2016年3月14日00時18分
安倍晋三首相は13日の自民党大会で、国会答弁などで再三意欲を示した憲法改正には一切触れず、夏の参院選に向けてアベノミクスの「成果」を強調した。これまでも選挙前には経済対策を中心に訴え、選挙後に集団的自衛権の行使容認や安全保障法制など肝いりの政策を一気に推し進める手法を繰り返してきた。自民党内にも「参院選後の改憲推進」を前提とする空気が広がっている。
安倍首相は党大会の演説で、国会議員や参院選の立候補予定者、地方組織幹部ら約3500人を前に声を張り上げた。「アベノミクスとは何か。雇用を増やし収入を増やすことだ。経済政策は間違いなく結果を出している。名目GDP(国内総生産)600兆円に向かって歩みを進めていく」
約20分間の演説ではアベノミクスの効果を訴える数字を並べた。「デフレ不況で失われた国民総所得を40兆円奪還」「110万人以上の雇用増」「有効求人倍率は24年ぶりの高い水準」「最低賃金は3年連続大幅増」……。
演説の最後に持ち出したのは、民主など5野党の連携に対する牽制(けんせい)の言葉だった。「今年の戦いは、政治に国民に責任を持つ自民・公明の連立政権対、民主・共産の勢力との戦いになる」と強調。安保法廃止を求める野党を批判し、「廃止したら日米同盟の絆は損なわれる」と訴えた。
首相は経済政策や野党批判を能弁に語る一方、意欲を見せている憲法改正については一言も触れなかった。党大会での言及は、谷垣禎一幹事長が党運動方針の説明で「憲法改正に向けた国民的な議論を深める」と述べた部分だけだった。
ただ、これは安倍政権が繰り返してきた手法だ。首相が重視し、国論を二分しかねない政策について、選挙が近づくと「ブレーキ」を踏むように発言や公約での表現を抑制。選挙で勝利すると、白紙委任を得たかのように一気に進めるやり方だ。
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