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雨宮寛二「新・IT革命」

アマゾン、銀行の常識を破壊…わずか審査1日で融資、金融機関の独占崩れる

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サイト「アマゾン」より
 最近、マスメディアやインターネットで見かけることが増えてきた「フィンテック(FinTech)」という言葉。さまざまな生活シーンで当たり前のように使われることが多くなってきたが、いまだに意味がよくわかっていないという方も多いのではないか。


 フィンテックとは、Finance(ファイナンス)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語で、ITを活用した新たな金融、決済、財務サービスを指す。これまで銀行などの金融機関がほぼ独占していた融資や決済、資金管理などのサービスを金融業ではない企業も行うようになってきた。

 こうした企業はフィンテック企業と呼ばれ、金融IT分野のスタートアップ(新興企業)を中心に近年徐々に増え始めている。それは、米国のベンチャーキャピタル市場で、2008年に10億ドルであったフィンテック企業への投資額が、14年には100億ドルに迫る勢いで急上昇していることからも窺える。

『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
 このようにフィンテックは米国を中心として成長してきたが、これまでにさまざまなサービスが生み出されている。たとえば、スマートフォンによる決済や送金といった身近なサービスに始まり、クラウドファンディングやオンライン融資、暗号通貨、さらには個人財務管理(デジタル家計簿)などである。

 これらのサービスはいずれも従来の方法や制度を破壊し、需要サイドに劇的な価値や便益をもたらしている点を特徴としている。これをオンライン融資の例で見てみると、従来金融機関で融資を受けるには担保や事業計画など複数の審査が必要であった。金融機関は信用の手形として経営状況を審査し融資の判断を行っている。そのため、判断には時間がかかり、概ね数週間程度が費やされることになる。

 だが、オンライン融資では、金融機関のように担保や事業計画ではなく、EC(電子商取引)における販売実績や決済データなどを基にして融資が実行される。

たった1日で融資判断


 たとえば、アマゾン ジャパンが展開しているAmazonレンディングでは、融資対象者を「Amazonマーケットプレイスでのビジネスにおいて実績のある法人の販売事業者」に絞り、短期運転資金を貸付けている。

 アマゾンでは、あらかじめコンピュータがAmazonマーケットプレイスでの販売実績などを事前に審査するため、最短1日での融資判断が可能となる。これにより、初回の融資申し込みは、ローン入金まで最短で5営業日で完了する。よって、タイムリーな融資が常時受けられるという価値を需要サイドにもたらすことが可能となる。