から2015年の1,980万人に増加しています。
▼非正規社員の年齢別推移
それでは次に2005年と2015年における非正規社員数を年齢別に見てみましょう。
ここから読み取れる情報として、以下のようなものがあります。
1. 65歳以上の非正規社員が大きく増えている。
2. 2015年における34歳以下の非正規社員は2005年と比較して減少している。
3. 35歳~64歳までの非正規社員も増えている。
1については、団塊の世代が大量に退職し、非正規社員として再就職した結果であると考えられます。また、2については、若年層における非正規社員は減っており、この層の非正規社員は増加どころか減少していることが分かります。
最後に3について見ていきましょう。下記の表は労働力人口等の変化(2014年平均-2002年平均、出典:http://www.stat.go.jp/info/today/097.htm#k14)です。上記した2005年-2015年の期間と多少ずれるのですが、大枠は同じなので考察を進めていきます。
マークしたところを特に見ていただきたいのですが、この期間増加した非正規社員の多くの方は女性となっています。専業主婦さんなど、元々仕事に従事していなかった層は労働を開始する際に非正規雇用を希望する者が多く、こういった層がパートタイムとして勤務を始めたことから35歳~64歳の非正規社員の増加につながったと考えられます。
(元々女性の35歳~64歳の年齢層における仕事に従事していない割合が高かったことも、この層の女性がパートタイムとして勤務を始めたと考えられる理由の一つです。)
そして、男性の正規社員は主に団塊の世代の退職によって減少していると思われます。
▼改善する正社員の求人倍率
足元を見れば、正社員の求人倍率は上昇傾向にあります。厚生労働省が発表する正社員の求人倍率も増加傾向にあり、正社員の仕事を見つけやすい環境になってきていると言えます。
もちろん、『中年フリーター』と言われ、なかなか定職につけずにアルバイトなどで食いつなぐ層が存在することは事実です。ただ、非正規社員が増えている主な理由としては、高齢者の非正規社員化とパート層の増加で、非正規社員の割合増加という一側面だけを見て、景気に対する過度な懸念を持つ必要がないことが分かります。
今回ご紹介したようなデータを良く見てみることで、非正規社員増加という現象がなぜ起こっているかをご理解いただけたのではないかと思います。
▼まとめ
一般的に言うと、求人倍率が上がってくると、求職者は給与が高いなど、条件の良い仕事に就ける可能性が高まります。今回ご紹介した内容から、
・実は正社員も非正規社員ともに求人倍率が高まっていること
・非正規社員の割合が上昇していますが、その大きな原因は高齢者の非正規社員化とパート層の増加ということ
が分かりましたので、実は雇用状況はしっかり改善してきているんだいう認識を持っていいと思います。
少し難しい話でしたが、アルバイトや正社員などの仕事を探す上でも、こうした求人市場の動向を頭に入れておくとよいでしょう。特に若年層の非正規社員は減少しているので、仕事を探す若い方は過度に心配することはないと言えるかもしれません。