2016.03.12 17:00
ミュージック・フィルム・インタラクティブの祭典SXSW。今年30周年を迎えたSXSW 2016はオバマ大統領を基調講演に迎え、今まで以上の盛り上がりを見せています。SENSORS.jpからは編集長西村真里子とシニアエディター長谷川稜が現地に入り、注目のセッションや展示の模様をお届けいたします。
初日基調講演に登壇したオバマ米大統領。和やかに会場を笑わせながらもテクノロジーが国・行政も良くする事例を語った。
音楽・映画・テクノロジーを愛する人達が世界各国から約8万人集まるSXSWにはたくさんの見所があります。右脳と左脳を刺激するセッションやライブ、「SX Create」や「SX Style」などモノづくりやファッションに特化したスペシャルイベント、トレードショウなど10日間の会期中、会場であるテキサス州オースティン市は朝から晩までお祭り騒ぎになります。
今、わたしが原稿を書いている間にもTHE STROKESがスペシャルライブを行っていて実はとてもそわそわしながら原稿を書いているのですが、一つ一つのイベントに気を取られていたら体が何個あっても足りないほど、常に街のどこかでイベントが行われているのがSXSWの特徴です。過去3年ではレディー・ガガ、プリンス、PerfumeなどもSXSWに参加しています。
また、ビジネス面ではTwitterが世界デビューを確実なものにしたのもSXSWであり、世界中のスタートアップがプロダクトをお披露目する場所としても機能しています。
今年は30周年という記念すべき年としてオバマ大統領が初日の基調講演を行いました。テーマは「21世紀型の市民参加について」です。
オバマ大統領のセッションは抽選に当選した人のみ参加が可能。当選者が長蛇の列を作りながら大統領の基調講演を楽しみに待っていました。
基調講演を行ったのがテクノロジーの祭典初日だったこともあり、オバマ大統領は「テクノロジーがアメリカをより良い国にする」と語り、FacebookやGoogleなどのテクノロジー企業とリレーションシップを築きながら21世紀型のフォーメーションを考えている旨を壇上で話されていました。
実はオバマ大統領はモデレーターから「テクノロジー企業と足並みを揃えながらとは言いますが、テクノロジー企業はスピードがあり、失敗もできる。ただ、政府はアクションが遅いし・・・」と突っ込まれた際に、ため息がこぼれてしまったのですが、それが会場に温かい笑いを生みました。その後に大統領が口にしたのは「政府のリーダーシップを待つだけではなく、スピードを持って進めるところはプライベートセクターで進めてほしい。」とのこと。
教育、医療、選挙などもテクノロジーの進化により改善されると話しながらも、政府がリーダーシップをとって進める時代は終わり、21世紀は企業も市民も主体的に動く時代であると何度も強調されていました。市民が自主的に課題解決に動く時代が21世紀です。
さて、では具体的にアメリカが現在直面している課題はどのようなものがあるのでしょうか?当セッションでは例として、デジタル・デバイドと ダイパー・デバイド (オムツ格差:貧困層にはオムツが行き渡らないと言う問題)が挙げられました。オバマ大統領はこのダイパー・デバイドは企業・市民が率先して課題解決に向かっている良い例として挙げられていたのですが、オムツメーカーと配送会社、インターネットサービス提供者が課題解決に当事者として対応しており国も応援しているとのことです。
21世紀の市民は受け身ではなく、一人一人が出来ることを組み合わせて問題に取り掛かる時代であることをオバマ大統領の話を聞いて強く感じました。
SXSW Interactive代表ヒュー・フォレストは「SXSWはコミュニティだ!」と語る。SXSWだけではなくコミュニティは21世紀型社会には必要不可欠な要素になると考えさせられた。
さて、オバマ大統領をSXSWに呼んだSXSWインタラクティブの代表ヒュー・フォレストは「SXSWはコミュニティである」と定義します。多様性を受け入れ、ひとつひとつの小さなつながりを大切にしていけば大きな結果を生む。実はオバマ大統領が今年SXSWに来てくれたのも10年前に始まった小さなつながりを大切にしたことにより実現したそうです。
確かに、SXSWではネットワーキングが重要視されており、公式アプリでも来場者同士が繋がりやすくなる仕組みを提供しています(好みや行動範囲が近い人にメッセージが送られます)。
企業がスポンサーになり、人々がネットワーキングできる場所を提供しているオースティン。
21世紀に生きる我々はかつてのように企業のトップダウン、行政のトップダウンだけでは解決できない問題があることに気がつき始めています。誰かの指示だけを待つ時代は終わり「自分はどのようにコミュニティに貢献できるのか?」を考える時代になっています。
「SX Create」で地元オースティン市の小学生達がメイカーズの工具を使い自主的にモノづくりを始めている姿にも21世紀の生き方、コミュニティへの貢献方法が学べそうです。
「SX Create」でレザーキーホルダーを自作するオースティン市の小学生。
SENSORS.jp 編集長
国際基督教大学(ICU)卒。IBMでエンジニア、Adobeにてマーケティングマネージャー、デジタルクリエイティブカンパニー(株)バスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に株式会社HEART CATCH設立。 テクノロジー×クリエイティブ×マーケティングを強みにプロデュース業や執筆活動を行う。スタートアップ向けのデザイン&マーケティングアクセラレーションプログラム「HEART CATCH 2015」総合プロデューサー。 http://events.heartcatch.me/