。.*三日月姫*.。
- 。.*言葉*.。
。.*194*.。
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「頑張ったら・・・」
自転車をクルっと方向転換させてた神崎さんの動きが姫の言葉で・・・止まる。神崎さんのくせに、恐る恐る姫のほうを見た。
「手に・・・入る?」
「、」
「、」
この時、急激な不安に襲われた。「頑張ったら手に入るか」って問いかけは・・・、あたしにじゃなく、神崎さんを見つめて言ったから。
だって、「頑張ったら」って・・・、だって、姫はあたしの「好き」は、もう知ってる・・・、
「必ず手に入るんじゃなくて、頑張らなきゃ手に入らないって、言ってんの。」
「……。」
「、」
それでも神崎さんを見つめる姫。
「暁は・・・頑張った、?」
「……」
「……、」
姫が・・・・神崎さんを見つめる。
お願い・・・・、お願いだから、あたしを……、見て・・・
「好き・・・は、ずっと前だけど・・・、伝えた」
心臓が・・・握り潰されるみたいに、痛い。苦しくてぎゅっと、瞼を瞑った。このまま。また、あたしの恋は終わるんだって・・・・
神崎さんに、姫への想いはなくても・・・姫はあたしの両手を握ったまま・・・神崎さんに好きを伝えるのかなって、
「ずっと前じゃなく、今。今伝えなきゃ、」
「今・・・は、さっき言ったけど、」
「んん・・・?言った・・・の?」
「だけど、頑張るとは・・・違う……。」
「ん??え?」
「俺、どしたらい?どしたら頑張るに…なる?」
誰も。何も喋らないから、顔を上げた。そしたら、姫は・・・神崎さんじゃなくて、あたしを見てた。
前は・・・、あたしの知ってる前なのか、それよりも前の話なのか分からないけど、姫は、神崎さんを好きだった。
“今”は・・・あたしになっただけ。
「大野くん……、」
「うん」
「あたし・・・、大丈夫です、」
笑ってさよならを。今なら、神崎さんのように出来る気がした。
「大野くんは・・・、頑張って下さい……・・・」
手の力を・・・ゆっくり抜いて、姫の手に包まれる感覚を、覚えておこうと思った。
「待っ、え…、だめ!なんで放すの!俺頑張るっつってんじゃん、」
「、」
「何…、ちょっと、あんたらどうなってんの、」
絡んだ指を外した途端、離れないように、またぎゅっと包むように握られた両手。
「嫌。だめ。いやだ。依織ちゃん俺の事好きっつったじゃんか、なんで、」
「大野くんは・・・、神崎さんが、好きだっ、」
「「はぁっ!!?」」
「「好きじゃねぇよ!」」
2人が、声を揃えて叫ぶ。
「だって、」
「なんでそーなんの!」「依織どっからその妄想出てきた!」
「、」
違う、の……、?
「なんで俺がちあき好きになる話になんの!?」「なんねぇよ!友達だよ!友達は好きになんねぇよ!なんの誤解だ!」
2人がわーわー叫んでるから、内容がよく分からないけど、なんだか勘違いだって事は、分かる。
「ちあき好きになった覚えは1回も!無い!」「どんだけのマイナス思考だよ!依織の脳みそ!色!人と違うんじゃね!?」
「、」
「お前言いすぎ。」
「あぁん!?全っっ然!言いすぎじゃねぇし!好きー言われて手繋いで大野くんどうぞ。て!私が好きて!バカじゃないの!?依織バカじゃないの!?」
「バカはお前だろ!なんっで依織ちゃんと話してんのに入ってくんだ!ちあき絡むとぜってぇどんな簡単な話でも、話ややこしくなんだよ!」
「!!!」
神崎さんが、姫の頭を思いっきり叩いた。
「ってぇ、な!」
「どあほうが!依織ここまで連れて来てやったの誰だと思ってんの?!さっさと諦めやがって根性なし!好きなら好きって、あんたがとっとと言わないからややこしくなってんでしょーが!俺のせいじゃねぇよ!」
「……・・・・、」
姫が・・・急に黙り込んで・・・唇が、“むっ”、ってとんがった。
「ほぉら!当たってるから言い返せないし!」
「だって・・・。」
「なによ。」
「依織ちゃん……・・・俺なんかが好きつっても、迷惑だし、」
ぎゅ~~~って、ぎゅ~~~って・・・、嬉しい苦しいが来る・・・。ほんとに・・・、神崎さんじゃなくて、あたし……、?あたしで・・・いいの、?
「あんたら揃いも揃ってどんだけのマイナス思考だよ。そらーそんなもん、いっこも話も進まんわ。」
「進める気……、あった時は、あった・・・。言ったけど、依織ちゃん泣きそうな顔して俯いてたし・・・」
姫の・・・唇は、スネたようにとんがったまま。可愛い顔を、たまんない唇を・・・・、いつまでも見てたいけど・・・・あたしには、考えなくちゃいけない事がある。
さっきから、姫が言ってる「好きを伝えた」いつ・・・?知らないよ。