ここ2週間で出版社さんとはてなで取り組んでいることのリリースが2つ有りました。
前職から出版業界×Webの仕事を続けて、五年ほどになります。はてなに入社して、「ジャンプルーキー」から始まり、「あしたのヤングジャンプ」「村上さんのところ」「PINGA」「カクヨム」、そして「となりのヤングジャンプ」と2年ほどの間で5つの出版社さん関連の仕事をしてきました。投稿系のサイトが多かったのですが、公式サイトについても取り組みが増えてきて楽しく思っています。
僕がはてなに入って出版社さんと実現できたことは2つです。「公式連載サイトの企画開発・マネタイズ支援」「投稿サイトの企画開発・運用」。前者はまさにとなりのヤングジャンプで実現できたことですし、後者はカクヨムで実現できたことです。
それぞれの企画は手応えを感じている状況ですし、もっともっと良くしていくことができるだろうとも感じています。そんな中でここ2回のリリースや、はてなに入社して2年経ったということも有り、出版社さん×はてなという仕事の意味を改めて考えることが増えました。
版元さんの多くの方から、ーーをやりたい。でもーーをやる方法はワカラナイというご相談を頂きます。私たちWeb企業が紙の本の作り方、紙の本のマーケティングの仕方、紙の本の出版に向けた社内調整の仕方を知らないように、出版社さんもWebサービスの作り方やマーケティング方法、社内調整の仕方をご存じないことが多くあります。重要な事は役割分担であり、双方の領域に対するリスペクトと感じています。
出版社さんを出て起業され、新しい風や波を起こされている人が多くいらしゃいます。それは出版社の中では出来ないことがあるという問題意識だと推察しています。ただ、今の状況は出来ない理由と出版社の中にいるからこそ出来る理由がほぼイーブンくらいの状況にあるのではないかなと感じるのです。
その点で出版社さんを出るというのは正しい判断でも有ります。一方で、出版社さんの中にいることで、弊社のような外部企業と連携できるケースも有ると思います。0からキャッシュを作る仕組みを得るよりも、ある程度のキャッシュを元手に新しい大きな挑戦をすることの方が容易なケースが有ると思います。
それはWebサービスやアプリが正にそうです。メディアやECといったブランドやコンテンツが大きく影響する分野では、出版社さんや出版社さんからスピンアウトされた起業家さんの強みが活かせます。一方でWebサービスやアプリ開発などについてはどうしても開発リソースや企画運営リソースといった従来、出版社さんの中にない強みが生きてくるシチュエーションが出てきます。そういう時に、出版社さんの内部にいる方が明らかに成功できると考えています。
これまではどうしても出版社さんvsIT企業という構図になりがちでした。出版社さんがWebサービスの企画をしつつコンテンツやメディアブランドを武器に勝負する。IT企業はサービスの企画や宣伝で勝負しつつ、コンテンツに辿り着こうとする。
個人的に、これは非常に無駄が大きいのではないかと感じています。結局は、それぞれにない強みを持っているのだから、敵対するよりも両者が組んだほうがきっと良いサービスや良いコンテンツが生まれてくるのだと考えています。もちろん、両者が組んだサービスはこれまでもありますが、実際のところそれはマネタイズとマーケティング部分をIT企業が取り組み、コンテンツやブランドだけを出版社さんが貸し出すというモデルが多かったように思います。このマネタイズやマーケティングだけをご一緒するパターンはうまくいかないことが多いだろうと考えていますし、私個人としては極力そういったパターンは避けたほうがサービスがうまくいくと考えています。
私が、はてなで実現できたと感じていること、そして、今後も実現していきたいと思っていることは、出版社さんの良さを引き出しながら、Web企業の強みを武器に新しい出版関連のWebサービスを作っていくことです。vsの構造ではなく、どれだけ同じ方向に、同じ目的で、一緒になって企画・開発・運営できるか、それが非常に重要だと考えています。
そんななかで、「はてな」という会社は自社サービスの開発で得てきたノウハウを共同開発サービスに活かしていくという事業を行っていました。まさに、出版社さんに取ってはよい組手になれたのではないかなと思っています。実際のところ、前職を辞めて出版業界とは少し時間的な距離をおいて、改めてWebサービス開発の実力を伸ばしていくぞと考えていました。なんだかんだ出版関連の大きなサービスを立ち上げられたのは、はてなの仲間とその社風にあったように思います。
出版社さんは、読者を非常に大事にされています。それと同じように、はてなもはてなユーザーを非常に大事にしています。読者・ユーザーを大事にすることで、「ジャンプ読者」「ラノベ読者」「はてなユーザー」といったユーザーの色がわかる、媒体の特色があるメディアを作ってきたと考えています。この考え方が、出版社さんとはてなが共同で仕事をしていく上で非常に共感しやすい部分であり、企画開発において同じ目線で仕事を進めていける理由だと感じています。これがもしはてなEC企業であったり、広告系企業であったり、ゲーム開発企業だとおそらくうまくいかなかっただろうと想像しています。
長々と書いてきましたが、今後、もっと多くの事例がはてな関連、はてな以外でも広がっていくのではないかと思っています。そういう時代の転換点にある今を見越すと、個人としても出版業界のWebサービス進出をテーマにどんどん仕掛けていきたいですね。まだまだ実現したいアイディアはたくさんあるので、どれだけ具現化出来るか楽しみです。
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(はてなブックマークのことではないので、今日は休載なります)