(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年3月11日付)

トランプ氏の選挙集会で小競り合い、集会は延期に 米シカゴ

ドナルド・トランプ氏の選挙集会が予定されていた米イリノイ州シカゴにあるUICパビリオンでにらみあう同氏の支持者たちと反対派の人々(2016年3月11日撮影)。(c)AFP/Tasos Katopodis〔AFPBB News

 こんなことが起こるのは米国だけだ。ドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補指名を獲得しようとする中、ほかの国々は、困惑したり、唖然としたりしながら見守っている。

 友好国の反応には、見下したような雰囲気がかすかに混じることがある、と言って構わないだろう。

 国のトップの公職を目指す人物が自分のペニスのサイズを公の場で自慢するなどということは、目を見張るほど低俗な米国をおいてほかにどこで起き得るだろうか?

 共和党の指名争いでトップを走るこの人物は、一見すると、唯一無二の存在だ。不謹慎な言葉遣い、バーコード頭、女性不信、キレやすさ、ニューヨークの不動産開発で財をなした人物が国民の保護者を気取るばかばかしさ――。どれを取ってもほかの候補者にはないものだ。

 しかし、取り澄ましたヨーロッパ人は、判断を下すにあたり、慎重になるべきだ。人々の怒り、外国人嫌いのナショナリズム、権威主義、そして隣人窮乏化をもたらす貿易の保護主義などについて説明を求める人は、自分の背後を肩越しに見るだけで事足りるからだ。

大西洋をまたぐ政治的反乱

 この物語には、トランプ氏の性格だけでは説明できない部分がある。彼は原因ではなく結果であり、大西洋をまたぐ政治的反乱の不快な「顔」だ。

 多くの先進的な民主主義国では、トランプ氏が共和党の予備選に加わるずっと前から政治の言葉遣いが変化していた。

 かのリンカーンの党が、自ら生み出したとんでもない生き物によって破壊されるリスクを冒しているとするなら、コンセンサス(合意)を目指す中道の欧州モデルもかなり前から脅威にさらされている。

 トランプ氏の才能は――そう呼べるならの話だが――、波に乗ることに発揮されているのだ。