黒田壮吉
2016年3月8日08時46分
62年前、「原爆マグロ」が築地市場(東京都中央区)に埋められた。米国の水爆実験で被曝(ひばく)した「第五福竜丸」が水揚げしたマグロだ。記憶を伝える石碑はいま、江東区の展示館に置かれている。今年、市場が移転するのを機に元乗組員は訴えている。「石碑を市場跡地に移し、核の悲劇を伝える礎にしてほしい」
国内外の多くの観光客が訪れる東京・築地市場。正面入り口脇の外壁に、銀色のプレートが掲げられている。「第五福竜丸から水揚げされた魚の一部(約2トン)が(中略)市場内のこの一角に埋められ、廃棄されました」
1954年3月1日、マグロ漁船の第五福竜丸は太平洋で操業中、米国がビキニ環礁で実施した水爆実験に遭遇。「死の灰」を浴びた。静岡・焼津港に水揚げしたマグロやサメの一部は、築地市場に出荷された。だが、東京都衛生局の職員らの調査で放射能が検出され、競売直前に市場の片隅に埋められた。市場で働く80代の仲卸業者は「白い制服姿の調査員がガイガーカウンターで調べ、異様な光景だった。数値も高く、市場では魚が売れなくなった」と振り返る。
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朝日新聞社会部
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