日本エネルギー会議

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六ヶ所再処理工場の技術が確立されている現実を忘れてはいけない

今後の原子力利用を進める上で必要となる対応を検討する総合資源エネルギー調査会原子力小委員会は9月16日に第6回会合を開き、使用済み燃料の再処理事業が主要なテーマとなった。電力自由化が進展する中で、同事業の実施体制について国の支援を強化する必要性では大筋で一致したが、青森県六ヶ所村で再処理事業を推進してきた日本原燃への国の関与を最小限にし、民間活力の活用を重視するべきだという意見と高レベル廃棄物の地層処分を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)同様に国の権限が強い認可法人に移行させるべきとの意見で委員の主張は割れた。

電力自由化が進むとともに、原子力発電を巡る環境が変化する中、何らかの形で国が支援を行う重要さは理解できるが、日本原燃が取り組んできた歴史的経緯や技術力の集積、現状を考えた場合、安易に認可法人化する方針には疑問を抱かざるを得ない。日本原燃が、安定的に資金調達できるように国が債務保証を行うなど最小限の支援にとどめ、同社の「現場力」や青森県、六ヶ所村など地元との信頼関係を重視した民間活力を継続的に維持できる体制は欠かせないと主張しておきたい。

電気事業連合会が地元へ立地申し入れをしたのは1984年。以来、30年間にわたって、地元重視と安全性確認を忘れることなく、2兆円を上回る投資を行い、技術開発に取り組んできた経緯を振り返れば、民間でなければここまでできない事業であったとの認識を無視することができないからだ。

◆六ヶ所再処理工場は民間活力と地元の協力で先端技術を確立した
六ヶ所再処理工場を巡る議論の中で、見過されがちな事実がある。1993年に電力会社など85社が出資する日本原燃が同工場建設に着手。当初は1997年12月竣工というスケジュールであったが、事業は苦難を極めた。

耐震性向上などによる設計変更のほか、2006年3月から開始した使用済み燃料を再処理するための試験運転が難航し、竣工時期の変更が21回にもおよび、再処理技術への疑問や批判が各方面から投げかけられたりもした。こうした逆風を乗り越えて、昨年5月に高レベル放射性廃液をガラス固化体にする最終製造試験が完了したのである。つまり、先端再処理技術が民間企業の力によって確立できたわけだ。

同社は、こうした技術について専門機関であるエネルギー総合工学研究所に評価を依頼。同研究所から「現行のガラス固化設備と運転管理体制に対してアクティブ試験(試験運転)の経験を踏まえた改善により、様々な対策が練られており、安定運転実現に向けての準備が整っていると判断された」との評価結果も得ている。苦難の道を経て、民間の力で再処理技術は確立されている点を見過ごしてはならない。

ところが、原子力規制委員会が昨年12月に核燃サイクル施設の新規制基準を施行、この基準への適合が竣工の条件となり、日本原燃は完成時期を今年10月に延期せざるを得なくなったのが実情である。

◆日本流の使用済み燃料処理の利点にしっかりと目を向けよ
使用済み燃料処理問題については、世界的にも様々な議論があるのが現実だ。その中の一つに、フィンランドにおける地層処分がよく引き合いに出される。同国の取り組みは、住民対話や理解において高く評価すべきものだが、同国での地層処分方法は、使用済み燃料を再処理しないでそのまま廃棄する「直接処分」である。

これに対して、六ヶ所再処理工場が取り組んでいるのは原発から出た使用済み燃料を化学的に処理、再利用可能なウランとプルトニウムを取り出す方法だ。その結果、資源の再利用、つまり核燃料物質の有効利用が可能となると同時に、高レベル放射性廃棄物の減容化も図れるという利点がある。
さらに、直接処分の場合、廃棄物が自然放射能レベルに戻る期間が10万年とされているのに対し、六ヶ所再処理工場方式によって製造された廃棄物(ガラス固化体)が自然レベルに下がる期間は8000年とされる。こうした廃棄物を地層処分するためには、安全性を考慮して自然レベルに戻る期間の10倍にあたる安定地盤が必要となるという。

このため、フィンランドでは100万年以上の安定地盤が求められ、それを満たす適地で処分されることになった。六ヶ所再処理方式でいくとほぼ8万年の安定地盤で処分すれば良いことになり、このような地盤は日本各地にあるのが実情と専門家は指摘する。

こうした高い先端技術を十分に評価した上で、ここまで到達した再処理工場の今後のあり方について原子力小委員会でしっかりと議論し、民間活力の重要性と地元のこれまでの理解と協力に目を向けた、日本流の「最適解」を導き出すように求めておきたい。

2014.9.17
日本エネルギー会議事務局

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