はじめに
「いらすとや」のイラストです.「いらすとや」の検索ボックスに「DNA」と入れたら現れたイラストの1つがこれでした.
DNA(ディーエヌエー)はデオキシリボ核酸のこと.生物やウイルスの遺伝情報を担っています(ただしDNA=遺伝子ではありません.また,ウイルスが生物かどうかは決着がついてない模様なので割愛).
「いらすとや」さんのこのイラスト,よく見たら不必要なほど秀逸すぎることが判明しました.いや,これマジですごいですよ!びっくりぽんです.
DNAイラストのどこがどう秀逸なのでしょうか?
その理由は3つあります.
理由その1:二重螺旋構造をきっちり描いてる
DNAの構造について発表したのはワトソンとクリックという学者(二人ともこの研究でノーベル賞を受賞,もう一人いるけど割愛)です.あの小保方さんのSTAP細胞で物議をかもした『Nature』というイギリスの科学雑誌に論文が掲載されたのが1953年.その図がこれです.
(出典:Watson,J.D & Crick F.H.C. 1953. Nature, Vol.171, pp.737-738)
らせん状のひもの間に棒が組まれているように見えるこの図は,DNAの二重螺旋構造を示したモデルです.ひもに見える部分が糖とリン酸の分子がつながった,いわば分子の鎖です.二つの分子の鎖がらせんを描いています.そして,その間にある棒に見える部分が塩基と呼ばれる物質が対になっていることを示しています.
要するに「梯子(はしご)」をねじったものと思ってもらえればOKです.
梯子は,2本の縦木の間に,足をかける横木を付けたもの.この横木のことを「踏桟(とうざん)」と呼ぶのだそうです.
DNAだと,1本の縦木が糖とリン酸の分子の鎖,踏桟の半分が1つの塩基になります.ヒトの場合,DNAは対になっています.だから,梯子を縦にカットした左右を,踏桟にアロンアルファ塗ってくっつけた,そういうイメージでOKです.
<対になっているDNAは①と②にわけられる>
①
②
(出典:http://www.irasutoya.com/2014/05/blog-post_3161.htmlの一部 )
そんでもって,①と②をくっつけ,梯子の両端を二人で持って,片方を「えいやっ!」とねじると,「二重螺旋」ができあがります.
<①と②が踏桟(塩基)同士で接続しているのがDNA.これをねじると二重螺旋>
そして,「いらすとや」のDNAイラストには,ヒトのDNAの二重螺旋構造がきっちり表現されています.イラスト(左)とワトソン・クリック論文の図(右)を比べてみてください.とてもよく似てますよね!
なお,ワトソン・クリック論文の図には矢印が書かれています.これは糖・リン酸分子(および塩基でDNAを構成する単位ヌクレオチド)の結合の方向性を示しています.後述するセンス鎖とアンチセンス鎖はヌクレオチドの結合の方向性が反対になってます.図の矢印の向きが反対なのは,このことを表現しているためです.
理由その2:塩基が色分けされ,ちゃんと対合している.
DNAイラストで,梯子の足場である踏桟が塩基を示していることは「理由その1」で述べました.この塩基はとても大切です.塩基の並び方すなわち塩基配列は,タンパク質といった生命が絶対に必要とする物質をつくる情報を一手に引き受けてるのです.
非常に重要な塩基ですが,DNAには4種類あります.
A(アデニン)とT(チミン)
G(グアニン)とC(シトシン)
A,T,G,Cと覚えましょう.
A,T,G,Cには,AとT,GとCが対になる性質があります(水素結合する数が違うけど割愛).
DNAイラストの一部を拡大しました.すると,梯子の踏桟すなわち塩基の部分が半分ずつ色分けされていることがわかります.
さらに,踏桟部分が黄色は緑だけ,水色は紫だけと対になっています.
もうおわかりだと思います.そうです.この4種類の色は,4つの塩基(ATGC)を表現しています.
緑をA,黄色をT,水色をG,紫をCにして,図に書き込んでみました.
AとG,TとCといった,誤った塩基対がないことがわかります.
つまり,「いらすとや」のDNAイラストは,4種類の塩基を色分けしているだけじゃなく,A-T,G-Cという塩基の組み合わせの性質までも表現しているのです.素晴らしいです.
理由その3:教科書じゃそこまでしないのに,センス鎖とアンチセンス鎖の色を分けた
理由その1で述べましたが,ヒトのDNAは①と②に分けられ,それぞれ働き方が違います.
<対になっているDNAは①と②にわけられる>
①
②
ヒトのDNAは,①と②の対が30億並んでいます.①も②も重要なのですが,特にどちらか一方にはタンパク質などを合成する上で大切な情報が含まれています(遺伝子はDNAに含まれますが,DNA=遺伝子ではありません).「意味がある分子の鎖」という意味で「センス鎖」と呼ばれています.
「センス鎖」と対になるもう一方の分子の鎖は「アンチセンス鎖」と呼ばれています(mRNA合成のときはアンチセンス鎖の塩基配列に基づいてRNA分子が結合するので,実はこちらもたいへん重要).
そして,「いらすとや」のDNAイラストでは,センス鎖とアンチセンス鎖が色分けされているのです.ここでは便宜的に青をセンス鎖,赤をアンチセンス鎖としてみました.
ふつう,生物学の教科書ではセンス鎖とアンチセンス鎖を色分けすることはありません,といかそんなの見たことない.なので,これは基本的に不必要な過剰サービス.
ですが,センス鎖とアンチセンス鎖の色を塗り分ける過剰サービスのおかげで二重螺旋構造を上手く表現できたんだと思います.たいへん見やすいです.秀逸すぎる.
まとめ:「いらすとや」のDNAイラストが不必要なほど秀逸な3つの理由
1.二重螺旋構造がきっちり表現されている.
2.A-T,G-Cという塩基の組み合わせの性質がしっかり表現されている.
3.センス鎖とアンチセンス鎖に,ふつうの教科書にはみられない色分けが施されている.この不必要な表現のため,DNAの二重螺旋螺旋構造がたいへん見やすくなっている.
あらためてイラストを眺めると,その素晴らしさがひしひしと伝わってきます(私だけ?).
最後までお読みくださり,ありがとうございました.
小難しいことを書き連ねてまいりましたが,結論はシンプル.
「いらすとや」のDNAイラストはやたらすげーぞ!
ではまた!
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