「推薦基準厳格化」学校側は生徒に伝えず
広島県府中町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒が自殺した問題で、学校が推薦基準の厳格化を決めた当日に進路説明会を開いていたにもかかわらず、生徒や保護者に基準の変更を伝えていなかったことが、学校がまとめた報告書で分かった。年度初めの説明会でも具体的な基準を示さなかったことを理由に挙げ、「大きな違いはないという非常に甘い考えがあった。生徒は悩み苦しむものだという認識と生徒理解の姿勢が欠けていた」と釈明している。
報告書によると、同校は高校推薦の基準の一つとして「問題行動や触法行為がないこと」と規定。「いつからの問題行動や触法行為が対象になるのか」という具体的な基準は毎年、3年生の担当教諭が検討してきた。
今年度は、昨年5月の第1回進路説明会(保護者会)で、3年生の生徒や保護者に基準を伝えた。一方、同じ頃から3年生の担当教諭は学年会で「いつからを対象にするか」を協議。例年は触法行為などを考慮する年次を「3年生のみ」としてきたが、「1〜3年時」と広げることにし、11月20日午前に開いた校務運営会で正式に決まった。
同校は同日午後、第2回の進路説明会を開いた。だが、例年より対象年次を広げて厳しくした推薦基準は、生徒や保護者には報告されなかった。5月の説明会でも基準の対象年次を伝えていなかったため、従来の基準から変更したことを伝えなくても大差ないと考えたという。
結局、全生徒や保護者に基準変更の説明はされず、推薦できない生徒とその保護者にだけ11月末から12月初めにかけて伝えられた。報告書は「推薦できない生徒以外は関係ないと考えた。1、2年時の触法行為を推薦対象に入れるなら、入学時から全生徒や保護者に伝え、周知する必要があった」としている。【安高晋】