トルコ軍機に照準 シリア領内の地対空ミサイル
【ブリュッセル斎藤義彦】ロシアがシリアに持ち込んだ地対空ミサイルでトルコ軍機に向けレーダー照射を行っていたことがわかった。レーダー照射はミサイル発射の前提となる危険な行為。またロシア軍機が昨年12月にもトルコを領空侵犯したことが確認された。トルコとシリアの国境地帯では、偶発的に衝突が起きる危険が続いている。
北大西洋条約機構(NATO)外交筋が毎日新聞に明らかにした。
外交筋によれば、今年に入り、シリアに配備されたロシアの地対空ミサイルがトルコ軍機にレーダーを照射。トルコ軍機の側で、レーダーによる追尾を示す「ロックオン」が複数回、確認されたという。レーダー照射は、射撃目標の位置を把握するためのもので、国際的には偶発的衝突につながる危険な行為とされる。2013年1月には、中国艦船が東シナ海の公海上で、海上自衛隊護衛艦にレーダーを照射し外交問題になった。
ロシアはシリアのアサド政権を支援するため地対空ミサイルを北西部ラタキアなどに配備したとみられる。
トルコは米主導の有志国連合による過激派「イスラム国」(IS)に対する空爆に参加しているが、ロシア軍機を撃墜した昨年11月末からシリア上空での飛行を控え、ロシアとの衝突を避けているという。
また、外交筋によると、ロシア軍機によるトルコ領空侵犯が12月22日にも行われたことが確認された。NATO内で航路の分析などから短時間の侵犯がわかったという。これでロシアによるトルコ領空侵犯は昨年10月3、4日、11月24日、12月22日、今年1月29日の計5回となった。
先月27日のシリアの停戦発効後、反体制派はロシアによる空爆が続いていると指摘。米政府も11日、シリア政府の空爆が市民を殺害し停戦に違反していると非難して、ロシアが背後から支援していることを示唆した。ロシアは停戦順守を表明する一方、「過激派」への攻撃は排除しておらず、今後もトルコ国境付近での活動を継続する可能性がある。