。.*三日月姫*.。
- 。.*橙空*.。
。.*215*.。
。.*215*.。
「姫、??って、ナニ、」
「な、何!?え、どしたの!?」
あたしは・・・・夢でも見てたんだろうか。長い、長い夢。白いシャツに、黒のパンツ。制服の。昨日までと同じ姫が、立ってる。
「大丈夫??何、姫って、」
「、、、」
軽いパニック。姫が何で居るのか全然、思い出せない。
「卒業……した、」
「した。昨日。」
「……、なんで、居る、の、」
「んー・・・。依織ちゃん俺のだって、広めに。」
「……、」
「だって、誰も依織ちゃんが俺のだって、知らねぇままじゃん。」
「、・・・、放課後、」
それなら放課後に来たって誰も居ないって言いかけたけど、問題はそんな事じゃない。職員室のほうを見てたから、姫が来たのは8組の横の階段か…もう8組に行ってたか、だけど、それも問題じゃない、
「んふふ・・・。寝すぎて遅くなっちゃった」
「、」
絶対・・・、嘘。なんか、そんなの広めるなんて、姫っぽくない……気が、する。
「依織ちゃんまだ居て良かった。んじゃ・・・行こっか。」
「え、え?どこに、」
あたしの手を取り、歩き出す姫。
「どこ行こっか?」
「あ、待って、あたしカバン、」
「カバン邪魔だから後でいーよ。」
「え、」
「学校デートだから。カバン。要らない。」
「へ?」
「まず食堂行くか」
「えぇっ!?」
「好きっしょ、ココア」
にこにこ嬉しそうだけど、ココアを好きなのは姫だし、廊下に人は居なくても食堂には人がいっぱい。
「バレ、ばれます、っ」
「バレねぇよ。その為に制服着てきたんだよ。それにバレたとしてもいんだよ。ほっときゃあ。」
男っぽくて、ちょっと強引な姫は…・・・何故か、向かいの南校舎で福田先生に、教科書で頭を叩かれても笑ってた、あの日の姫を思い出させる。
優しく、可愛く笑う姫。優しい声であたしに話しかけてくれる姫。そんな大野くんとは、少し違う・・・ちょっと強気でぶっきらぼうに見える。だけど、それはあたしが知らないだけで・・・片足を膝に乗せる仕草や喋り方・・・、そんなのはたまに見えてた。
「ん。」
「ありがとう。」
自動販売機でココアを買って渡してくれる。手は当たり前のように繋がれる。
「んー。どこから回ろっか。」
「どこでも、」
「じゃ。まず水泳部行くか。」
「え・・・。」
まさか・・・佐藤くんの事、知ってる・・・?わざわざ水泳部、って、
「んじゃあ・・・、俺が1年ん時、初めて絡まれたトコ行く?体育館の前だしちょうどプールの前で都合もいいし。」
「え・・・?」
「やめとく・・・?」
「いや、」
「違う、体育館は、3年殴ったとこだ、絡まれたのは違う、」
「、」
「んじゃあ、そん時友達と一緒に停学だって言われたトコにするか、」
「は・・・!?」
「嫌・・・か、んーでも、なんか、他……、なんか、俺、あんまいい思い出ねんだよね、」
エピソードが・・・・全然。全く。
「女の子の好きそうな・・・いい場所なんて、ガッコウ、ある、?」
「、」
姫じゃない。
「屋上!屋上行くか。」
「・・・・入れないし。」
「それがね、入れんだよ。」
姫じゃない!誰!
「そっかそっか。そーだ。屋上だ」
「……。」
渡り廊下を・・・手を繋いで歩く。差し込む夕日は・・・初めて姫を見た時とは違うけど。見上げた横顔は・・・・あの日の、まま。
「何回も・・・、ここですれ違った」
「うん・・・」
「うんって。依織ちゃん知らないっしょ・・・。」
知ってるよ・・・。だって、姫が知らないだけで・・・あたし、姫よりほんの少しだけ前に見つけたんだもん。
あたしが初めて見たのは……前を見て歩く綺麗なこの横顔。
「1回も・・・目ぇ合わなかった。」
「…」
「橋の上で見た次の日も会った。ここで。」
「え・・・・」
「しょっちゅう会ってたけど、目ぇ合わなかったもん。あ、1回だけ合ったか、」
あたしは・・・ずっと探してた。もう一度会いたいって、何度も何度も願ってた。なのに、
「会ってた・・・!?」
「だから、そう言ってんじゃん。大体いつから俺の事好きなの。」
「・・・・。」
やん。聞かないで、
「言え。」
「…、」
「聞きてぇ。聞く。」
留まる、思い出の渡り廊下。
だけど・・・手を繋ぎ、何人かが通り過ぎてくのだって、ちゃんと見れないのに・・・いつ好きになったかなんて、もう・・・・