全國部落調査

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目次

書誌情報

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全國部落調査

発行日 1936年3月
発行所 財團法人中央融和事業協會

概要

融和事業(戦前の被差別事業の改善事業)の積極的計画化のため、財団法人中央融和事業協会が1935年に各府県に部落の状況を照会してまとめたものである。

数ある調査資料の中でも最大の全国5367同和地区の地名、戸数、人口、職業、生活程度が手書きで記載されている。

本書は戦後も同和対策事業の対象地区の把握や、実態調査、部落史研究のために使われた。

また、1975年に発覚した「人事極秘 特殊部落地名総鑑」をはじめとする、部落地名総鑑の原典とされる。しかし、部落地名総鑑は出処を隠すためか、もとのデータから多少改変がされていたと言われており、原典である本書は部落地名総鑑よりも正確であると言える[1]

内容の正確性

最も多くの数の同和地区が報告された調査である一方、その正確性には注意を要する。

27府県は1935年の調査結果が掲載されているが、新潟県の場合は1928年の調査が掲載されているなど、府県によって調査年にばらつきがある[2]。また、調査者、調査方法にも府県によってばらつきがあると指摘されている[3]。また、ところどころ空欄があるが、これは調査不能であったとしている。

資料には統計表もあるが、府県ごとに調査方法にばらつきがある状態での統計の正確性には疑問を持つべきだろう。また、計数の間違いもある(特に高知県は戸数などが二重計上されている疑いがある)。

府県によって関係世帯が1,2戸しかない地域が掲載されていたり(愛媛県など)、1つの地区が丁ごとに別の地区として集計されていたりするなどしている(大阪府など)。そのため、地区数が多いからといって、他の調査に比べて正確であり、詳細であるとは言えない。

戸数の計数方法が属地主義なのか属人主義なのか説明されていない。おそらく、府県によって基準が違っていると思われる。

旧非人部落まで記載した府県もあれば記載しなかった府県もある[4]。また、一般に旧雑種賎民部落は記載されていないものの、中国地方では茶筅部落(山陽地方)・鉢屋部落(山陰地方)が記載されている[5]

地名は同和地区をピンポイントで指すものではなく、その地域の一部が同和地区である場合が多い。特に戸数が非常に少ない地域は、その地域が同和地区というよりも、その地域に被差別民にルーツを持つ世帯がいくつかあったといった程度の意味しかないと考えられる。

また東京都でいえば清瀬や荒川八丁目、神奈川県では横浜市南区や西区の非人部落、さらに東北地方の城下町の被差別部落がほとんど抜けている。その一方で、現在ではダムの底に沈んで消滅した地区や、水害事業で集団移転した地区が載っている。結論として、この調査はあくまで一つの叩き台と見るべきであろう。

筆記者の癖について

本書は手書きであるため読みにくい部分が多々見受けられる。筆記者には以下のような癖があるから判読の際に注意を要する。

  • 「片」の字を「庁」のように書く
  • 「鹿」の字を「廉」のように書く
  • 「智」の字を「椙」「福」のように書く
  • 「北」の字を「並」のように書く
  • 「弓」の字を「兮」「号」のように書く
  • 「出」の字を「山々」のように書く
  • 「佐」の字を「伲」のように書く

このほか、以下のような癖がある。

  • 「飯」の字を「段」のように書く(しかし本当に「段」である場合もある)
  • 「弥」(彌)の字を「沐」のように書く
  • 「竹」の字を「林」「休」のように書く
  • 「桑」の代わりに異体字の「桒」を使う
  • 「世」の代わりに異体字の「卋」を使う

見られる場所

本書はすでに著作権の保護期間を過ぎているため、自由に配布することができる。

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内容

p8-p334 各府縣部落調査

各都道府県のページに内容を掲載しています。

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  • 原典をテキストに書き起こした際の明らかな誤りは修正してください。
  • 明らかな原典の間違いは原文のママ表記し、「備考」欄にその旨を記述してください。
  • 市区町村名、大字、小字の区切りには半角スペースを入れてください(プログラムによる処理を簡単にするため)。
  • 同和地区特定ガイド便利ツールを活用してください。まずは今昔マップにアクセスするのがよいでしょう。

出典

  1. 第076回国会 内閣委員会 第11号
  2. 渡辺広『未解放部落の史的研究』4頁
  3. 渡辺広『未解放部落の史的研究』4頁
  4. 渡辺広『未解放部落の史的研究』4頁
  5. 渡辺広『未解放部落の史的研究』4頁
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