元被告「司法の正義放棄」 再審請求棄却
1957年に東京都砂川町(現立川市)の米軍基地内に反対住民らが立ち入った「砂川事件」で、8日に再審請求を棄却された元被告の土屋源太郎さん(81)らが記者会見し、「不当な決定であり、裁判の公正と司法の正義を自らの手で放棄した」と批判した。弁護団は即時抗告する。
集団的自衛権の行使容認を巡っては、政府・与党内から砂川事件の最高裁判決が合憲の根拠になるとの見方が示された。東京地裁が請求棄却を決定した後の会見で、土屋さんは「再審が決定されると政権に打撃を与えることになる。政治的な決定だ」と怒りをあらわにした。元被告の武藤軍一郎さん(81)は「再審請求の扉は重かった。日本の司法の独立を一人でも多くの人に訴えたい」と述べた。
土屋さんら元被告と遺族計4人は、当時の田中耕太郎最高裁長官が上告審判決前に駐日米大使と会談したことを示す米公文書を新証拠として再審を請求し、「公平な裁判を受ける権利を侵害された」と訴えた。
田辺三保子裁判長は決定で「事件の当事者と担当裁判官が過度に密接な関係を築くことは回避されなければならない」としつつ、大使に対する長官の説明内容を検討。「審理期間の見通しや、独自に考える理想的な評議の在り方などの抽象的な説明で、評議や判決の内容を伝えるなど、一方の当事者に偏重した情報提供をしたとまでは推測できない」と述べた。【山下俊輔、山本将克】