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 宮城県名取市図書館の倉庫に、東日本大震災後、市役所や避難所で貼り出された文書などが保管されている。段ボール箱約20箱分。命をつなぎ、家族を捜し、助け合い、不安にいらだつ――。5年前の3月11日からの日々を、人々が懸命に生きてきた記録だ。

 沿岸部が津波にのみこまれ、一夜明けた12日。名取市役所1階に大勢の人が詰めかけた。ボードが並べられ、安否を尋ねる手書きのメモで埋まってゆく。

 同市閖上4丁目に住んでいた鈴木芳一さん(58)は、父芳雄さん(当時82)、母せつ子さん(85)を捜す紙を貼った。自身も車ごと津波にのまれ、流れ着いた民家の2階で夜を過ごした。水が引いた12日朝、妹と合流したが、公民館に逃げたはずの両親がいない。