「韓国の一部ネットでは、すぐに『この女性歌手を特定した』といった情報が出回った。各メディアが小出しに伝えた情報を照合した結果、1人に絞り込まれたという流れだ」(現地日本人ジャーナリスト)
問題の歌手は、日本での知名度は低いものの、歌唱力に定評のある実力派のK−POP歌手として知られる。この歌手と一緒に摘発された「芸能人志望の女性」らは、一部報道によると、女性アイドルグループ出身の歌手や、端役で活動中の女優とも伝えられている。
今回の芸能人売春のブローカーとして摘発されたカン容疑者は、過去にも同じような事件を起こしてきた札付きの常習犯だ。
「女優ソン・ヒョナをはじめとする複数の女性芸能人の売春を斡旋した疑いが浮上して、2014年に追徴金と懲役6カ月の実刑を受けている。昨年2月に出所してすぐ芸能事務所を立ち上げたが、まともな活動実績はなかった」(同)
当面の捜査の焦点は、売春仲介の首謀者であるカン容疑者の余罪だ。捜査当局はこれを機に、韓国芸能界に巣くう援助交際、枕営業、財界との関係にメスを入れる構えでいる。
だが、事件として犯罪を立証するハードルも高い。
「女優ソン・ヒョナに対する売春疑惑は、2月に最高裁で無罪判決が出た。私的な男女関係か援助交際かという微妙な線引きをめぐり、最高裁が女性側の言い分を認めた形だ」(同)
華やかなスポットライトの裏に渦巻く淫靡(いんび)な取引。海外にまで影響力を持つようになったK−POPの健全化に、厳しい視線が注がれている。
■高月靖(たかつき・やすし) ノンフィクションライター。1965年生まれ。兵庫県出身。多摩美術大学グラフィック・デザイン科卒。韓国のメディア事情などを中心に精力的な取材活動を行っている。『キム・イル 大木金太郎伝説』『独島中毒』『徹底比較 日本vs韓国』『南極1号伝説』など著書多数。