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8TB HDDは今や2万円台中盤から!
増えすぎた1TB HDDをスッキリ整理してみた

4台→1台にまとめると何時間?モデルの違いは? text by 石川ひさよし

今回テストした3種類の8TB HDD
やや玄人向け(後述)になるが、容量単価を重視した製品なら2万円台中盤で特価販売されていることもある。デスクトップPC向けの「Desktop HDD」でも3万円後半、NAS向けにカスタマイズされたNAS HDDでも4万円台前半で購入できる

 最近、アツいパーツの一つがHDDだ。

 6TB、8TBといった大容量品が登場しているのはもちろん、その価格も大きく値下がり。モデルによっては8TBという大容量なのに、2万台中盤で買えてしまう製品まで存在する。

 HDDは、容量増加やコストパフォーマンスの向上が一時期止まっていたため、「1TB前後のモデルを複数使って容量確保」としていた人も多いと思うが、台数が増えると運用も面倒。ケース内で場所も取るし、電源容量が気になる場合もあるだろう。

 そこで今回は、そうした「増えすぎたHDD」をスッキリ整理すべく、「複数の1TB HDDを8TB HDDに置き換える」ことを主眼とした検証をおこなってみた。

 検証に使ったのは、現在最安の8TB HDDである「Archive HDD」シリーズを擁するSeagate製品。価格が魅力の「Archive HDD」に加え、発売されたばかりの「Desktop HDD」と「NAS HDD」もあわせて用意。(1)標準的な「Desktop HDD」を使った場合、(2)コスト最重視で「Archive HDD」を使った場合、(3)「この機会にNASに移行」とした場合(NAS HDDを利用)の3例で転送時間を実測してみた。

 なお、今回の記事での「転送時間」は転送先のHDDだけでなく、転送元のHDDや転送経路など、様々なものに影響される。HDD単体でのベンチマーク結果以外は、「環境によって異なるもの」として理解して欲しい。

用途で選べる8TB HDD「Desktop HDD」や「NAS HDD」も新登場

新たに発売されたとDesktop HDD(左)NAS HDD(右)
1年前に発売、価格の安さで人気のArchive HDD

 さて、一口に「8TB HDD」といっても、用途に適した様々な製品がある。

 Seagateの「8TB HDD」といえば、「頻繁に書き換えないデータ向け」として特殊な「SMR記録」を採用、容量単価の安さを実現した「Archive HDD」が人気だが、3月に入り、デスクトップPC向けの標準モデルである「Desktop HDD」や24時間365日の運用や堅牢性などを重視した「NAS HDD」、常時書き込みを前提に設計された監視カメラ向け「Surveillance HDD」が相次いで発売されている(記事1 / 記事2)。

 また、同社Webサイトによると、「NAS HDD」の上位でさらに堅牢性を重視した「Enterprise NAS HDD」やニアライン向けにパフォーマンスと容量を最大化させた「Enterprise Capacity 3.5 HDD」シリーズも存在している。

 これらの製品は、用途に合わせて読み書き特性がチューニングされているほか、記録方式の工夫で魅力的な容量単価を実現したり、高価なモデルでは、各種センサー(温度・湿度・振動)を搭載・監視することでデータセンター環境などでの安定性が高くなっていたりする。

 動作のチューニングとしては、NAS向けモデルなら「RAIDや複数台同時運用への最適化」、監視カメラ用やAV向けのように繰り返し記録や長時間駆動が想定されるモデルなら「発熱や消費電力の抑制」といった例があり、どこがどう違うのか、把握しておくことが製品選びの助けになるだろう。

 さて、今回取り上げる「Desktop HDD」と「NAS HDD」、そして「Archive HDD」の主要スペックと価格帯を表にしてみた。

【今回テストする3モデルの比較】
モデル Desktop HDD NAS HDD Archive HDD
型番 ST8000DM002 ST8000VN0002 ST8000AS0002
インターフェース Serial ATA 3.0 Serial ATA 3.0 Serial ATA 3.0
キャッシュ 256MB 256MB 256MB
最大転送速度 220MB/s 216MB/s 190MB/s
記録方式 PMR PMR SMR
実売価格 3万円台後半 4万円台前半 2万円台中盤

 主に異なるのは速度と記録方式だ。

 Archive HDDは最新の高密度化技術であるSMR(Shingled Magnetic Recording)を採用し、容量単価が安価な一方、速度は抑え気味。

 ほかの2製品は従来技術であるPMR(Perpendicular Magnetic Recording)を採用、速度も200MB/sを超えている………というのが、まず、この表から読み取れる情報だ。

 なお、Archive HDDのSMR技術に関しては、こちらのレポートも参考にしていただきたい。

1TB×4台→8TB HDD移行を早速テスト、まずは普通の「Desktop HDD」所要時間は約12時間

Desktop HDD ST8000DM002
ST8000DM002のパフォーマンス(CrystalDiskMark v5.1.2)
今回の検証環境。いわゆるバラック状態である。転送元のHDDはSeagate ST10000DM003(7,200rpm)、HGST HDS721010DLE630(7,200rpm)、WD WD10EADS(Intelipower)、WD WD10EACS(Intelipower)の4台(利用HDDは全ての検証で同じ)

 それでは、早速検証に移りたい。まずは標準的なデスクトップPC向けHDD「Desktop HDD」シリーズに属するST8000DM002をテストしてみよう。

 行ったのは、PCにつなげた4台の1TB HDDから8TB HDDへのコピー。

 PCのスペックは、CPUがCore i7-6700K、マザーボードがIntel H170チップセット搭載モデル、16GBのメモリ、Windows 10で、用意したST8000DM002と4台の1TB HDD、そしてシステムドライブは全てマザーボードのSerial ATA 3.0ポートに接続している。

 転送元として用意したHDDは2011年前後のモデル4台で、JPEG画像やRAWデータ、MPEG、テキストファイル、それらを圧縮したzipなどが入ったもの。それぞれ空き容量は615〜742MBほどだった(ちなみに、エクスプローラでは、1TB HDDは931GBと表示される)。

 また、今回は計測の都合上、転送元のHDDを全て同時に接続したが、1台ずつ交換しながら転送すれば、SATAポートは3つ(システム、転送元、転送先)で済む。また、USB 3.0で外付けすればSATAポートやドライブベイが足りない場合でもなんとかなるだろう。

 ただし、USB 3.0を経由してデータ転送をする場合、筆者が検証した限り、Serial ATA接続よりも時間を要する印象だ。

 USB 3.0の帯域はHDDにとって十分なものだが、Serial ATA→USB 3.0変換のオーバーヘッドや、USB 3.0ケーブルの品質などが影響すると思われる。Serial ATA 3.0は、(コンシューマ向け)HDDにとって、最も転送速度の速いインターフェースであるわけで、Serial ATAポート数が足りるのであれば、サイドパネルを開けた状態でも、Serial ATA接続で行うのが最も高効率なのではないだろうか。

Desktop HDDテスト時のドライブ構成

 さて、検証ではバッチを組んで実行する方法を採った。

 手動でコピーする場合、ストップウォッチとにらめっこしなければならない。さすがにこれを3パターン行うのはムリがあるので、コマンドライン上からxcopyコマンドを用い、1TB HDD #1〜#4まで順次コピーするよう設定した。合わせてxcopyの前後に環境変数の%date%と%time%を出力することで所要時間を計測している。

所要時間は約12時間

 それではコピーに要した時間を報告しよう。開始時刻は16時18分、完了は翌日4時31分。4TBで12時間13分だから、1TBあたりおよそ4時間程度を要している。

 予め判っていたことだが、これは転送元の1TB HDDに引きずられた結果だろう。また、データの内容やファイルサイズ、とくに小さなファイルが大量にあるような場合は、パフォーマンスが低下することが考えられる。

8TB最安の「Archive HDD」は2倍の所要時間「移行方法」の工夫次第で最もオトク?

Archive HDD ST8000AS0002
ST8000AS0002のCrystalDiskMark v5.1.2でのパフォーマンス

 さて、次にテストするのは、頻繁な書き換えを行わない「コールドデータ」向けにチューンされ、最も安い容量単価を実現した「Archive HDD」に属するST8000AS0002だ。

 計測手法は先のDesktop HDDと同様で、1台のPCにSerial ATA接続でST8000AS0002と4台の1TB HDDを接続した。

 ちなみに、「まずは」ということで計測してみたベンチマーク結果は図の通り。

 「デスクトップPC向け4TB HDD(実売価格13,000円前後)のちょうど2台分」という非常に魅力的なコストパフォーマンスを持つST8000AS0002(実売価格2万円台半ば)だが、さすがにベンチマーク速度はDesktop HDDに及ばないようだ。

所要時間は25時間半
Archive HDDテスト時のドライブ構成

 さて、実際のデータ転送結果を紹介しよう。

 このテストでは、開始時刻が14時10分、完了が翌日の15時38分だった。実に25時間28分を要したことになる。これはDesktop HDDの倍近い時間だ。

 コマンドラインを見ていると、一気にコピーが進むところと、やけに遅いなと感じるところがあった印象。念のため、追加のテストもしてみたが、ほぼ同様の結果となった。

 このことから考えられるのは、SMR方式の特性だろう。数十GB程度のベンチマークでは190MB/s近い書き込み速度が計測できるArchive HDDだが、HDDを埋め尽くすような連続書き込みでは時間がかかるようだ。これは別記事でも触れているので、詳しくはそちらを確認して欲しい。

 なお、今回は2倍の時間がかかったが、データ移行作業の場合は「2倍の時間でも“実質的な占有時間”は変わりない」という場合も考えられる。例えば、「1TB HDDを 毎晩 1台ずつ転送する」のなら、Desktop HDD(約3時間)でもArchive HDD(約6時間)でも同じ「一晩」だ。ベンチマークの通り、日常利用でのパフォーマンス差はあまりないので、こうした点をうまく利用すれば、価格差をうまく活用できるだろう。

 独特の特性を持つArchive HDDだが、頭をひねって使えば、容量単価の安さが光る。まさに玄人向けのHDDと言えそうだ。

「NASに移行」も意外に高速「NAS HDD」×2台でテスト

NAS HDD ST8000VN0002を2台用意した
今のNASは組み立ても簡単だが、今回は検証目的なのでバラック状態でテストしている
テストの様子

 最後に、PC→PCでなく、PC→NASでのデータ移行もやってみた。

 NAS向けのHDDは、PCでももちろん利用できるが、データの保管やパーソナルクラウドの構築でNAS専用機を使う人も多いだろうし、そうした場合、特に信頼をおけるNAS向けHDDを使うのがベストだろう。

 今回の検証では、NAS向けにチューンされた高品質HDD「NAS HDD ST8000VN0002」を利用、NASにはSynologyの「DS216play」を用意。1000Base-T LAN経由で、PCからNASの共有フォルダに転送した場合のコピー時間を計測した。

 ちなみに、DS216playは店頭価格39,000円前後で販売されている2ベイ製品。HDMI端子を備えており、保存した写真や映像ファイルを直接テレビに出力できて便利だ。

 今回はこのDS216playにST8000VN0002を2台入れてRAID1構成とし、PCとクロスケーブルで接続した。コピーの際はDS216play上に共有フォルダを作成し、これをPC側からネットワークドライブとして登録、ここにコピーを行っている。

 なお、ネットワークドライブのため、そのままではxcopyコマンドが使用できない。この計測のみ、開始時刻と完了時刻を手動計測して行っている。

 また、NASのセットアップは最新世代だけあって簡単だったが、RAID 1を構築する際にディスクのパリティチェックが入り、これに24時間程度を要した。

 この間もアクセスやファイル操作ができるのだが、注意書きにはパフォーマンスに影響すると書かれていたため、処理の完了を待ってテストしている。もっとも、個人用などで速度や時間を気にしなくてよいのであれば、この処理中にコピーを開始しても構わないだろう。

所要時間は14時間
エクスプローラから見た検証後のドライブ

 では、こちらのコピーに要した時間を見ていこう。開始時刻は5時1分、完了は18時58分だ。つまり所要時間は13時間57分。

 ネットワーク経由ということで長時間を覚悟していたが、最近のNASでは100MB/sec近い転送速度を実現しているものもあり、なかなか侮れない。

 このへんはNASの性能によって異なるが、旧式HDDの速度が上限になってしまう「昔のHDDからの転送」であれば、こうしたやり方もかなり有望と言えそうだ。

複数のHDDを1台の8TB HDDに

4台から1台へ、台数を減らしつつ容量を拡大
コピー後の8TB HDDのプロパティ。4TBのコピーを行ってなお4TBの空き容量を得られた

 ということで、「8TB HDD」をテーマに3通りのデータ移行を検証してみた。

 テストケースではあるが、システム+4台のHDDを運用していたPCが、システム+1台のHDDへと生まれ変わり、さらに同量の空きスペースを確保できたことになる。

 取り外した4台のHDDはコールドバックアップとして保管しておくことで、安心感も高まるし、HDD台数が減ることでPCの消費電力も抑えられる。ドライブベイがいっぱいでエアフローに懸念があるマシンも、台数削減で余裕が出来るだろう。

今回はやらなかったが「1TB HDD×8台を8TB HDD×1台」にすることも当然できる。これぐらい減らせればスッキリ感も相当高い

 また、NASにデータ移行する例では、2ベイタイプでRAID 1にするとHDD総容量が半分になってしまい、コストパフォーマンスの点で気になるかもしれない。ただし、8TB HDDを使えば、NAS1基あたりの容量は十分だし、冗長化による信頼も加わる。今回のやり方なら、コールドバックアップとしての1TB HDD群からも復旧できるので、かなり盤石な体制だろう。

 高価だった大容量HDDがようやく身近になってきた今こそ、HDDの整理整頓を行うよい機会と言えるのではないだろうか。

[制作協力:Seagate]

(石川 ひさよし)