。.*196*.。


「まぁ、それはいつかって考えてるんでしょうけど、きっと大野さんには思い出せないと思うし、それは私が気づいただけだから、どーでもいいの。でね、こいつらデキんな。って思ったんだけど」


「・・・・言え。思ったんならそん時に教えろ、」


「やだよ。私見合いばばあじゃないっつってんでしょ。ほっといても自然にくっつくのがいいんじゃん。だけどそれより、私の最大の失敗はね。」


「…、」


「そん時から、依織ちゃんの好きなの暁だと思ってたのに、そう・・・青樟祭の日だよ。あの日、依織ちゃんが好きなのは暁じゃないって、思ったあれ。あれが私の最大の失敗だった。他の男だったんだって・・・私……泣きそうだった、っちゅーか、泣いた。私だけじゃなく暁まで失恋じゃん、って、ね、もぉ…、、」




そう・・・、なの、・・・?あの時言ってた、友達が「失恋しそう」って……、あたしのせいだったの?友達って言ったから、女の子なんだと思い込んでた。だけどこの2人は、ちゃんと友達。




「私まで誤解してるし……、だめじゃんね、……でもね・・・、暁も……・・・依織ちゃんに好きな男が居るって、自分じゃない、って・・・あの頃から、思ってたと思うよ、」


「、やっぱ、もう可能性・・・ねぇな、って思った・・・でも、無理だって分かってから、ちあきが、・・・、ずっと心配してくれてんの、俺、分かって、た。」


「うん、私は……、私が心配してんの、暁も分かってるって、分かってた」


「うん」




笑ってお互いの顔を見てる2人を見て思った。この2人は・・・・やっぱり、友達。言葉にしなくても伝わる思いがある。優しさがお互いにちゃんと伝わってる。一緒に居るだけで、ちゃんとそれを感じ取れる。


だけど、あたしは・・・、あの日、神崎さんに、姫が好きだってバレたんだと思ってた。それから姫に避けられてるような気がしたのは、神崎さんからあたしが好きだって、姫が聞いたんだと思ってた。


だけど・・・・待って、おかしい・・・、それなら何で・・・、?好きなのは姫じゃないって思ったのに、何であたしをここに連れて来たの・・・?なんで好きなのが姫だって分かったの・・・?




「なんで、あたしを・・・、じゃあ神崎さんは、なんであたしを、」


「勘・・・?だって、依織ちゃんの好きな男は正体不明なままだったけど、3年とは思わなくて…、でも卒業であんだけ泣いてたらやっぱ3年かな、って思ったの。で、好きって言わないんなら喋った事ないのかなって。だけど「ある」って言われて、」



姫と神崎さんの見えない会話は、友達だから言葉が少なくても通じてるって言うのがあるけど・・・、会話は、きっと神崎さんの勘が支えてる。


今も、この人はあたしの言いたい事をすぐに読み取った。




「最後の決め手はね・・・、「卒業したら会えない」がキーワードだったの、」




そう言えば……神崎さんは、「卒業したら会えない?」ってあたしに聞いてた……。あの後、急に神崎さんの態度と行動が変わった・・・・。




「“じゃあ依織ちゃん、その男が卒業したら会えないんだ”って思ったらね、それを卒業式の前日に、言葉にしてた男が居たんだよ・・・。それでハッとしたの。同じこと言ってるって。」


「、いいよ、ちあき、も・・・、やめて、」


「だぁめ。依織ちゃんにも暁くんにも。私が知ってる事、教えてあげないと。じゃないと・・・またすぐにしり込みして遠慮して悩んじゃうでしょ、2人とも。だから言うの。あんたらは聞くの。分かった?」


「、」


「…」


「昨日、暁がね?ヘアゴムとね割引券、依織ちゃんに渡してくれって言うからさぁ、「卒業式の後渡せば?」って言ったら「来るか分かんねぇし」って言うから、確かにそうだ、と。1年は自由参加だし・・・私が暁の為に依織ちゃん来させるように仕向けた所で、依織ちゃん他に好きな男居ると思ってたからさ、暁もきっと辛いだけだろうし、って、」


「、」


「で・・・「卒業してもまた会って渡せばいいじゃん」っつったら「卒業したらもう会えないから」ってね・・・。この男が俯いて情けない顔して言うんだよー・・・もうね、あたしったら暁が依織ちゃん好きなの知ってるから、泣くのどんだけ我慢したか!もうっほんっと辛かったの!依織ちゃんに渡した時「ラーメンチケット、今日使ってやって」とも言えなかった!依織ちゃん行って暁くん仕事しながら泣いたらどーすんの……。も・・・、」




神崎さんが大げさに泣く真似をする。だけど、あたしは・・・・今日は本当に涙が止まんない。あたしが、あんなにも姫を想って泣いてたのに、姫も同じように辛かったなんて信じられない。嬉しいのと、苦しいのと、ごめんなさい、って気持ちがごちゃごちゃに混ざる。


あたしの涙を見て、神崎さんがニッコリ笑った。