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原発事故 放水した消防部隊の状況が明らかに
3月12日 19時11分

原発事故 放水した消防部隊の状況が明らかに
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5年前の福島第一原子力発電所の事故では、最初に1号機の原子炉建屋が爆発、その後、3号機、4号機も爆発し、使用済みの核燃料を保管していたプールが冷却できなくなりました。このとき、原発を冷やすための放水活動を行った部隊の1つに、東京消防庁のハイパーレスキュー隊があります。当時の映像から、現地に向かう隊員たちの緊迫した状況が明らかになりました。
東京消防庁が新たに明らかにした映像には、5年前の平成23年3月18日に、隊員たちが放水の準備のために東京電力福島第一原子力発電所の敷地に入っていく様子が記録されています。
隊員たちは、消防車両に乗って敷地内の放射線量を測定しながら移動していて、車内では「今のところ61ミリシーベルトです。これなら30分くらいは活動できる」とか、「積算で見積もると50分は活動可能です」などと確認し合う姿が映っていました。
原子炉建屋の位置を確認しながら車を進めていて、隊員たちは「鉄骨が見えるのが1号機。煙突があるのが2号機。3号機はまだ見えません」などと報告していました。
このほか、3月18日の深夜から19日にかけて3号機周辺で行われた放水活動の緊迫した状況も記録されています。
真夜中の時間帯、手探りで放水の準備をする隊員が、「左側にぽっかりとマンホールの穴が開いている場所があるから、注意が必要だ」などと、ほかの隊員に注意を促す場面もありました。
また、放射線量を測定する線量計の音が鳴り続けるなか、放水で使う海水を取り込むためのホースをつなぐ隊員の姿も映っていました。
3月19日の午後には、高い位置から大量に放水できる「屈折放水塔車」から3号機の原子炉建屋に向かって放水する様子が撮影されています。

経験や教訓 当時の隊長が語り継ぐ

爆発した原子炉建屋の放水活動に当たった東京消防庁では、最前線の部隊の隊長が、事故に対じした経験や教訓を語り継ぐ活動を続けています。
東京消防庁ハイパーレスキュー隊の当時の総括隊長、高山幸夫さんは、爆発した3号機の原子炉建屋の放水活動に当たりました。およそ40人の隊員を率いて、3月18日の深夜に原発に入り、早速、放水のために必要な海水を取り入れるため、ホースを海までつなぐ作業に当たりました。
真夜中の時間帯、線量計の音が鳴り続けるなかで、50メートルのホースを7本、手作業でつなぎました。
高山さんは「通常の災害現場と違い、何も聞こえないし、においもしないから、よけいに恐怖心が募った。初めて身の危険を感じた現場で、隊員を無事家族に返すため、一刻も早く放水し、現場を離れなければと思った。こういう現場でいかに冷静に判断できるか、その大切さを学んだ」と振り返りました。
高山さんは来年3月に退職の予定で、それを前に、未曽有の事故に対じした経験や教訓を全国の消防隊員に語り継ぐ活動を続けています。
どんな場面でも冷静に対応するには、現場でどう動くのか日頃から想定したうえで、それでも想定外の事態が起きることを想定しておくことが、5年前に学んだ教訓だといいます。
先月、都内で若手隊員を前に「災害が起きたら自分はどうするか、ふだんからイメージし、頭の中で訓練しておくことが大事だ」と語りかけていました。
高山さんは「当時の状況や気持ちを隊員に聞いてもらって、自分が現場に行ったらどうするのか考えてほしい。そうでないと現場で瞬時に冷静に判断できる力は備わらないので、当時の経験を伝えるのが私の使命と思っている」と話していました。

東京消防庁 放射線災害への備えを強化

東京消防庁は原発事故のあと、放射線災害に対応する部隊や特殊な車両を増強しました。
東京消防庁は、災害現場での救助活動を専門とするハイパーレスキュー隊の中に、放射性物質や化学物質による災害に対応する特殊部隊があります。この部隊は5年前も3号機の原子炉建屋での放水活動を支援しましたが、当時こうした部隊は1隊しかありませんでした。
東京消防庁は、原発事故の2年後に特殊部隊を新たに増設するとともに、放射性物質による災害に対応する特殊な車両も配備しました。現場の放射線量を最初に調べるため、隊員が車の外に出ずに放射線量を測定する機器が備えられた「偵察車」や、放射性物質が体に付着していないかスクリーニング検査を行う設備を備えた「除染車」、放射線を通さない鉛で覆われた大型の「特殊災害対策車」です。
特殊部隊は今月、放射性物質を運搬中の車両が事故を起こしたという想定で訓練を行いました。防護服を身に着けた隊員が、事故でけがをした人を救助し、「除染車」の中で放射性物質が付着していないかスクリーニング検査を行っていました。
東京消防庁特殊災害課の山東俊主任は「放射性物質が絡む特殊な災害に対応できるよう、訓練を重ねるなど、対策を強化したい」と話していました。

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