安倍首相が軍備を強化しながらメディアに流した話は二つだ。中国は日本を直接攻撃できるということと、米国が友邦のために機動力を生かして出兵するとは信じがたい、というものだった。安倍首相は、アジア・太平洋地域での米軍による対中戦略が変化してきたことも読んでいた。米国は在日米軍基地が中国の攻撃を受ける場合に備えて、日本にあった一部の戦略兵器をグアムやその他の場所に後退させた。在日米軍基地が中国のミサイル攻撃で壊滅すれば、グアムやハワイから反撃するといった方法に変更したのだ。
米軍の戦略上の変化は、日本にとっては死活が懸かった懸案だ。日本の政界は「尖角列島に中国が侵攻しても、米国は直ちに軍事介入しない」と判断するほかなかったはずだ。そこで米日安保同盟をさらに強化してステルス戦闘機まで自ら開発するに至ったのだ。
今すぐ米国と中国の摩擦が戦争に発展するといった話をしているわけではない。中国は不利だと思えば身を引き、チャンスと思えばごり押しするなど柔軟な姿勢で米国と対するだろう。米国も中国の戦略的価値を考慮して、後先構わず真っ向勝負に出るわけがない。
しかし、中国が北朝鮮の制裁に一緒に参加するからといって「いよいよ韓国の味方になったか」と胸をなで下ろすのは時期尚早だ。韓国のTHAAD基地をいつでも破壊できると豪語した中国軍部が韓国を緊張させている。日本のように中国の直接攻撃を受ける最悪の可能性までも念頭に置いて安保戦略を立てなければならないということを、そして歴史上最も残酷に韓国を踏み付けた国も中国だということを、決して忘れてはならないのだ。