「収益計画の大幅な見直しについて、ご理解いただきたい」
2月中旬、マイナス金利政策のスタート直後に開かれた意見交換会の場で、地方銀行から金融庁に対してそんな泣きが入った。
銀行にとって、資金の調達コストに当たる預金金利はゼロに近づいて下げ止まる一方、収益に当たる資金運用サイドの金利はマイナス圏に突入するなど、“底なし沼”の状態だ。銀行界では、「これが通常の金利水準と言われたら経営が成り立たない」(中位地銀首脳)といった悲鳴が響いている。
そんな金利水準の状況下で、銀行界ではにわかに「預金リスク」が浮上している。預金が集まってきても運用先がないばかりか、そのままでは残高の増加分にマイナス金利が課される、日本銀行の当座預金に資金を入れるほかなくなってしまうからだ。
そのため、銀行間で預金の押し付け合いが始まっているという見方が広まってきた。その証左の一つが、全国銀行協会が3月7日に公表した預金・貸出金速報だ。
2月末時点で、都市銀行(三菱東京UFJ、三井住友、みずほ、りそな、埼玉りそなの5行)の預金残高合計は前月末比で約8.4兆円、2.8%も増え、前年同月末比では約17.2兆円、5.9%と大幅な伸びを記録した。一方、地銀の伸びは小幅にとどまった。
ここから浮かび上がってくるのが、地銀が都銀へ預金を押し付けている構図だ。かつて銀行の飯の種だった預金が「ババ抜きのババ扱い」(金融庁幹部)されるという異常事態を告げているのだ。