【3月13日 AFP】米グーグル(Google)傘下の企業が開発した囲碁の人工知能(AI)「アルファ碁(AlphaGo)」と韓国のプロ囲碁棋士・李世ドル(Lee Se-Dol、イ・セドル)氏(33)による5番勝負の第3局が12日、韓国ソウル(Seoul)で行われ、アルファ碁が勝って3連勝した。

 アルファ碁は4時間余りで李氏を下した。李氏は18の国際的なタイトル保持者で、現代最強の囲碁棋士の一人。13、15日に行われる残り2局でアルファ碁に一矢を報いたいところだ。

 李氏は対局後の記者会見で「何と言っていいか分からないが、まず謝りたい」と意気消沈した様子で語った。「多くの人たちの期待に応えられず、申し訳ない。私の力不足だ」として、アルファ碁の能力を「見誤っていた」ことを認めた。

 一方、アルファ碁を開発したグーグル傘下のAI開発企業グーグル・ディープマインド(Google DeepMind)のデミス・ハサビス(Demis Hassabis)最高経営責任者(CEO)は、「正直いうと、あっけに取られていて言葉が出てこない」と笑顔でコメントし、李氏の敗北を、人類がコンピューターに敗北したというマイナスイメージで捉えるべきではないと強調し、次のように述べた。

「アルファ碁の開発に使用した手法には汎用性があるため、私たちはいつかこの技術を他の多くの問題解決に生かせると考えている」

 ハサビス氏は、アプリケーションを電話のさらなるスマート化に利用する他、「研究者らの一助となって、医療やその他の分野の世界で最も難しい問題の解決にもつなげたい」と意欲を語った。

■「コンピューターに美を植え付けた」

 特定のタスクを処理するのではなく一般的で多目的の知能──さまざまなインプットに基づいた人間の論理的思考や自己学習に似た知能──を開発することがAIの究極の目標だ。

 囲碁は3000年前に中国で生まれ、2人のプレーヤーが19の路盤で黒と白の碁石を使ってより多くの領土を取り囲むことを競うボードゲームだが、グーグルの開発者が目を付けたのは、より「人間らしい」手法が単なる計算能力を上回るということだった。

 アルファ碁は、より人間らしい方法でデータを処理する2つの「多層構造のニューラルネットワーク」で、人間の棋士であれば直感的に無意味だと分かる無数の指し手を排除し、また対局の経験から学習して自らを改善するようにできている。

 韓国ソウルでアルファ碁の勝利を見届けたグーグルの共同創業者セルゲイ・ブリン(Sergey Brin)氏は優れた棋士の碁を見るのは「美を見るのに似ている」と述べ、「コンピューターにこのような美を植え付けることができたということに非常に興奮している」と語った。(c)AFP