あの世とこの世をつなぐ 被災地で“幽霊タクシー”が話題
(週刊女性 ) 2016年3月11日(金)配信
宮城県石巻市によると、太平洋沿岸部に広がる同市では、東日本大震災による直接死・間接死と行方不明者を合わせると3975人を数える。
工藤さんはその中心部のJR石巻駅に毎週通い、客待ちするタクシー運転手100人以上に幽霊の話を聞いて回った。被害の大きかった地域であり、当然、震災で身内を亡くした運転手もいる。
工藤さんに霊感はない。被災地・宮城県にある東北学院大学の金菱清教授(地域構想学科)のゼミで学び、被災地の死生観についてまじめに突きつめたかった。
しかし、現実には女子大生が「幽霊を……」と話しかけてもなかなか相手にされず、「面白おかしくネタにするな」などと怒鳴られた。目の前で泣かれたこともあった。それでも7人が不思議な体験を話してくれた。
「彼女は調査中、4、5回は“やめる”と言いました。就職活動をしなくちゃいけないとか言って。そのたびに“絶対にいい研究になるから”って励ましました」(金菱教授)
ゼミ仲間も『慰霊碑』『震災遺構』『墓』『葬儀業者』『消防団の死生観』『原発避難区域の猟友会』と腰が引けそうな難しいテーマに挑んでいる。
金菱教授が編者としてまとめたゼミ生の論考集『呼び覚まされる霊性の震災学』(新曜社)が1月下旬に刊行されると国内外で話題になり、2月下旬に同大学で緊急シンポジウムが開催された。緊急シンポで工藤さんは、こう明かした。
「幽霊を乗せたタクシー運転手は、霊に畏敬を感じている」
つまり、敬意を抱いているということ。