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【神奈川】

川崎中1殺害 18歳少年に不定期刑判決 成育環境の影響が浮き彫り

傷害致死罪に問われた少年の判決公判が開かれた法廷=横浜市中区で

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 川崎市の多摩川河川敷で中学一年の上村遼太さん=当時(13)=が殺害された事件で、傷害致死罪で十四日に不定期刑を言い渡された少年(18)の公判では、少年が複雑な家庭環境で孤立し、非行の末に事件を起こした背景が明らかになった。主導的立場の無職少年(19)も同様で、専門家は社会が家庭の問題に早く気付く必要があると指摘する。 (猪飼なつみ、宮畑譲)

 審理では、十八歳少年が、親戚がいる外国に本人の意思に反して一人で置き去りにされたことなどが明らかになり、十四日の判決はこうした成育歴に由来する性格が犯行に影響したと指摘した。一方、無職少年も父親から頻繁に殴る蹴るの暴行を受けていたことが、二月の公判で判明している。判決は、共感性の欠如や暴力を容認する価値観が「相当大きな影響を与えている」としていた。

 二人の少年は、外国出身の母親とうまくコミュニケーションを取れていなかったことも共通している。十八歳少年は母親が話す外国語が理解できず、公判では「怒られても内容がわからなくて聞き流していた」と答えていた。無職少年も困ったことがあっても親に相談しなかったと述べ、母親は「息子と会話が足らなかった」と泣きながら証言していた。

 十四日、十八歳少年の判決後に会見した裁判員からは「成育環境を知り、彼らだけの責任ではないと思った」と社会で受け止める必要性を説く声が出た。「青少年を心を込めてケアをする動きにつなげなければ」との感想も漏れた。

 横浜市港南区で保護司として活動し、家庭に居場所がなく仲間を求めて非行グループと付き合う少年たちを更生に向かわせてきた大木恵美子さん(63)は「親が悩みを抱えているケースも多い。親からもじっくり話を聞くようにしている」と話す。

 移民政策に詳しい静岡県立大国際関係学部の高畑幸准教授は「外国出身の母親と日本で育った子どもがうまく意思疎通できない例はよくある。社会と家庭の数少ない接点が学校。こうした子どもが孤立しないよう、まず先生たちが気を配ってほしい」と話している。

 

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