争点は7つ
先週水曜日(3月9日)、稼働中の原子力発電所の運転を差し止める仮処分がはじめて下った。
原発から70㎞圏内の滋賀県民29人の訴えに応じ、大津地裁が関西電力の高浜原子力発電所3、4号機(3号機は1月29日に再稼働。4号機は2月26日に再稼働したものの、同29日に運転中のトラブルで緊急停止していた)の運転に待ったをかけたのだ。
仮処分を下した山本善彦裁判長は、2014年11月に、同じ高浜原発の運転差し止めを求める仮処分の申請を却下している。つまり、同裁判長は、わずか1年4ヵ月で百八十度の姿勢転換をしたことになる。
この決定に対し、政府や関西電力は猛反発、安全に関しては専門家に判断を委ねるべきだとの議論を展開している。“原子力ムラ”からは、聞くに堪えない裁判長への個人攻撃まで飛び出す始末だ。
しかし、われわれは今こそ冷静に事態を見詰め直してみるべきだろう。2つの決定を比べてみると、安易な原子力回帰策を進める政府への痛烈な批判が浮き彫りになるからである。
まず、今回の仮処分の決定文だ。正本証明まで含めると、全部で55ページに及ぶ文章の中で、7つの争点に言及している。
主な争点を記すと、最初は「立証責任の所在」で、<福島第一原子力発電所事故を踏まえ、原子力規制行政がどう変化し、関電がどう応えたか主張と証明を尽くすべき>と関電を批判。
「耐震性能」の争点では、<活断層について、海底を含む周辺領域全てで徹底的に(関電の調査が)行われたわけではない>として「高浜の耐震性能」に不信を表明した。
また、「津波に関する安全性能」についても、<1586年の天正地震に関する古文書に、若狭に大津波が押し寄せ、多くの人が死亡した記載がある」にもかかわらず、関電の調査を根拠に「大規模な津波が発生したとは考えられないとまで言ってよいか疑問>と疑義を呈した。
新規制基準の目玉とされる「過酷事故対策」では、<今なお道半ば。安全確保対策を講じるには、(福島原発事故の)原因究明の徹底が不可欠。この点に意を払わないのなら、不安を覚える>と述べ、関電だけでなく、原子力規制委員会の姿勢も不十分とした。
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