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Literally

雑食クリエイターによるライフハックブログ。web・デザイン・海外・アウトドアなどを題材にした記事を書いていきます。

ネットで情報収集するより何倍も濃密な学びが得られる10冊の良書

TIPS

本当の良書とは、内容が何らかの形で自分の血肉になり、引き出しをいくつも増やしてくれるようなものだ。

そのような良書は、得てして何十年前も昔の本に多い。何十年も読まれ続け、検証され続けてきた理論や法則は、たとえ現代では通用しなかったとしても知っておくだけの価値がある。

もちろん、相対的にヒット率は低くなるが、近年発売された本の中にも良書はある。過去から現代までの経済や科学、ビジネスのエッセンスを分かりやすく体系化したものや、世の中の新しいトレンドや最先端の科学について事細かく言及したもの。それらの良書を読むことは、インターネットに細切れに散りばめられた良質な情報をかき集めるより、ずっと効率的に学びが得られる。ここでいう学びとは、必要な知識を増やし、思考をブラッシュアップし、あるものごとにたいして考える視点をひとつ増やしてくれることだ。

そんな学びを得られる良書をここでは10冊紹介する。

 

1.

富の未来 

A. トフラー、H. トフラー (著)
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フィナンシャル・タイムズにより「世界で最も著名な未来学者」と評された、トフラー夫妻による名著。トフラーは1950年末から、第三の波として「情報革命」ならびに「脱工業化社会」が訪れることを予見していた。

未来予測は簡単ではない。人間は直線的な思考しかできず、イノベーションが起こったときにその一段階上にある未来を見通すことが難しいからだ。しかし、これらの本の価値は未来を見事に言い当てられるかどうかだけではない。未来予測というのは今この時代の科学技術や市場、経済を把握し、合理的に論理を組み立てなければならない高度な作業だ。そのため、明確な根拠とともに書かれた未来予測本を読むことは有意義であり、現代を知る効率的な方法なのだ。

「富の未来」は12年間もかけて執筆されただけあり、どの章も非常に内容が濃い。生産、市場、社会の脱大規模化が進み、知識経済が急速に訪れていること、生産消費者による非金銭経済での活動が金銭経済に大きな影響を与えていること。これらは既に今の時代に起こり始めていることだ。下巻では日本についても一つの章がとられ、触れられている。一読の価値あり。

富の未来 上巻

 

2.

誰のためのデザイン?

A. トフラー、H. トフラー (著)
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25年前に書かれたにも関わらず、UI(ユーザーインターフェイス)の本質をとらえた名著。最近のスマートフォンやウェアラブルデバイスの台頭により、ようやくUI/UXに対して関心が持たれるようになってきた。コンパクトな画面に情報を多く載せるために合理的なUI設計がなされることは多くなっているが、その一方でブームゆえに「シンプルであれば良い」「デザインがオシャレであれば良い」「Apple風であれば良い」と考えてしまっている人も多くいるのではないか。また、日本のメーカーに至っては、流行にキャッチアップすることばかり考えて「タッチパネルにしておけば良いだろう」「スマホと連携させていれば良いだろう」などと呑気な考えをしていそうだ。

UI/UXは、デザイナーだけが入り込むべき領域では決してない。なんらかのプロダクトづくりに関わる全ての人が考えるべきことだ。UI/UXはユーザー目線で徹底的に考えることから始まる。ユーザーを迷わせずにいかに誘導するか。説明書などに頼らず、ユーザーにかかる労力をいかに減らすか。本当に大切にしなければならないUI/UXの本質がこの本から学べる。

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論

 

3.

地球家族

マテリアル・ワールド プロジェクト
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「家の中の物を全部、家の前に出して写真を撮らせてください」。世界中の家族を訪れ、家の中のモノを文字通り”全て”ひっぱり出してもらい写真撮影する。痺れるような壮大なプロジェクトだ。僕は仕事で行き詰まったときなんかにこの分厚い本をふと手に取ってしまう。世界はなんて広いのだろう。この本に登場する人たちは、僕たち日本人とは食事も仕事も娯楽も全く異なる生活を当たり前のように送っているのだ。そうやって異国の地に思いを馳せるとなんともワクワクし、今すぐ走り出したいような衝動に駆られる。いつかこの場所を訪れよう、なんて考えながら僕は仕事に戻るのだ。

地球家族―世界30か国のふつうの暮らし

 

4.

進化しすぎた脳

池谷 裕二

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大脳生理学の研究者である池谷氏により、最新の脳科学のデータが分かりやすく説明された本。語り口が軽く明快で、分厚くともすらすらと読むことができる。この本は知的好奇心を刺激し、客観的に眺めることのない自分の感情について、じっくりと振り返る機会を与えてくれる。あぁ、僕があのとき悲しさを感じたのはこういう脳の働きによってなんだ、と。自分の過去を振り返りながら読んでいくと、頭の中がすっきりと整理されたように感じられる。また「意識」はどこから来るのだろうと深く深く考えていくと、それはいつの間にか哲学の領域にも踏み込んでしまっている。そんな風に本を読みながら、ふと立ち止まりあれこれと考えるのは非常に有意義な時間なのだ。

進化しすぎた脳

 

5.

ミクロ経済学の力

神取 道宏

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経済の原理を知らずに経済ニュースを読んでいても、事実をインプットすることはできてもそこからの発展がない。同僚と新聞の内容で「不景気だねぇ」と話すことはできても、経済の動きを把握し仕事や投資に生かしていくことができない。もし世の中の動きについて深い洞察ができるようになりたければ、その根底にある原理原則はおさえておくべきだ。この本はミクロ経済学の理論を初心者にもわかるよう噛み砕いて説明している。そして、豊富な実例を用いて、数式等の机上の理論を、現実の経済活動へと結びつけてくれる。経済が動くメカニズムを多少なりとも理解しているだけで、情報収集の効率は大きく向上する。

ミクロ経済学の力

 

6.

経済ってそういうことだったのか会議

佐藤 雅彦 竹中 平蔵

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経済・金融についてこれから学んでいこうと思っている人には入門書として「経済ってそういうことだったのか会議」を強くおすすめしたい(ホリエモンもお薦めしていた)。元政治家の竹中平蔵が、経済についてあまり知識のない電通の佐藤雅彦に噛み砕いて説明する対談形式で、分かりづらい内容もすんなり腹落ちする。たとえ話も非常にイメージがしやすい。また、アメリカをはじめとして海外の政治/経済システムと日本のシステムを比較しながら本質を探っていく対談からは、上級者であっても多くのことを学べるだろう。 

経済ってそういうことだったのか会議

 

7.

ご冗談でしょう、ファインマンさん

R.P. ファインマン

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理論物理学者のリチャード・ファインマンは、ぼくが憧れるような人生をまさに歩んでいる人だ。彼は心の底から溢れ出る好奇心に従い、世の中のありとあらゆるものを楽しむための材料として学び、遊び続けた。自分が思うままに生きる様は、周りから煙たがられていたもかもしれない。敵も多かったかもしれない。それでも自分の好奇心に忠実に、周囲の目を気にせずに逆境も楽しんでいく彼の生は常に輝きに満ちていたではないか。

この本では彼の生涯が、幼少期から実に事細かく描かれている。もっと自分の欲望に忠実に従って生きていいんだと肩の力を抜いてくれる良書。

ご冗談でしょう、ファインマンさん

 

8.

ファスト&スロー

ダニエル・カーネマン

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心理学者にしてノーベル経済学賞を受賞するという偉業を成し遂げたダニエル・カーネマンの代表作。人間の意志決定はどういうメカニズムで行われるのか。そこにはどういうバイアスが働くのか。そして人間はどうやって非合理的な意志決定をしてしまうのか。アカデミックでありながら、実生活に紐づく内容が非常に多い(たとえば、人物描写をするときにその人の特徴を示す言葉の並び順は適当に決めてしまいがちだが、聞き手は最初の言葉の印象を強く引きずり、後半の情報はほとんど無視してしまう、など)。上下2冊あり少々ボリューミーだが、読み切れば今後の日常生活および仕事で非常に役立つに違いない。少なくとも、胡散臭い自己啓発本や心理学の本を読むよりよっぽど有意義だろう。

ファスト&スロー

 

9.

夜と霧

ヴィクトール・E・フランクル

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軽い内容ではないかもしれない。晴れた休日に読めば、どこかに出掛けたい気持ちは消えてしまうかもしれない。一方で、気が晴れずどこに行く気にも、何をする気にもならないときにこそ時間をかけてゆっくり読んで欲しい。

本書では、アウシュビッツに3年間もの間 強制収容された心理学者が、自らの体験を淡々と綴っている。当時の体験を細かく描写する作品とこの本が徹底的に違うのは、自分及び収容者たちの心理状態を冷静に分析していることだ。極限状態に追い込まれた人間の精神状態はどうなるのか。どのように人間らしさを失っていくのか。どんな実験でも決してデータを取ることができない、極限状態での人の心理がこの本にたしかに記録されている。そして、収容所にいようとも、人間としての尊厳を失わず生きる筆者の姿勢にはどれだけ勇気をもらえることか。どんな過酷な環境も、あなたの精神的な自由まで奪うことはできない。人生で一度は読んでおきたい名著。

夜と霧

 

10.

利己的な遺伝子

ダニエル・カーネマン

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新しい生命観を教えてくれる、40年前に書かれた超ベストセラー本。可能な限り自分のコピーを後世に残す事を目的とした「利己的な遺伝子」という概念は、生物の様々な本能や行動を説明してくれる。一つの斬新な見方にすぎないのかもしれないが、「利己的な遺伝子」から生物の行動を辿っていくと面白い程に筋が通るのだ。人はなぜ愛し合うのか、そして浮気をするのか、一方でハチの行動が利他的であるのはどのように説明がつくのか…。筆者は、数多くの生物の行動を、遺伝子視点からロジカルに解き明かしていく。日常生活でも、他人や自分の行動をドーキンスが説明するように冷静に観察してみるとすんなりと納得できることがある。ショッキングかもしれないが、ものごとに対する視点をひとつ増やしてくれる、素晴らしい良書。

利己的な遺伝子