〜IS機竜の世界に迷い込んだ夏〜   作:厄災の剣帝
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やっときましたクラス代表決定戦。イチカは惜しげも無く神装を使います。イチカの無双ぶりはいかにw
それでは本編どうぞ!


神装機竜と専用機

「……失敗したな」
「そうよね失敗したわ……」
「私たち興味がないのですが……」

 放課後の教室で、眉間に皺を寄せながら3人は呟いた。
 自分たちが言った通りクラス代表になど微塵も興味がないにも拘らず、成り行きに身を任せた結果名乗り上げる形になってしまうとは。
 この学園に通うのは、ルクスから承った仕事を遂行する際に自分達の正体が明らかとなった場足、各国家の介入などを受けないようにする為。それさえなければ早々に出ていきたいような場所なのだが、不用意に目立ってどうするのかと自分の思慮の浅さに腹が立つ。

「まぁ、決まってしまったものは仕方ない。先ずは決闘に勝つ事が先決だな」
「そうね私たちが負けるはずないもの」
「まあイチカが負けるはずないでしょう"世界最強の神装機竜"を持っているのはイチカですから」
「YES.イチカの機竜は最強です。自信を持ってください」
「そうだよね〜♪イチカが負けたらお仕置きかな☆」
「まあまあそんな物騒なことを言うな。ところで夜架はどこにいったんだ?」

既に授業は終わっている為、何時までも教室に留まっている理由はない。加えて先程のイチカの発言から、彼を敵視する視線まで交じった為に鬱陶しくてしょうがない。
 敵意の視線に晒される中で彼は異様に重い腰を上げ、教室を後にしようとするが、

「織斑兄弟、ラルグリス、そして企業組」

 他の生徒達に便乗して出ていこうと思った最中、千冬に名前を呼ばれて嫌々ながら視線を向ける。

「「何、千冬姉さ―――」」

 ババシン! という凄まじい音と共に、秋斗と春斗の頭部に出席簿が炸裂する。
 思い返してみれば昔から暴虐武人なところがあったな、とその光景をイチカは冷めた目で見ていた。

「お前達のISだが、予備機がない。そこで学園で専用機を準備する事になった」

 実姉の言葉に秋斗と春斗はさも当然だという顔をするが、イチカとしてはどうでもいい事だ。
 ISのコアは世界に467機分しか存在しない。だが、それは篠ノ之束にしか作れない上に彼女はもうコアを製作していない。加えてコアは基本的に国家機関と企業、研究機関にしか与えられておらず、ISの情報開示と共有、研究の為の超国家機関設立、軍事利用の禁止などを定めたアラスカ条約によって関しては厳しく管理されている。
 本来なら専用機というのは国家代表や企業所属の人間、もしくは一定の実力を持つセシリアのような代表候補生にしか与えられない。にも拘らず2人に宛がわれる事になった理由は、データ収集が目的なのだろう。
 だが、

「残念だが必要ない」
「専用機の事は既に決定事項だ。拒否する事は出来んぞ」
「お前、姉さんの好意を無碍にする気か?」
「姉さんに謝れ」
 
パァン! と校内で姉と呼んだ事で秋斗と春斗は再び出席簿の一撃を受ける。
 懲りない奴だ、と心の中で溜め息を吐きながら、イチカは眼前の千冬を見据えた。

「生憎と既に俺たち6人は専用機を持っている。国家の下らない思惑に付き合うつもりなんて俺にはない」
「専用機というのは……その剣の事か?」
「まぁ、そうだな。じゃなかったら帯剣の許可なんて出る訳がない」

 例え許可されなくても持ち続けるが……、と付け加えながら教室を出ようとすると、

「あら? イチカと皆さんまだこんな所にいましたの?」

 救世主の声が教室の出入口から響いてきた。ちょうど足を向けようとしていた方向に視線を移すと、蠱惑的な微笑を浮かべた夜架が立っていた。

「お前は……?」
「初めまして、織斑教諭。私、同じクラスの切姫夜架と申します。どうぞお見知りおきを」

 スカートの端を摘んで恭しく一礼する夜架だったが、その目は全く笑っていなかった。
 戦力分析の為か最初から共闘するつもりがないからなのかは分からないが、一夏としては居心地が悪い。

「それで、ししょ……んん! 夜架、おまえが何で此処に?」
「あら? 可愛い彼氏を迎えに来るのに、理由がいりますの?

 師弟という間柄なら少々目立つが、彼氏ともなると珍しくも何ともない。仕事を遂行する関係上、顔を合わせる機会も当然多くなるが、これなら怪しまれる可能性も低くなる。

(堂々と恋人と言いたかったですわ……)

 3人の例外を除いて女子しかいないこの学園内でそんな事を言えば、四六時中興味の視線に晒される事は間違いない。そうなれば仕事どころではなくなる。
 ルクスを始めとした多くの人間と関わった事で自分の感情を大事出来るようになってきた夜架だが、やはりイチカ同様に主への忠誠心だけは揺るがない。

「へぇ、凄いな。ここまで綺麗な人には中々お目に掛かれませんよ。どうです、切姫さん、 今度僕たちと一緒にお茶でも?」
「僕たちとお茶会をしませんか?」
 嘗ては古都国という東方の島国の姫君だった事もあり、夜架の美貌には男女問わず目を奪われる。
 秋斗や春斗もその一人であり、自分の御眼鏡に叶った少女に唾を付けておこうと考えたのだが、

「残念ですが、私は主様にお仕えする身で彼氏持ち。そう言ったお誘いには興味がありませんの」
「その主様っていうのはこの学園に居る人ですか? もし居ないなら別に良いじゃないですか。そんな奴は放っておいて……」
「―――そんな奴……とは俺達の主の事か?」

 その低い声を聞いた瞬間、貼り付けたような笑みを浮かべていた秋斗と春斗の顔が硬直する。
 見ると、何処までも冷たい薄い微笑を浮かべたイチカが、機攻殻剣の鯉口を切っていた。
 濃密な殺気に千冬が驚愕と共に息を呑む中、側に立つ夜架は呆れたような溜め息を吐く。

「剣を収めなさい、イチカ。主様を侮辱されて怒るのは分かりますけど、此処の生徒を傷付ける事を主様は望んでいませんし、わたしも彼女として嫌ですわ」
「……御意」

 渋々といった様子で剣を鞘に納めるイチカ。『ざまぁみろ』とでもいうように秋斗と春斗は歪んだ笑みを向けてきたが、イチカは取り合わない。
 寧ろ、ここで動いたのが夜架でなくて良かった。確かに彼女は姫君だったが、旧帝国の軍門に下った後は、元々の殺人に対して忌避感を抱かない異形の精神も相まって『帝国の凶刃』と恐れられた暗殺者でもあるのだから。

「さて、私達はもう行きますわ。またいずれ授業の時にでも会いましょう、織斑教諭」
「あ、待ってください! ラルグリス君、企業所属の皆さん、貴方たちの寮の部屋が決まったんですよ。これがその鍵です」

 イチカ達が教室を出る寸前に真耶が入ってきて、部屋番号の書かれたタグが付いた鍵を渡してきた。
 IS学園は全寮制であり、将来有望なIS操縦者達を保護する目的の下に生徒は全て寮で生活する事が義務付けられている。未来の国防や国家・企業の機密が関わっているとなると、学生の頃から様々な勧誘などを画策する国や組織がいてもおかしくないのだ。

「部屋はまだ決まってないんじゃ……? 一週間は自宅から通学してもらうって聞いてましたけど」
「確かにラルグリス君の言う通りなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理やり変更したらしいです。企業からは部屋を改装し、貴方たちを一緒に住ませるようにといわれてますので。3人共、その辺りの事って政府から聞いてます?」

 真耶の言う政府とは勿論日本政府の事。今まで前例のない『男性IS操縦者』故に、国としても保護と監視の両方を付けたいようだ。

「そう言う訳で政府の特命もあって、寮に入れる事を最優先したみたいです」

 受け取った鍵を見ると、タグには1070と書かれていた。チラリと見えた秋斗に渡されるであろう鍵には、1025の文字が刻まれている。春斗の鍵には1026の文字が刻まれていた。
 相部屋とならなかったのは、仮に不慮の事故が起きた場合、貴重な男性操縦者が3人共死亡する危険性を下げる為だろう。
 理由は何であれ、憎い弟と寝食を共にする必要がなくなった事に安堵しながら、イチカたちは夜架の後に続いて教室を出た。

………
……


「全く……入学初日から問題を起こす気ですの?」
「はい……すいません」

 学生寮の廊下を共に歩きながら、夜架は窘めるような声をイチカに向けていた。
 議題は当然の如く、先程無防備な人間に対して抜剣しかかった事だ。

「主様を"そんな奴"と言われて、確かに私も憤りを覚えましたわ。ですが、私達従者の不始末は主様の恥。以後気を付けてください」
「はい、肝に銘じておきます」

 そんな事を話しながら歩いていると、イチカたちは目的の1070号室の前に辿り着いた。

「ここが俺たち7人の部屋か中に誰かいないよな?」
「YES.≪ドレイク≫の方で確認しましたが誰もいません」
「じゃあ入ろうかこの人数で廊下にいるのは迷惑だ」
「そうねこれから"未来の旦那様"と住むんだもの」
「さんせ〜い☆イチカはわたしがお世話してあげるね♪」
「不許可ですよ。ずるいです」
「あらあら、ウフフ」

 そして時が過ぎるのは早いものであり、入学初日の一悶着から一週間経ったクラス代表戦当日。
それまでにアリーナを借り、練習していたイチカたちは万全の策を労し挑む事になっていた。
 第3アリーナに詰めかけた多くの女子生徒達の歓声が、フィールド側から聞こえてくる。今は秋斗とセシリアが戦っているはずだ。
 その声に耳を傾けながら、イチカはCピットの射出口付近で待機していた。他の4人は控え室に待機していた。

「ハンデをなくす為に他の試合を見れないとは……自分の番が来るまで暇だな」

 ピットで待機する装衣を着た状態のイチカは腰に差した機攻殻剣に触れながら、来たるべき戦いの時を待つ。
 この決定戦は3日に分けられる。
 セシリアが決闘を申し込んだのは5人である為、クラス代表の件を抜きにしても、これが円滑に試合を進められる最適な手段だった。

「随分と観客が多いですわね」
「……師匠、気配を殺して背後に立つのは止めてください。特に主の前だと抜剣しそうですから」

 普段通り気配もなく夜架が背後に立つ。2年も共に研鑽を積んできた仲だが、やはりこの登場だけは慣れない。
 まぁ言っても無駄だろうな、と諦めつつイチカは視線を観客席に戻す。

「男がISを使って戦うのは初めてだから珍しいんですよ。それか……女に喧嘩を売った愚かな男の末路を笑いに来たのか」
「何方にしてもやる事は変わりませんわ。そうでしょう?」

 期待の込められた異彩の瞳を向ける夜架。それは愛弟子の勝利を確信しての事か。
 その真意は読み取れないが、彼女の言う通りイチカがやる事は一つ。

「ええ。主の命令を遂行する前に、こんなところで躓くようでは……主への真の忠誠は叶わない」

 鋭い戦意と絶対の忠誠心を瞳に宿しながら、一夏はそう宣言する。そんな今にも飛び出しそうな彼を、夜架は緊張した面持ちで見つめる。
 すると、カツ、カツ、……、と彼等の背後からヒールの音が近付いてくるのが聞こえた。其方に視線を移すと、彼等の下に千冬が歩いてくるのが見えた。

「ラルグリス、少し良いか? ……切姫、何故お前が此処にいる?」
「以前と同じような返答になりますが、可愛い彼氏の応援ですわ」

 ぱっと笑顔を浮かべながら千冬の問い掛けに答える夜架。
 それが当然のように告げる彼女に苦笑しつつ、イチカは嘗ての姉に視線を投げ掛ける。

「それで、俺に何か用があったんじゃないですか? 織斑教諭」
「ッ! あ、ああ。実は織斑兄弟の専用機がまだ届いていなくてな。急遽お前とオルコットで先に試合をしてもらう事になった。
向こうも了承し既に待機しているから、準備が出来たら直ぐに出ろ。3日それも5試合分取ったとは言え、アリーナの使用時間は限られているからな」

 了解です、と適当に答えながらイチカは機攻殻剣の柄に手を掛ける。
 だが、その背後で千冬が自分を見ている事に気付くと、肩越しに彼女を見た。

「……何か?」
「い、いや。何でもない。早く準備して行け」

 それだけを告げると千冬は足早にその場から去っていく。
 次第に小さくなっていく後ろ姿を見送りながら、夜架は警戒の眼差しを向けていた。

「……気付かれたのでしょうか?」
「元とは言え血の繋がりのある家族ですから、違和感くらいは感じたかもしれませんね。まぁ、仮に気付いたとしても俺には関係ないですけど」

 一夏は今度こそ機攻殻剣を白鞘から抜き、その切先を天に向けて掲げる。
 そして、柄にあるボタンを押すと同時、機竜を転送する為の詠唱符を叫ぶ。

「―――、顕現せよ、神を滑りしその身体、全能の名を名乗り再臨せよ、その名は《ゼウス・カイザー》」

 その瞬間、刀身に刻まれた銀線が光を帯び、その部分に向け高速で粒子が集束していく。
 彼の背後に現れたのは、禍々しい殺気と光沢を帯びる、青白の輝きを放つ幻玉鋼鉄の塊。その所々には、全てを焼き尽くさんとでもいうような黄の線が走っている。

「接属・開始」

 更に呟くと瞬時にその装甲が開かれ、イチカの身体を覆う。
 頭、両腕、肩、腰、両脚、そして、翼、武装。
 竜を模した機械の装甲はイチカと一体化するように装着され、本人の体型より二回りほど大きい機竜使いへと変貌を遂げる。

「それじゃあみんな行ってきます」
「貴方の力、世界というものを知らない彼女に存分に教えてきなさい。観客席で応援してるわ」

 御意、と答えながら射出口に脚を乗せたイチカは、その先に待つ、蒼い機体を纏うセシリアを見据える。
 そして明確な戦意を滾らせた瞳で彼女を敵と定めると、彼は翼から暴風を撒き散らしながら青天へと飛び立った。



真ん中の方でノクトが言っていた"ドレイクの方で"という言葉の意味は三和音がこの作品の中でオリジナルの神装機竜を持っていることを表しています。
まあお披露目はクラス代表戦の襲撃ですかねw
それまでには考えておきます。
それではまた次回アディオスw