低層住宅が人気な理由の一つに、住宅が密集しておらずゆったりとした街並みを形成するからだが、それは外壁後退が関係している。
あなたの不動産が、低層住宅専用地域内にある場合には外壁後退という制限を受ける可能性がある。
ここでは外壁後退について説明する。
外壁後退とは?
上記の写真は、日本最初のニュータウン・千里ニュータウンの戸建の写真だ。千里ニュータウンは1区画約100坪前後とゆったりとした戸建が整然と並んでいる。写真を見ると、戸建と戸建の間に一定の空間があることがわかる。これは外壁後退の制限を受けているからだ。
外壁後退とは、第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域において、建物の外壁と敷地境界線までの距離を1.5mまたは1mに制限することができることをいう。つまり全ての境界線からの後退が必要ということだ。また、地区計画や建築協定、風致地区などによって定められている場合もある。この外壁後退により、建物と建物の間に一定の空間が常に確保されるようになり、日照・通風・防火などの面で良好な環境が形成される。
敷地境界線には、道路側境界線と隣地側境界線の2種類があるが、各々で1.5mもしくは1mかの数値が異なる区域もあるため、役所窓口等で確認が必要だ。また中古物件で、外壁後退の制限がかかっている地域であれば、建物が後退済みかどうか建物図面や建築計画概要書を参考にしながら、現地においてメジャー測定する。
第一種低層住居専用地域または第二種低層住居専用地域内において、低層住宅に係る良好な住環境を保護するため、都市計画で建築物の外壁またはこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離(いわゆる「外壁後退」)の限度(1.5mまたは1m)が定められている場合には、原則として、当該距離はその限度以上としなければならない。
(建築基準法第54条)
あなたの不動産が外壁後退に該当しているかはGoogleやYahoo!で「◯◯市 用途地域」と検索すれば一緒に出てくることが多い。ただし、大阪市のように外壁後退の制限が定められていない第一種・第二種低層住居専用地域の例も数多くあるので「◯◯市 外壁後退」と検索し、その市区町村のHPで絶対高さ制限の制限があるかどうか調べた方が良い。
上記の千里ニュータウンの場合(大阪府吹田市古江台)、用途地域が第一種低層住居専用地域、建ぺい率が40%、容積率が80%、そして外壁後退1.5mと指定されている。
上空から見ると、一つ一つの戸建の周囲に空間 (=外壁後退)があることがわかる。
なお、下記の条件を満たす場合は緩和措置を受けることができる。
- 後退ラインからはみ出す部分の外壁の周囲の長さが3m以下であること。
- 軒の高さが で、かつ外壁後退線よりはみ出す部分の床面積が であること。
出窓や戸袋・外部バルコニーなどが外壁とみなされる場合とみなされない場合の両方のケースがあるため、外壁後退に該当する不動産は必ず市区町村の役所に確認する必要がある。
外壁後退と壁面線の制限の違い
外壁後退の場合は、道路側だけでなく隣地を含めて全ての境界線から後退する必要があるが、壁面線は道路境界線からの後退のみの制限だ。