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「姫、??って、ナニ、」


「な、何!?え、どしたの!?」




あたしは・・・・夢でも見てたんだろうか。長い、長い夢。白いシャツに、黒のパンツ。制服の。昨日までと同じ姫が、立ってる。




「大丈夫??何、姫って、」


「、、、」




軽いパニック。姫が何で居るのか全然、思い出せない。




「卒業……した、」


「した。昨日。」


「……、なんで、居る、の、」


「んー・・・。依織ちゃん俺のだって、広めに。」


「……、」


「だって、誰も依織ちゃんが俺のだって、知らねぇままじゃん。」


「、・・・、放課後、」




それなら放課後に来たって誰も居ないって言いかけたけど、問題はそんな事じゃない。職員室のほうを見てたから、姫が来たのは8組の横の階段か…もう8組に行ってたか、だけど、それも問題じゃない、




「んふふ・・・。寝すぎて遅くなっちゃった」


「、」




絶対・・・、嘘。なんか、そんなの広めるなんて、姫っぽくない……気が、する。




「依織ちゃんまだ居て良かった。んじゃ・・・行こっか。」


「え、え?どこに、」




あたしの手を取り、歩き出す姫。




「どこ行こっか?」


「あ、待って、あたしカバン、」


「カバン邪魔だから後でいーよ。」


「え、」


「学校デートだから。カバン。要らない。」


「へ?」


「まず食堂行くか」


「えぇっ!?」


「好きっしょ、ココア」




にこにこ嬉しそうだけど、ココアを好きなのは姫だし、廊下に人は居なくても食堂には人がいっぱい。




「バレ、ばれます、っ」


「バレねぇよ。その為に制服着てきたんだよ。それにバレたとしてもいんだよ。ほっときゃあ。」




男っぽくて、ちょっと強引な姫は…・・・何故か、向かいの南校舎で福田先生に、教科書で頭を叩かれても笑ってた、あの日の姫を思い出させる。


優しく、可愛く笑う姫。優しい声であたしに話しかけてくれる姫。そんな大野くんとは、少し違う・・・ちょっと強気でぶっきらぼうに見える。だけど、それはあたしが知らないだけで・・・片足を膝に乗せる仕草や喋り方・・・、そんなのはたまに見えてた。




「ん。」


「ありがとう。」




自動販売機でココアを買って渡してくれる。手は当たり前のように繋がれる。




「んー。どこから回ろっか。」


「どこでも、」


「じゃ。まず水泳部行くか。」


「え・・・。」




まさか・・・佐藤くんの事、知ってる・・・?わざわざ水泳部、って、




「んじゃあ・・・、俺が1年ん時、初めて絡まれたトコ行く?体育館の前だしちょうどプールの前で都合もいいし。」


「え・・・?」


「やめとく・・・?」


「いや、」


「違う、体育館は、3年殴ったとこだ、絡まれたのは違う、」


「、」


「んじゃあ、そん時友達と一緒に停学だって言われたトコにするか、」


「は・・・!?」


「嫌・・・か、んーでも、なんか、他……、なんか、俺、あんまいい思い出ねんだよね、」




エピソードが・・・・全然。全く。




「女の子の好きそうな・・・いい場所なんて、ガッコウ、ある、?」


「、」




姫じゃない。




「屋上!屋上行くか。」


「・・・・入れないし。」


「それがね、入れんだよ。」




姫じゃない!誰!




「そっかそっか。そーだ。屋上だ」


「……。」




渡り廊下を・・・手を繋いで歩く。差し込む夕日は・・・初めて姫を見た時とは違うけど。見上げた横顔は・・・・あの日の、まま。




「何回も・・・、ここですれ違った」


「うん・・・」


「うんって。依織ちゃん知らないっしょ・・・。」




知ってるよ・・・。だって、姫が知らないだけで・・・あたし、姫よりほんの少しだけ前に見つけたんだもん。


あたしが初めて見たのは……前を見て歩く綺麗なこの横顔。




「1回も・・・目ぇ合わなかった。」


「…」


「橋の上で見た次の日も会った。ここで。」


「え・・・・」


「しょっちゅう会ってたけど、目ぇ合わなかったもん。あ、1回だけ合ったか、」




あたしは・・・ずっと探してた。もう一度会いたいって、何度も何度も願ってた。なのに、




「会ってた・・・!?」


「だから、そう言ってんじゃん。大体いつから俺の事好きなの。」


「・・・・。」




やん。聞かないで、




「言え。」


「…、」


「聞きてぇ。聞く。」




留まる、思い出の渡り廊下。


だけど・・・手を繋ぎ、何人かが通り過ぎてくのだって、ちゃんと見れないのに・・・いつ好きになったかなんて、もう・・・・