。.*三日月姫*.。
- 。.*橙空*.。
。.*216*.。
。.*216*.。
「また……・・・、今度、」
「ずるい。」
「、」
「いつか・・・ぜってぇ言わすから。」
今日はいつもより、強気で強引な姫に。引かれる手に・・・・俯き、そのままついて歩き出す。
南校舎の階段をゆっくり上りながら、姫と、こんな風に手を繋ぎ学校を歩くなんて思わなかったと・・・思った。
何度も落ち込みながら、降りてた階段。3階に着いて、屋上へと向かう10段くらいの階段のほうに、向いた。
「ちょっと待って、」
「ん、」
姫のココアを渡されて、1人そこへ、軽く上がって行くのを見つめる。ドアの前に乱雑に積まれた机と椅子を寄せて、少し空いた隙間からドアノブを回した。
「まだ開いてたわ。」
「すごい・・・・」
「おいで」
伸ばされた手に、階段を駆け上がりココアを渡したら、持ち替えてすぐに繋がれた手。
その手の強さは、男の人。初めて行く屋上と、姫に、ドキドキした。
「気ぃつけて、」
ドアの前には、すぐに高い剥げた水色のフェンスがあって、狭いそこにも机や椅子が乱雑に積まれてる。そこを抜けたら……渡り廊下と同じ形の屋上。
「あっち・・・行こ。なるべく真ん中歩くんだよ、下から見っかるから」
「ふふ」
姫が指差した北校舎のほうに移動する。普通にドキドキしてるのに、南校舎の上でいいのに、何故か移動する。
「大丈夫、?」
手は引かれてるままだけど、いつもより足が上手く動かないあたしは・・・あんまり早く歩けない。それに気づいてくれた姫。
「足、が……、すくんで、る、」
「、高いとこ、怖い、?」
「ううん、」
高いトコも平気だし姫と居れて嬉しいのに、ドキドキが、なんかどんどん大きくなって・・・ちょっと手も震えだしてた。
「ちょっと、座ろ、」
「いつも、」
「、」
座ろうとした姫を止めた。わざわざ北校舎に行く意味。
「いつも、ここ、来てたんですか、」
それなら・・・・姫が見てた景色を、あたしも見たい。ここじゃなく、姫が見てた場所で。
「いつも、じゃない、けど……、1年の時、もう学校やめたやつと、渉くんと、3人で、そん時・・・俺ら、北校舎だったから、あっちから入ってた、」
姫が指差したのは、1年8組の横にある階段の上。そこにも屋上に上がるドアが見えてる。
「そこに・・・、そこまで行きたい、」
「……、大丈夫、?」
「はい……、」
「ゆっくり、行こ・・・、」
「うん・・・」
子供なあたしは・・・・経験した事がない事にあうと、こんな事くらいですぐに震えたり、泣いたり、だけど・・・ゆっくりでいい。それで呆れるような男なら・・・・
それで呆れるような男なら所詮それだけの男。なんて・・・神崎さんのようには思えないけど・・・、きっと姫は・・・・そんなあたしでも一緒に居てくれるような気がする。
「渉くんとね、やめたやつ・・・
「ふふ」
「バレるっちゅーの」
あたしの少し怖がってる気持ちを・・・この人は分かってて笑って話してくれる。だからきっと・・・どんなあたしでも一緒に居てくれる。だけど・・・それに甘えたまま居ちゃダメ。甘えるだけなら・・・子供のまま、成長なんて出来ないから。
「屋上あがる前までは、「バレねぇかな」って、ずっと2人で言ってんのに」
「ふふふ」
あたしの知らない姫が・・・沢山居る。今より幼いはずの、可愛い姫。だけどきっと・・・、会った瞬間好きになってる。好きになる理由なんて、きっと・・・無いから。
「ん。良かったね、着いた。この辺に居た。俺ら、」
「うん」
「怖くない?」
「うん」
北校舎の屋上のドアのすぐ傍。そこに座った。
見上げる空は、オレンジ。地面も、フェンスも、壁も、姫と繋がった手も。
「真上から半分ずつ、色が違う・・・」
「うん・・・」
綺麗な薄い水色が混ざった部分と、燃えるみたいなオレンジ色の空。2人で暫くじっと眺めてた。いつもの・・・学校の音を聞きながら。
「、・・・、わかんねぇ・・・、んだ、」
「ん?」
空から姫に視線を移すと、立てた膝に腕を伸ばし、その腕に顔を乗せて、空じゃなく姫は、あたしを見てた。
温かく埃っぽい風が、あたしの髪をばらつかせる。姫がそれを・・・耳にかけてくれながら静かに笑う。
「……・・・、」
「え?」
「俺・・・・依織ちゃんに、どんだけ触れていーか・・・、」
「、」
「「彼女ほしーっ抱きしめてぇ」って、湊がここで、よく言ってた」
「うん・・・」
「だけど、俺・・・、抱きしめたい感覚、分かんなくて・・・」
「……」
「抱きしめて・・・、」
「、」
「…・・・。」
なんとなく・・・・の、勘。姫……。その時、彼女・・・・居たんだ。
「……。」
「・・・。」
目が・・・・合ったまま、話さない姫は・・・・絶対、今・・・焦ってる。
「……」
「ぅ、ん・・・?」
「ここに・・・一緒に来ましたか、?」
「…、や、、え、?」
「・・・・、イーデス、別に、あたしの知らない時の、大野くんだから、」
姫はその女の子を大切にしてたのかなって。その女の子にも優しかったのかな、って。ちょっと泣きそうだったけど・・・思わず目は逸らしちゃったけど、頑張って強がってみる。
「だって・・・思い出が要んじゃん。」
「、」
「話せる思い出。だから・・・・学校デートしに来た。そんなの依織ちゃんだけ。ここに一緒に来たのも、依織ちゃんだけだよ・・・、」
「話せる・・・思い出、?」
「だって俺、依織ちゃん嫁にもらうから。」
「……。」
「え・・・・、ダメ、?」
神崎教訓その1。
「男の結婚しようは、信じるな。」
しかも付き合った次の日・・・・。ある意味・・・・また、神崎問題。