【動画】作曲家でピアニストの新垣隆さんが福島県相馬市で慰問演奏=戸田拓撮影
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 作曲家でピアニストの新垣隆さん(45)が東日本大震災から5年になる11日、福島県相馬市で慰問演奏をした。「現代のベートーベン」として注目を集めた佐村河内守氏のゴーストライターだったことを告白した記者会見から2年余、東北慰問は今回で3度目になる。改めて、自分自身の音楽を被災地に届けたいという。

 午前に相馬市内の幼稚園や児童センターを訪ね、ショパン「子犬のワルツ」や自作のCM曲などを演奏。音楽に合わせて歌ったり踊ったりする子供たちの姿に笑顔がこぼれた。午後には公民館で約百人を前に、中学3年のときに作曲したピアノソナタなどを披露した。地元の民謡を題材にした楽曲では、目元を押さえる聴衆もいた。震災の起きた午後2時46分の直前には亡き師・三善晃さんのピアノ小品集から「珊瑚(さんご)の唄」を奏で、津波の犠牲になった人々へ思いを寄せた。

 2013年3月にNHKで放映された佐村河内氏の特集番組で、実際は新垣さんが作曲した「ピアノのためのレクイエム」が、被災者に捧げる音楽として宮城県石巻市で披露された。新垣さんは当時、「番組の制作意図は知っていた。以前お世話になった石巻の方々に自分の音楽を贈りたい、という気持ちがあった」という。しかし、事実を知らない石巻の人々が佐村河内氏に感謝する映像に「自分は何をしてしまったのか」と後悔。翌年2月に長年の代作を公表、関係を清算することになる。

 告白後、テレビ番組に求められるまま出演して思いがけずお茶の間の人気者になった新垣さんだが「自分はあくまでも音楽家で、音楽を通じてコミュニケーションの機会を持てるのはうれしいこと。与えられた一つ一つの機会を大事にしたい」と語る。福島をテーマにした新作を構想しているといい、「慰問から得られた印象を音楽に生かしたい」と話した。