韓国の司法体系について「有銭無罪、無銭有罪」だと批判している人が少なくないように思える。罪を犯した人が相応の処罰を受け、適正に刑を執行されることはニュースにはならない。だが、その二つの過程の一方がぎくしゃくすると、大きなニュースになり、上記のような声が出てくる。専門家たちは「手続き上問題のない事案」によって市民の非難にさらされることもある。
嶺南製粉の社長夫人、ユン・ギルジャ受刑者のケースがこれに該当する。ユン受刑者は娘婿の不倫を疑い、その相手だと考えた女子大生Hさんを殺害するよう自らのおいに指示した。拉致されたHさんは頭を空気銃で6発撃たれ死亡した。Hさんはユン受刑者のおいの母方のいとこに当たる。結局、娘婿の不倫は虚偽だったことが分かった。殺人教唆の罪で無期懲役を言い渡されたユン受刑者は、偽の診断書を提出して刑の執行を停止されたが、2年前にその事実が発覚し再収監された。
Hさんの母親が先月20日「傷心死」したことが本紙の報道で明らかになった。ユン受刑者の指示でHさんが殺害されたのは2002年のことだ。14年も前に死亡した娘のために母親が死亡したというのか。一部の人たちは「幾ら悲しいとはいえ、亡くなった人(Hさんの母親)は異常なほど心が弱かったのではないか」と指摘した。
その推測は外れた。遺族は死んだ娘が生き返るのを願っていたのではなく、犯人らが真っ当な審判を受けることを望んでいたのだ。だがユン受刑者は、偽の診断書を提出し、豪華な病室で過ごしていた。「有力者がバックにいるらしい」「嶺南製粉は社名を『ハントップ』に変えて、今でも商売を続けている」「義母(ユン受刑者)から(不倫を)疑われても、積極的に疑いを晴らそうとしなかった娘婿は、裁判官を辞めて弁護士になった」…このような話が次々と出ている。遺族は苦しみから抜け出すことができなかった。
母親の葬儀を終えてから1週間後、その息子は先月29日から「一人デモ」を始めた。父親と息子は、母親が「ユン受刑者がまた特別な待遇を受けている」という話を聞き、さらに心を傷つけられた」と話した。