〜IS機竜の世界に迷い込んだ夏〜   作:厄災の剣帝
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やっとIS編に入りました。イチカの無双が見れるのはいつになるやら。あっ席はテキトーです。それでは本編どうぞ!


再来そして始まり

「入学おめでとうございます。私は副担任の山田真耶です」

 黒板の前で緑髪の童顔の女性教師が、自身が受け持つ1年1組の生徒達に向けて自己紹介する。
 身長は低めで、生徒のそれと殆ど変わらない。加えて着ている服と掛けている黒縁眼鏡がやや大きめである為、一層と身体の小ささを助長しているように見えた。

「皆さん、これから1年間頑張りましょうね」
「「「……………………」」」

 教師にしては些か眩し過ぎる笑顔で彼女は挨拶をするが、教室内は妙な緊張感に包まれており、誰一人としてその挨拶に返す者はいなかった。
 あのぉ……、とおどおどとした様子の副担任など大多数の生徒の眼中にはない。生徒の無言の視線に晒されているのは、2人の男子生徒だった。
 片や最前列の席に座る、自信に満ち溢れた薄い笑顔を浮かべる黒髪の少年。
 片や後方の端の席に座る、前者と同じ黒髪だが目付きが鋭く、白董色の鞘に収まる長剣を腰に差した少年。
他には長剣やレイピアなどを腰に差した少女たち。

(……何か、凄いデジャヴを感じるな)

 後者の少年―――は珍獣を見るような視線を注いでくる生徒達に対し心の中で溜め息を吐き、頬杖をつきながら副担任の方に顔を向ける。
 偶然にも目と目が合い、真耶は何故か嬉しそうな顔になった。一瞬疑問に思うが、直ぐに生徒の中で彼女の方を見ているのが自分だけだからだと推測出来た。

「なあセリスたちは王立士官学園なら自由に外に出られたのに出られないのはどうおもう?」

「それはイチカは一応3人目の男性操縦者ですし、しょうがないじゃないですか」

クルルシファーも
「そうよイチカだって特別なんだから」
と言ってきた。
日本の東京湾に浮かぶその孤島には、各国のIS搭乗者を目指す女子達がISを学ぶ為に国際IS委員会が創設した教育施設―――IS学園がある。
 何故かISは女性にしか起動させる事が出来ない為、この学園の生徒は必然的に殆ど全員が女子となっている。
 否、一日前までは"殆ど"ではなく、全員が女子だったのだ。
 存在する筈がないと思われていた『ISを動かせる男子』という生物が教室に居るという事実が、異様な空気を漂わせている最大の原因である。

「そ、それでは皆さん、自己紹介をお願いします」

 イチカがそんな事を考えている間にも自己紹介が始まり、暫くの間少女達が立ち上がっては名乗っていく状態が続く。
 やがてその順番が3列目に入ると、イチカに似た顔立ちの少年の番が回ってきた。

「織斑秋斗です。試験会場で迷ってしまった時、偶々見つけたISを興味本位で触ったら起動させてしまいました。趣味は剣道です。一年間よろしくお願いします」

 直後、鼓膜を破壊しかねないほどの音の爆発が巻き起こる。

「男の子! イケメンの男の子よ!!」
「生まれてきて良かったぁああああああッ!!」
「YaaaaaHaaaaaaaaaa!!」

 咄嗟に耳を塞いでいたが、それでも十分に聞こえてくる女子生徒達の歓声。
 元とは言え、自分が迫害される原因を作っていた弟が目の前にいる事もあり、一夏の目は周囲の鬱陶しさも相まって虚ろになっていく。
 次は春斗の番だ。
「織斑春斗。兄と同じ境遇で来た。これからよろしく」
「ほう、随分騒がしいと思えばお前だったか」

 その女性の声が聞こえてきた瞬間、その瞳に危険な光が宿り、僅かにだが殺気も漏れ出す。
 音源に視線を向けると、そこにはイチカが予想した通りの人物―――嘗ての姉である織斑千冬がいた。

「「あ、千冬姉さん」」

 ―――スパパァンッ!! と。
 彼女の名前を呼んだ秋斗と春斗の頭頂部に出席簿の一撃が叩き込まれた。

「織斑先生と呼べ」
「……はい。織斑先生」

 そんなやり取りを2人がしている間に、イチカは誰に悟られる事なく深呼吸する事で冷静さを取り戻していた。
 もはや彼等とは赤の他人。目の前にいようが、どんな喜劇を繰り広げていようが自分の知った事ではない。自分も周りの女子生徒達と同じく観客の一人に徹するのだ。

「諸君、私が担任の織斑千冬だ。諸君等を一年で使い物になる操縦者に育てる事が私の仕事だ。私の言う事はよく聞き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。逆らってもいいが、私の言う事には『はい』か『YES』で答えろ。分かったな」

 暴君発言だが、確かにこのくらいの事をしなければ言う事を聞かないだろう。
 入学前に行われた束直々の一ヶ月勉強期間の際に聞いたが、中学ではISを動かす事はないらしい。つまり入学したばかりの彼女達は知識こそあれど扱いには慣れていない。要は実弾が込められた拳銃を持った赤ん坊のようなものだ。
 ところが、肝心の女子生徒達は歓喜の声を上げるばかりであり、千冬の言葉の真意を理解出来ている者は少ないだろう。

「きゃああああああああッ!! 本物よ、本物の生千冬さんよ!!」
「ドラ○もんに頼んで22世紀から来た甲斐があったわ!!」

 元家族がどうなろうと知った事ではないが、彼女を信奉する生徒達の発言に一夏は冷や汗を掻いた。

「はぁ……、静かにしろ! まだ自己紹介は終わっていないぞ!」

 千冬の声を聞いた瞬間に一同は直ぐに口を閉ざし、教室を沈黙が支配する。
 それを満足そうに見て彼女が頷いた後、自己紹介が再開された。先程と同様に立っては座るといった動作が続くのを眺めて約5分後、ようやく機竜持ちの出番が回ってきた。

「セリスティア・ラルグリス。イチカの恋人です」

「クルルシファー・エインフォルク。同じくイチカの恋人よ。よろしく」

「切姫夜架と申します。イチカの恋人です。よろしくお願いします」

「YES.ノクト・リーフレットです。私もイチカの恋人です。よろしく」

「は〜い☆ティルファー・リルミットだよ〜♪彼氏はイチカよろしくね☆」

「シャリス・バルトシフトだ。イチカの彼女をしているよろしく」

機竜持ちの挨拶も終わりようやく一夏の番が回ってくる。

「イチカ・エインフォルク・ラルグリスだ。趣味は鍛練。先の織斑兄弟と同じく不慮の事故でISを動かした為に此処に来る事になった。俺たち7人はラビット社所属だ。さっき彼女たちが言った通り俺たち7人は恋人関係だが、気負わずに接してくれると助かる」

 本当はあまり絡まない方が仕事に支障がないのだろうが、学生生活を送るからには何かと人付き合いが重要になってくる。せめて第一印象だけでも好感が持てた方が良いだろう。
 簡潔に済ませたイチカの視界に千冬と秋十と春斗は何処か驚いたような顔が映ったが、気にせず席に座ろうとする。
 だが、3人目の男子という存在に女子生徒達が黙っているはずもなかった。

「やった! やったわ! 3人目の男子よ!!」
「イケメンの織斑君に、紳士的な雰囲気のラルグリス君!!」
「眠ろうとしてる私の横で甘い誘惑の言葉を投げ掛けてー!!」

 王立士官学園に入学した際も大勢の女子の前に立たされたが、ここまでの声は繰り出されなかった。
 再び収拾がつかなくなった教室内に呆れ返っていると、教卓に立つ千冬も頭を抱えていた。

「……毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か? 私の所にだけ馬鹿者を集中させているのか?」

 ポーズではなく本心から鬱陶しく思っているのだろう。
 14年も一緒にいたのだ。例え憎悪の対象でも、そのくらいの事は分かる。人気者は何時だって辛いものだ。
 そんな事を考えていると、SHRの終了を告げるチャイムが鳴り響いた。

「さぁ、SHRは終わりだ。諸君等にはISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後は実習だが、基本動作は半月で身体に染み込ませろ」

 俺が扱うのは装甲機竜
だが……、とは勿論声には出さずに想いながら、教室から消えていく千冬の背に視線を向ける。
 織斑兄弟の方は事前に報道されていた為に知っていたが、まさか姉までいるとは思わなった。『まさか知ってて入学させたか?』と此処に入るよう説得してきた束の姿を思い出しながらイチカは勘繰る。
 仮にそうならどうしてくれようか、と暗い笑顔を浮かべていると、

「ちょっといいかな?」

 自分に向けて掛けられた男の声に、イチカは片眉を吊り上げながら視線を移す。
 そこには忘れたくても忘れられない、自分と似たようなである兄―――織斑秋斗と織斑春斗がいた。

「……何だ?」
「何だって……君こそ何だい、その態度は? 折角同じ男同士で仲良くしてやろうと思って声を掛けてやったのに」

 『仲良くしてやろう』『声を掛けてやった』。これだけで彼の性格が2年前から変わっていない事が理解出来る。
 何処までも傲慢でプライドが高く、常に自分を除く人間の大半を下に見ている。それでいて歪んだ素顔は決して表に見せる事はせず、障害は自分の手を汚す事なく排除する。織斑秋十とはそういう男だ。
 傲慢という点では『蒼の暴君』の異名を持つシングレン・シェルブリットもそうだが、圧倒的な実力に裏打ちされた彼の思考と、他者を蹴落とす事で自分を高く見せようとする秋斗の思考では雲泥の差がある。

「『仲良くしてやろう』ね……。生憎、そんな恩着せがましい奴とつるむ気はないな」
「何だとッ!?」

 急に怒気を孕んだ女子の声が割って入り、イチカは声がする方を向く。
 其処には長髪をポニーテールに結んだ、如何にも大和撫子といった少女―篠ノ之箒がいた。
 一応共に剣道場にも通った幼馴染みのはずなのだが、イチカに気付いた様子は全くない。

「貴様、秋斗や春斗の好意を無下にするつもりか!?」
「好意? そうか、この国じゃ『仲良くしてやろう』って上から目線で手を差し出す事を好意って言うのか。
ありがとう、勉強になったよ。お礼にこの俺が仲良くしてやるという栄誉をお前に授けよう」
「そんなもの誰がいるか!!」

 最後は何度も会っている内に覚えてしまったシングレンに似せた口調で対応してみたが、どうやら不評だったらしい。
 まぁ当然か……、と思いながらイチカは興味が失せたと告げるように目を伏せ、やや背凭れに寄り掛かる格好で椅子に深く腰掛ける。

「そう言う訳だ。俺とお前等に話す事はない。逆に女の方はお前に話があるようだ。休み時間も有限じゃないし、さっさと行った方が良いんじゃないか?」

 頭に来た様子に箒は殺気を飛ばすが、更に濃密な殺気をこれまで何度も感じてきたイチカにとっては脅威ではなかった。
 剣呑な雰囲気に秋斗は言われた通りに箒を連れ出す。そんな彼等の周りにいた女子生徒は疲れた様子で溜め息を吐いていたが、当のイチカは素知らぬ顔を決め込んでいる。
 
「ちょっと大丈夫なの?」

「大丈夫だよ可愛いクルルシファーw」
とからかってやると

「えっ///ありがとうイチカ」

「あーずるいずるいクルルシファーだけずるいよ♪私にもはやく♪」

「うるさい。暴走するな可愛いティルファー」

「不許可です。私には言わないなんて///」

「そうだぞ。はやく私にもいいたまえ///」

「YES.ずるいと思います。はやくしてください///」

「だー!うるさい!もう寝る」

このまま寝てやろうか? と考えたイチカは早々に意識を手放そうとするが、

「ちょっとよろしくて?」

 何とか眠ろうとしているところに声を掛けられた為、若干の苛つきを覚えながら振り返る。
 其処には、金髪のロールから高貴なお嬢様といった印象を感じ取れる、鮮やかな蒼の瞳を持つ女子生徒が立っていた。

「……イギリス代表候補生、セシリア・オルコットか」

 代表候補生とは、簡単に言えばオリンピックの代表選手や選抜候補のようなもの。より簡潔に一言で言ってしまえばエリートである。

「あら? 私を知っていますの?」
「取り敢えず学園の有名どころは全員把握してる。それで、俺に何か用か?」

 先程の2人の事もあり、出来れば早々に立ち去ってもらいたいという不機嫌さを隠さずに一夏は問う。
 だが、どうやらその投げやりな対応がセシリアの癇に障ってしまったらしい。

「まあ! 何ですの、そのお返事は! 私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」
(ああ、こういうタイプか……)

 女尊男卑という忌わしい思想に染まった今時の女性。はっきり言って反吐が出そうだが、イギリスという後ろ盾がある以上あまり問題を起こすのも得策ではない。
 さてどうしようか……? と考えていると、セシリアは訝しむような視線を向けてきた。

「全く、これだから男性というのは。品位の欠片もないただの家畜は嫌なのですわ」

「あなた今何て言ったの?」

俺の後ろにはキレた彼女たちがいた。

ノ「YES.私たちの未来の夫に"家畜"とは万死に値します」
シャ「なら私たちと後で勝負しようか」
ティ「調子に乗ってると痛い目にあうよ♪」
夜「久しぶりに模擬戦がしたいですわ」
セ「許可します。わたしも腹がたっているので」
ク「あなたよくそんなこといえるわね。だとしたら何様?」

「ひっ、ひぃぃ、ど、どうやら多少の教養は身に着けているようですわね。ですが、肝心のISに関してはどうでしょうか?ISの事で分からない事があれば……泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよろしくってよ?」
「お前なんぞに教えてもらわなくてももう入ってる」

「そ、そうですか! ならもういいですわね。後から泣きついてきても知りませんわよ」

 オーホッホッホ! と高笑いして自分の席に戻って行った。

「……分からない事があれば、の話だが」

束の特別授業を受けたイチカとセリスたちは既にISの基礎知識については熟知しているので、これから勉学の事で関わる事はないだろう。
 あの手の人間に対しては自分をひたすら下に置いて、相手をこれでもかというほど持ち上げればいい。ルクスの従者として動いている間、イチカは彼女の様な人間の対処法を学び尽くしていた。
 



「―――それでは、この時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

 一、ニ時間目とは違い、真耶ではなく千冬が教壇に立っている。よほど大事な事なのか、教師である真耶までもノートとペンを片手に持っていた。
 ちなみに事前学習の甲斐あってかイチカは完璧に授業に着いて来ており、教える気満々だったセシリアが肩を落としていたのは別の話。

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めなければな」

 思い出したように千冬は言う。単語だけで大体何をするのか想像がついた。
 面倒事である事は間違いないと判断し、成り行きに身を任せる事にする。

「クラス代表とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会に出席など……まぁ、クラス長のようなものだ。
ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。一度決まれば一年間の変更はない。慎重に選べよ」

 自他推薦は問わない、と最後に付け足して説明を終えると、早速各所から手が挙がった。

「はい! 織斑兄弟がいいと思います!」
「私はラルグリス君を推薦します!」
「いいえ、ここはやっぱりラルグリスさんよ!」
「クルルシファーさんに決まってるわ!」

 予想は出来ていたが、やはり代表推しは世にも奇妙な男子生徒が強いようだ。会議などの事務作業なら淡々とこなす自信はあるが、夜架の言う通り目立つのはいただけない。
 ルクスから承った仕事に支障が出る可能性もある為、何とか拒否する事は出来ないかと考えていると、これまたある意味で予想通りの女子が待ったを掛けた。

「納得がいきませんわ!!」

 両手で机を叩き、怒鳴り声を上げたのは言うまでもなくセシリアである。顔を憤怒で赤く染めながら、推薦されたイチカと秋斗や春斗に喰いかかりそうな勢いである。

「男子がクラス代表なんていい恥晒しですわ!! この私にそんな屈辱を1年間味わえとでもおっしゃるのですか!? 私はそんな事の為に日本に来た訳ではありません!」

 ISの発表により世界は女尊男卑の風潮に染まった。彼女のように男性に対して差別的な女性は優に5割を超える事だろう。
 此方の世界で生きていた頃の忌むべき記憶が蘇るが、今では鼻で笑って捨てられるようなものである為、彼女の言い分にも何ら感慨は沸かない。

「実力的に言えば、私がクラス代表になるのは必然。それを、ただ物珍しいからという理由で……良いですこと? クラス代表は入試首席の私がなるべきなのです!」

 絶対に負けられない戦場に弱者を送り出すよりも強者を出場させるのは当然の事。この時点ではセシリアの言う事は尤もだ。
 だが、彼女の言葉は次第に過激さを増していった。

「大体、こんな極東の島国で……文化として後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、私にとっては耐えがたい苦痛で―――」
「イギリスだって大した国じゃないだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ」
「おいしい料理のない落ちた国がどうかしたか」

 彼女の発言を澄まし顔で割って入ったのは秋斗と春斗だった。個人を馬鹿にするのはまだ良いが、自分の事で母国まで馬鹿にするのは許さない……などという高尚な理由から止めに入ったのではない。
 自分は誰に跪く事もなく、常に頂きに立つべき天才。代表候補生という肩書きを持っていようと、自分の上に立つなど許さない。秋斗や春斗の頭にあるのはそれだけだ。
 そんな彼の対応が予想外だったのか、しかし今の秋斗と春斗の発言は聞き捨てならないとセシリアは憤怒の念を吐き出した。

「貴方、わたくしの祖国を侮辱しますの?」
「先にしたのは君だろ? 何子供みたいに駄々こねてるの? 世界が自分中心に動いてるとでも思ってる、世間知らずの馬鹿なのかい?」
「ッ……!? 貴方ねぇ!!」
「どうみてもお前が悪いだろw」

 たかが性別の違いから祖国の罵り合いに発展するとは、この国に興味がないイチカにとっては滑稽でしかない。
 とは言ってもこのまま続けさせても時間が無駄に過ぎるだけである為、―――ギィンッ!! と鞘に収まった状態の機攻殻剣を床に叩き付ける事で黙らせる。

「「「ッッッ!?」」」
「そこまでにしておけ、3人共。あまり大声を出すと他のクラスにも迷惑がかかる」

 いや貴方のも十分迷惑だよ……、と先程の一撃で腰を抜かした大半の女子生徒達は心の中で反論する。
 当然それがイチカに届くはずもなく、彼は機攻殻剣を腰に戻しながら白熱した口論を繰り広げていた元凶の一人である秋斗に冷めた視線を向けた。

「織斑秋斗。母国を侮辱されて腹が立つのも分かるが、口を慎んだ方が良い。彼女は代表候補生と言えど、イギリスという国家を背負った存在。下手をすれば国を敵に回す事になるぞ」
「ハッ! 確かに国相手は分が悪いけど……替えが利く代表候補生と世界で唯一の男性IS操縦者だったら、どっちが重宝されるかな?」
「別にお前一人が被害を受けるなら俺は何も言わないさ。だが……個人の不用意な発言で国家間の抗争になんて発展されたら堪ったものじゃないからな」

 ぐッ……! と冷静に正論で返され、秋斗は押し黙る事しか出来なかった。
 一夏はそんな彼から視線を外した後、次いでその対角線上に立つセシリアに声を掛ける。

「オルコット女氏も、さっき言ったようにイギリスという国家を背負った存在なんだから、身勝手は発言は控えた方が良い」
「身勝手? 一体何をおっしゃってますの。今の社会を作ってきたのは女性ですわ! 所詮、男性なんて子孫を残す事にしか能がない存在ですわ!!」
「セシリア・オルコット貴方まだこりてないの?」
「もうこれ以上はやめましょう」

うちのクルルシファーが俺のためにキレちゃったよ。
 セシリアの発言は威厳も尊厳も人権もない、男性を家畜同然としてか見ていない。
 流石にこれには教師が最後に止めに入ろうとするが、彼女の女尊男卑に染まった考えが変わる事はない。

「何をおっしゃいますか。私は事実を述べたまでですわ」
「まぁ、確かにオルコット女氏の発言も一理あるわ。……女尊男卑なんて腐り切った社会を作ったのは、今の貴方みたいな女性なんだから」
「ッ! 何ですって……!」

 この世界に興味を持たないが故の、何処までも客観的な視点から見た発言。
 だが、クルルシファーのその一言によって遂にセシリアの堪忍袋の緒が切れた。

「いいですわ……! 私、セシリア・オルコットは貴方達5人に決闘を申し込みますわ!!」

 バンッ! と机を叩き、セシリアはイチカと秋斗、春斗を指差す。焚きつけ過ぎたかとイチカは後悔するが、時既に遅し。

「ハハッ、いいね。その方がシンプルで分かり易いよ。君が代表に相応しいって言うなら、僕たち兄弟の前でその証拠を見せてよ。完膚なきまで叩き潰してあげるからさ」
「俺はクラス代表なんて微塵も興味ないんだが……」
「わたしは雑魚とは戦いたくはないのだけれど」
「わたしもクラス代表には興味がないのですが……」
「例え興味がなくても、あそこまで言ったあなた方に拒否権があると思っていますの?」

 余計な事を言うんじゃなかった……、と顔を顰めながら3人は今更ながらに後悔する。だが、ここまで来たら何を言おうと状況は好転しないだろう。
 ようやく事態が収束したのを見計らい、やれやれと言った面持ちで今まで静観していた千冬は彼等に告げる。

「それでは一週間後の月曜日、放課後に第3アリーナで代表決定戦を行なう。織斑兄弟とイチカ・ラルグリス、セリスティア・ラルグリス、エインフォルク、オルコットは各自用意をしておくように」

 注目を集めるように両手を打つのを合図に喧騒が止み、ようやく授業が開始される。
 興味なさげに溜め息を吐くと3人。何処までも余裕の笑みを崩さない秋斗と春斗。憤怒から成る闘志の炎を燃え上がらせるセシリア。
 六者三様の気持ちが交錯して異様な雰囲気が形成されるのを、クラスの誰もが震えながら感じ取っていた。



クルルシファーがキレましたね〜w
次回は決戦イチカVSセシリア前というところですね
安心してくださいちゃんと総当たり戦を全部させますよw
それでは次回までアディオスw