。.*首*.。

。.*199*.。


「なんでよりによって、階段上ったトコで喋ってんの・・・・、俺・・・全然帰れねーし、」


「、ぁ、ごめん、」


「、」


「それにやっぱ2人。そーなんじゃん。」


「「……・・・。」」


「え?そーでしょ?何?隠してんの??え?俺には隠してんの?ちあきちゃんは知ってた?知らないの俺だけ?俺、さとっさんの彼女ちゃんに手ぇ出したりしないよ?」




なんか・・・神崎さんは居てもメンドクサイ事になるけど、居なかったらメンドクサイ事が処理しきれないんだな、って思った。




「隠してねぇよ。」


「・・・。」




短い。


言い訳が短すぎるよ、姫・・・。河野さん誤解してるから、恥ずかしいけど……ちゃんと説明してあげて……、




「あぁ!!もしかして・・・今……デキちゃった・・・?」


「、」


「……・・・やらしー言い方すんな。」


「そっかぁ・・・そーゆー事か。」


「そーゆー事だ。」


「そらしゃーないわなー?依織ちゃんのスキスキ光線、破壊力ハンパねぇもんな?」




光線って、あたし・・・そんな光線出してない、




「超・・・・かぁいかった・・・」


「、」


「なんちゅー可愛い顔してんだって、」


「、」


「オモッテタ・・・」


「あれは、やべぇな。」


「うん。」




今までと違う恥ずかしさに襲われて・・・・ありえないくらい、顔も耳も首も熱くなって来た。




「ぁ、あた、し、ソンナ、」


「どきどきした。」


「いやぁ・・・可愛いもんなぁ依織ちゃん。いいねぇ可愛い子は得だねぇ」


「うん。得だ。」


「チ、そ、」




可愛いなんて、おだてられて顔が更に熱くなって来るけど、そんなの、絶対うそ。あたしは・・・、美人でもマシュマロタイプでもキャンディタイプでも、ふわふわタイプでも、もう・・・、なんか“可愛い”を、現す言葉のチョイスも、分かんないけど、あたしはこんなに褒められる程、可愛くなんてない。


そんなの、ちゃんと自覚してる。目だって一重だし、鼻だって低い。母親って嘘つかない。ママに、中の下か下の上って言われた事もあるもん。「並よ並。ごめんね、可愛く生んであげなくって」って笑ってた。




「可愛く、ナイ、デス、」




可愛く生まれて来た子は、こんな時なんて言うんだろう、あたしは、こんな風に「可愛い」を浴びせられた事がなくって、嘘だって分かるから凄く、凄く否定したくなる。




「ワカッテ、ます、カラ、も、」


「え・・・可愛いよ?」




姫がびっくりしたみたいな顔で言って来る。恥ずかしくて、もう俯いてぎゅっと目を閉じた。2人に気を遣われてるのが、申し訳なくって、情けなくなって。「違う」って、言葉が出ないから首を横に振る。




「あーーーー可愛いねぇ女子高生。そういう事か。」


「どーゆー、事?」


「あんな?依織ちゃんを好きな男は・・・・凄く可愛く見えるんじゃねぇか?あばたもえくぼってやつだよ。」


「……。」




河野さん。それ、けなしてる。だって、やっぱり可愛くないって事だもん。




「どういう意味だよ。リンダ、話分かりにくいよ、英語かそれ。」




姫、全然違うよ。河野さん、日本語しか喋ってない。だけど、意味なんて分かんないままで居て。




「んー?まぁ、依織ちゃんは生きてるだけで可愛いっちゅー事だよ。」


「あぁ、それ分かる。」


「ほら。依織ちゃん顔上げてみ?あんな?依織ちゃんの“気”ってゆーか、“心構え”ってゆーか?そういうのが、可愛いんだよ?元気出せ。」




だから、河野さん。それ褒めてるようでけなしてるから。「元気出せ」って・・・結構酷い。




「あー、俺、それも分かる。」


「ほぉか、さとっさんは何でも分かんだな。」


「“気”でしょ?依織ちゃんあんま喋んねぇけど、いっつも優しい顔してるし、気遣いっちゅーの?にこにこしてんだもん。そういう事でしょ。」


「だな。でも・・・肝心な事はいっこも分かんねぇみたいだけどな。」


「は?」


「女心ってやつ?」


「……・・・。」


「それは、そういう事なんだけど、依織ちゃんは、」


「分かりました!はい!大丈夫です!」


「「・・・・・。」」




河野さんの話を止める為に、いきなり出した大きな声。2人とも驚いた顔をしたけど、仕方ない。だって、女心が分かってないのは、河野さんもだもん。


「可愛い」を連呼されるのも困るけど、「自分の顔が可愛くないって思ってる話」なんて、姫にされたらもっと困る、




「え・・・、河野のおじさん、」


「怖っ!!」


「キモチワルッ!!」


「ぎゃっ!!」




突然、あたしの後ろから聞こえた声。振り向いたら・・・・




「…・・・・」


「、こんばんは、」


「えっと、」


「こんばんはーーー!」


「おーーーー!お前ら久しぶりだな!!」


「お久しぶりでーす」




突然の賑やかさは、6人の女の人達。その中で、河野さんを「河野のおじさん」って呼んだ人は・・・・




「誰、」


「男前が居るなぁって思ってたの、知り合いって」


「いやー俺もまだまだいけるか」


「おじさん違うって、その男の子の事よ」


「分かっとるわ」




あたしの知ってる人。結友ゆうのママだった。