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「証言」

太地町長「イルカ追い込み漁は残酷でない」

  • 三軒 一高

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2016年2月10日(水)

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イルカの追い込み漁で知られる和歌山県太地町が追い詰められつつある。水族館協会が生きたイルカの個体の捕獲も「残酷だ」と断じて、購入を禁じたからだ。太地町の三軒町長は「漁は合法だが、情報発信が不足していた」と反省する。(本記事は「日経ビジネス」2015年11月16日号からの転載です。記事中の内容は掲載時点のものです)

[和歌山県太地町長]三軒 一高氏[さんげん・かずたか]
1947年和歌山県生まれ。日本大学商学部卒業後、和歌山県太地町で真珠養殖業に従事する。70年三幸漁業生産組合長、77年太地町議会議員に初当選。以後、2004年まで連続7期務める。2004年太地町長に初当選。2012年町長に無投票で3選、現在に至る。

水族館のイルカ調達禁止の概要
今年5月20日、日本動物園水族館協会(JAZA)は、水族館など会員施設が和歌山県太地町の追い込み漁で捕獲したイルカの購入を禁じることを決めた。イルカの飼育、展示をしている太地町立「くじらの博物館」は、今後も追い込み漁のイルカを購入する意向を示したため、JAZAから退会を求められた。今年9月、くじらの博物館はこれに応じて、自ら申し入れる形で退会した。

 和歌山県太地町は紀伊半島南部に位置する人口約3400人の小さな町です。日本の古式捕鯨発祥の地として知られ、その歴史は400年に及びます。イルカなどの小型鯨類は「追い込み漁」と呼ぶ方法で捕獲してきました。近海のイルカを複数の漁船で文字通り町の湾内に追い込むものです。毎年9月に漁が始まり、現在最盛期を迎えています。

 町の漁業従事者は和歌山県の許可を受け、国立研究開発法人の水産総合研究センターによる科学的な調査に基づいて決められた頭数を捕獲してきました。こうした手続きを踏んで操業しているのですが、近年、「追い込み漁は残酷だ」という意見があり、漁の禁止を求める声も出てきました。

 そうした中、日本動物園水族館協会(JAZA)は今年5月、水族館などの会員施設が太地町の追い込み漁で捕獲したイルカの購入を禁じることを決めました。JAZAの決定に意見する立場にはありませんが、結果として国際世論に屈する形で、JAZAは苦渋の決断をすることになったと思います。

 JAZAには国内89の動物園と62の水族館が加盟しています。これらの施設には太地町で捕獲したイルカを販売できなくなりました。太地町にとってイルカ漁は重要な産業です。特に水族館向けの生きた個体は食用に比べて販売価格で10倍もの値がつきます。購入禁止の決定は、長期的にイルカ漁全体の売上高に悪影響を及ぼす可能性もあります。

 ですが、イルカの生体の捕獲では追い込み漁以外の有効な方法は見いだせていません。町民の生活を守るのが町長の役割です。イルカ漁に対する風当たりは強まるばかりですが、どんな圧力にも屈するつもりはありません。

反捕鯨団体の非難の的に

 追い込み漁を継続する立場から、町立の「くじらの博物館」ではこれまで通り、追い込み漁で捕獲した生体を展示、飼育します。イルカショーが見られたり、湾内で自然に近い形でイルカに触れ合えたりすることから家族連れを中心に人気を博してきました。くじらの博物館はJAZAの会員施設ですが、その決定に従うわけにはいきません。

 一方、追い込み漁を巡ってJAZAは上部国際組織である世界動物園水族館協会(WAZA)から一時、会員資格を停止されました。追い込み漁で捕獲した生体の購入を禁じたことで、停止処分が解除された経緯があります。ですから、当然の成り行きとしてJAZAからはくじらの博物館に対して退会を求められました。

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