2015-06-07
■両国公会堂89年の歴史に幕…跡地に刀剣博物館
丸いドーム形の屋根が特徴的で、区民に親しまれてきた両国公会堂(東京都墨田区横網1)が、89年の歴史に幕を閉じる。
夏に解体作業が始まり、跡地には渋谷区から刀剣博物館が移転してくる。墨田区は公会堂の模型などを展示することも検討しており、「解体は苦渋の決断だったが、公会堂の歴史を刻んでいけるようにしたい」としている。
両国公会堂は1926年(大正15年)、旧安田庭園内に完成した。建築主は「東京市政調査会」。安田財閥の祖・安田善次郎からの寄付で日比谷公会堂とともに建設し、東京市に寄贈した。
ドーム形の屋根のほか、正面に三つ、両側面に一つずつアーチ形の入り口を持つ特徴的な外観。建物内の円形のホールも当時としては珍しかった。
戦後は進駐軍に接収されるなどし、67年に都から区に移管された。その後、大規模改修で内外装は様変わりしたが、下町有数の文化施設として区の行事や地域の音楽祭などに利用された。
しかし、老朽化による雨漏りなどもあり、区は2001年に使用を停止。それでも、円形屋根の建物を眺めながら庭園で休む人も多く、地域のランドマーク的な存在であり続けた。
区は内部を改修して活用しようと、「結婚式場に」というブライダル業者と協議したが、15億円近くに上る改修費用が壁になり、保存は断念せざるを得なかった。
日本建築家協会城東地域会代表の岸成行さん(59)(同区亀沢)は小学生の時、音楽発表会で利用したり、スケッチの題材にしたりしたといい、「丸い柱や庭園に出られる両開きのドアが印象に残っている。解体されるので“思い出の保存”も必要」と訴える。
跡地には、日本美術刀剣保存協会の刀剣博物館が17年秋に開館する予定。1階に公会堂の模型やパネルを展示し、一般開放することも検討しているという。
近くには江戸東京博物館があり、16年度には、すみだ北斎美術館が開館予定だ。区企画経営室の岩瀬均参事は「両国エリアに博物館や美術館が集結する。5年後の東京五輪・パラリンピックに向けて地域の歴史や文化をどんどん発信していきたい」と話している。