Updated: Tokyo  2016/03/15 09:59  |  New York  2016/03/14 20:59  |  London  2016/03/15 00:59
 

0.001%の超低利にも関わらず銀行預金が増加-融資に回らず滞留

Share Google チェック

    (ブルームバーグ):マイナス金利政策を受けて金利がほぼゼロに近いにもかかわらず、銀行預金が増える奇妙な現象が起きている。

三菱UFJフィナンシャル・グループなどの銀行は、日本銀行のマイナス金利政策導入を受け預金金利を過去最低の年0.001%に引き下げた。しかし、全国銀行協会の統計によれば2月末の都市銀行(5行)の預金残高は1月末に比べ2.8%増加。ドイツ証券やマネックス証券では金融商品のMMFから資金が流入したとみている。

マイナス金利政策を受け、長期金利の指標となる新発国債10年物の利回りが史上初のマイナスを記録。その影響で預金金利が下がる中でも企業や家計の持つ資金は投資に向かっていない。これは貯蓄から投資への動きを促し景気浮揚を目指す安倍晋三首相の思惑と正反対の動きだ。銀行では融資も大きく伸びていない。

マネックス証券の大槻奈那チーフアナリストは預金増加について、これでは「『投資から貯蓄へ』と真逆の状態だ」と指摘。「まだマイナス金利の中で投資を拡大していく気配が見えない」とし、預金の増加傾向は続くと見通している。

預貸ギャップ

マイナス金利は民間銀行の日銀への当座預金の一部に2月16日から適用された。市場金利はそれに先立ち政策導入発表後の2月上旬から低下を始めていた。

預金から貸出金を引いた「預貸ギャップ」は2月で205兆8262億円と過去最高水準にある。ブルームバーグの調べでは、マイナス金利下にある欧州主要47行の預貸率平均133%に対して、日本の主要87行は69%とカネ余り状態にある。

カネ余りの中での預金増加は銀行にとって新たな悩みの種となる。預金管理コスト拡大に伴う手数料導入の是非など課題が浮上するからだ。

口座手数料

ドイツ証の村木正雄、鳥居裕両アナリストは、このままではマイナス金利を避けようとする資金が際限なく銀行預金に流入し、銀行はいずれ法人大口預金や金銭信託の受け入れを制限することになるだろうと8日付リポートで指摘した。マネックス証の大槻氏は、手数料を導入するなら法人取引が先と予想する。

MUFG広報の北浦太樹氏は、取引先企業向けなど預金手数料について「検討していない」と答えた。三井住友フィナンシャルグループとみずほフィナンシャルグループの広報担当は何も決まっていないと述べた。

BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、民間銀行にとってマイナス金利政策で収益低下が先行するということは「夢にも思っていなかったのだろう」と11日付リポートで述べた。金融機関の業績に悪影響をもたらすことから「評判がすこぶる悪い」と指摘した。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 河元伸吾 skawamoto2@bloomberg.net;東京 Gareth Allan gallan11@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:宮沢祐介 ymiyazawa3@bloomberg.net 平野和

更新日時: 2016/03/15 07:01 JST

 
 
 
最新のマーケット情報を携帯でご覧いただけます。ぜひご利用ください。