首都圏で体験した東日本大震災のことって、これまでなんとなく語ってはいけないことのような気がしていました。それは、わたしたちが被災者じゃないから。厳密にいうと被災者といえるのかもしれませんが、当時はそんなこと絶対に言えないような空気がありました。体験した震度は6弱だったし、被害がゼロだったわけではない。怖かったし、とても不安だった。ほかの誰かと比べればたいしたことない恐怖かもしれないけれど、だからってそれがナシになるわけじゃないんですよね。
読者登録させてもらってるゆきぼうさんの記事を読んで、わたしも記録に残してみようかなという気持ちになりました。 当時のアカウントは今はもうありませんが(しかも鍵アカだった)、保存用としてMomentoに残していたツイートで振り返ってみます。
3/11
14:46の地震から2時間後にはじめてのツイート。
“家に帰ってきた。家は何もなかったかのような状態。どこも開いてなければ何も落ちてない。” (via Twitter)
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出先だったので状況がよくわからなかった。夫と連絡をとろうにも電話が通じない、メールもできない。そんな状況を救ってくれたのは、やっぱりTwitterだった。Twitterで夫とやりとりをして、無事を確認しあい、Twitterが通じるのなら…と試してみたSkypeで夫と話をすることができた。
もちろん交通機関はストップしていたので、夫はいわゆる帰宅困難者。それでもどうにかして帰ってこようとする夫に何度も何度も会社にいるようお願いした。
“家は大丈夫だから、お父さんは無理をしないで会社にいてください。電車動いてない状態で駅にいったってどうしようもないって散々ニュースで言ってるよ。” (via Twitter)
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テレビをみて、だんだんと状況が掴めてきた。そしてできるだけ残せるものは残しておこうと思った。
“地震のとき、子どもたちはお友だちと一緒にスイミングへ、わたしは一人で郵便局へ行ってスイミングへ向かう車の中だった。ちょうど役場のところでちゃーらっちゃーらって警報がなって、「また誤報でしょ」って思っていたけど何となく注意してたら、次の瞬間グワングワン揺れた。” (via Twitter)
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“電信柱がグワングワン揺れていて、電線も上下左右にゆうらゆうら揺れて「怖い!」って思った。次の瞬間には何も考えていないのにハザードつけて電柱のそばじゃない路肩に寄せて駐車してた。とにかく揺れが長くて長くて、車を置いて走ってスイミングまで行きたい気持ちになったよ。” (via Twitter)
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“揺れがある程度落ち着いたところで発車してスイミングまで向かい、子どもたちとお友だちの顔を見たらホッとした!子どもたちも心細かっただろうな。で、結局スイミングは短縮だったけどやったんだよ!びっくり!レアすぎる体験!プールの水がタップタップしててほんと異様な雰囲気だった。” (via Twitter)
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“ひとしきりつぶやいたら少し落ち着いた。” (via Twitter)
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変なテンション…落ち着かなきゃっていう気持ちと、怖いという気持ちと、不安な気持ちがごっちゃまぜだった。
“悩んだ結果、1Fリビングの吹抜け部分に荷物を集め、通路部分にお布団ひいてみんなで寝ることにした。すぐそばの掃き出し窓前に持って出る荷物を集めて(貴重品とか防寒具とかはいってるリュックと車のキー)靴も置いてあるよ!夫に会いたい!” (via Twitter)
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こうつぶやいた後、フォロワーさんに「窓の近くに物をおいたらガラスが割れちゃったときに大変だから別の場所にうつしたほうがいい!」と言われて、慌てて場所を変えた。
なにいってるかわからない感じからも混乱が伺える。
“スイミング帰りにスーパー寄ろうと思ったら封鎖されていて閉店してた。ほんと、よっぽど被害がひどかったんだと思うよ。そんなこんなであちこちのコンビニには車がいっぱい。おにぎりとか食料品系がどんどん売れてた。あと、みんなお金おろしてた。わたしも、おろした。ちょっとだけね。” (via Twitter)
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3/12
“10時すぎからぐっすり寝てた。わたしが倒れても仕方ないから、寝られるときにガッと寝ようと。3時すぎに夫に起こされて夢かと思ったら、ほんとに夫だった!家族がようやく揃いました。” (via Twitter)
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名前を呼ばれて目を開けると薄暗い部屋の中に夫の顔が…!帰ってこない、いるはずのない夫がいるってことは?とか色々思ったけど、ちゃんと夫だったときの安堵感はきっとずっと忘れないと思う。
ちなみに夫はTwitterで情報を集めて、東横線と横浜市営地下鉄が動いていると知り、乗り継ぎ等含めて何時間もかけて帰ってきたそう。とにかく「一刻でも早く帰りたかった」と。
“ちゃらっちゃーらっていう速報、しばらく怖いな…” (via Twitter)
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余震につぐ余震。
“夫が帰ってきた安堵感で今更がくがくしてる。6弱でさえ怖かった。被害がひどい地域の人たちを思うと胸が…” (via Twitter)
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張り詰めていた気持ちが緩んだ途端、体の震えが止まらなくなった。
“なんというか…確かに現状を知ることは必要だと思うんだけれど、そのものすごい映像をみて救われる人がいる…?事実を事実として淡々と伝えるNHKはまだましだけど、メインキャスターがザワザワしてるような報道番組はいらねと思う。まずお前が落ち着け、と。” (via Twitter)
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ここらへんから民放の報道番組がだんだん嫌になってきて、NHKばかりみるようになった。
“それにしてもひどい…。落ち込んだってしかたないといったって、落ち込む…。いまだにおばと従姉妹の安否は分からない。映像をみるかぎり、お店は確実に流されてたの。高台の家のすぐ下の道路まで津波がきてた。とにかく生きていてほしい。生きてくれてなきゃ文句も言えない!けんかもできない!” (via Twitter)
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津波がひどかった地域に住む叔母と従姉妹とは、しばらく連絡がとれなかった。
“小さな余震が結構つづいてるよね。なんかもう常にフラフラする感じ。” (via Twitter)
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“うちは近所に消防があるからサイレンはよく聞こえる。地震速報もめちゃくちゃよく聞こえるんだけど、次男はもうトラウマになっちゃって大泣きする…。最初の6弱のときに別々の場所にいた怖さがすごく残ってるみたい。抱きしめるくらいしかできないけど、抱きしめることができて幸せだと思う。” (via Twitter)
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“でもね…大人のわたしだって怖い!!” (via Twitter)
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3/13
“明日から新しい一週間がはじまる。いまだに叔母から連絡はこないけれど、連絡がとれないだけできっと避難しているはずと信じて、朝からテレビはつけてない。凄惨な様子を一日中流すことで子どもたちの心と体がショックを受けてる。本当に必要な情報は放送で聞けるから、見ない勇気も必要。” (via Twitter)
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実は前日から次男が熱を出してしまった。地震や安否情報を聞くためにつけっぱなしにしていたテレビを、この日から必要な時だけつけるようにした
“今日はほんとは美容院の予約してたの。卒園式前最後の週末だから。でもとてもそんな気持ちになれなくてキャンセルした。やっぱりあの少しの時間の家族がバラバラの場所で地震にあったっていうのが恐ろしかった。まだ普通の精神状態に戻れてない。大声でいいたい。わたしは怖かった!!!!!” (via Twitter)
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このあたりからだんだん自分が体験した恐怖について語るのがいけないことのような空気を感じ始めたんだと思う。
そして計画停電に向けての心と家の準備をはじめた。
“大丈夫とは思うけどやってみないと分かんないと思って一度ブレーカーを落としてガスコンロ使ってみた。大丈夫、火は使える。もし困ったらおいで。” (via Twitter)
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“トイレのテストもしてみたの。うち予算がなくて上下階ともタンク式トイレで、ブレーカー落としてやってみるけど普通に水たまるんだ。そういうもの?ぐぐってもよくわかんないの。” (via Twitter)
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電気が停まってもトイレが使えるのかの確認。
3/14
“幼稚園に歩いてお迎えに行ったら「せんばづるをおくるのでおってください」みたいな子どもの字のメッセージと話し合いの結果千羽鶴を被災地へ送る旨の掲示があった…。思わず絶句…。担任の先生に、今千羽鶴を被災地へ送ることはハッキリ言って迷惑だと思う、ゴミにしかならないと思うと伝えた。” (via Twitter)
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“先生の顔が歪み、「でも子どもたちの気持ちなので…」と。その気持ちはとても大事だと思う。祈りをこめて折ることには賛成だけれど、それを現地に送ることについては先生方でもう一度ご検討くださいとお願いしてきた。モノを送ることさえままならないのに、何の足しにもならないものを送ってどうする!” (via Twitter)
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今となってみればここまで目くじらを立てる必要もなかったのかもしれないけど、当時はどうしても我慢ができなかった。ゴミにしかならないなんて激しいことを言ったの、はじめてだった。
3/15
そして、いよいよ始まった計画停電。うちの地域はなぜか夕飯時から夜にかけて停電の順番が回ってくることが多かった。
“ついに停電。炊飯器でお米炊けなかった、本日お誕生日のだんなさんをもつ近所の友人のために活力鍋でご飯炊いてるなう。” (via Twitter)
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“うちの次男も昨日お誕生日を迎えました。四歳の誕生日は豚汁とおにぎりでケーキもなかったけれど、家族全員揃っていられるだけで幸せだと思ったよ。” (via Twitter)
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正直お誕生日パーティーどころではなかったけれど、近所で助け合ってみんなそれぞれささやかにお祝いをした。
“停電のとき使ったもの:電池式のランタン、ランタンスタンド、アロマキャンドル、ランタンにもなる懐中電灯、アラジンストーブ” (via Twitter)
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“停電のときにしていたこと:影あそび、歌を歌う(iPhoneのピアノで伴奏)、しゃべる、ポケモンでいつものように遊ぶ、キャンドルの灯を消しておたんじょうびごっこ” (via Twitter)
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ガソリンや食べ物などの買い占めは、首都圏民全員がやっていたことではなくて、一部の人たちがやっていたこと。そういう人たちの行動はなりふりかまわないから目立つんだよね。
“幼稚園まで往復約5km。ただし帰りは勾配のきつい坂。でもさー身ひとつで歩けるんだから苦にならんよ。赤ちゃん抱っこしたり、歩けるけど長くは無理な小さい子連れてたりしたら、歩きたくても歩けないじゃん。そうゆう人のためにガソリンは必要よ。” (via Twitter)
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“山を下ったところにあるスタンドは連日渋滞。渋滞の列をぬって先を急ごうとするでっかいトラックにひかれそうになったよね…。家の前の道を、普段は通らない数の車が行き来するんだもん。あのキョーレツに狭い山道を!異常!” (via Twitter)
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3/16
ずっと準備していた謝恩会は中止になりました。
3/18
“停電の中やっと子どもたちがみたいテレビの時間帯にテレビをつければ、ずぅっとAC。これ、ほんと、しんどい。申し訳ないけど、精神が狂いそうになる。” (via Twitter)
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“わたしはACがだめというより、同じことばかり繰り返されるのがすごくしんどい派。ACっていうのがいやとか、音楽がどうとかじゃなく。生活も普通じゃなく、テレビつけて逃げたいのに同じCMばっかっていうのが精神的にキツイ” (via Twitter)
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民放をつければCMはすべてAC。ポポポポ〜ンとこだまでしょうかが頭の中で渦巻いた。
“計画停電のストレスが…。これほんと疲弊するよね。停電がストレスなんじゃないの。いや、もちろん昨日みたいな6時間っていうのはしんどい。だけど毎日違うスケジュールで、それに合わせてあれしなきゃ!これしなきゃ!っていうのがものすごい疲れる。あと、停電時間を超えた断水はきつい。” (via Twitter)
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そしてだんだんストレスでしんどくなってきてる。
3/19
電気で一喜一憂する毎日。しかも同じ市内でも停電する地域、しない地域があって、地域内の格差でもギスギスしはじめていた。
3/20
“Googleさんありがとう。大船渡の叔母と従姉妹が無事だと連絡がきました。本当に本当にありがとう。お店は流されたけど、自宅は無事だと。ホッとした。力が抜けた。” (via Twitter)
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震災から9日後、ようやく安否確認ができた。インターネットを通じての情報だった。
“元気出そう!がんばろう!というのは元気なひとや地域にひとまず任せたい。同じ地域に住んでいても、温度差に苦しむ毎日なのも現実。いっしょに元気だそう!立ち上がろう!っていうのにはまだ早いし、わりと迷惑。” (via Twitter)
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かなり疲れてたんだな。
“震災後、毎週末、木や花を植えてる。優先順位なんてほんと低いけど唯一の贅沢な癒し。” (via Twitter)
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“今日植えたもの。ムラサキシキブ、ユキノシタ、スズラン、スノードロップ、リシマキア、ギボウシ、クサソテツ、キチジョウソウ、ホトトギス、オタフクナンテン、レモン、ユキヤナギ、ヤブラン、イカリソウ。ほとんどは山野草。” (via Twitter)
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まるっきり現実逃避なんだけど、このころは庭をいじってるときが一番心安らいだ。
3/21
3/23
“外の人も中の人も、不安で疲れて我慢してそれでも「おまいら首都圏民は被災者じゃねーだろ、被災者づらすんな」と言われてグッとこらえて常にフラフラ揺れてるような毎日の中で「みずにもほうしゃせんでたけどおとなはへいき」と言われて水買いに走る人を馬鹿にする権利はないと思う。” (via Twitter)
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だんだん首都圏民に対する風当たりが強まっているころ。
3/24
“なんかさー1番やってほしくない時間帯ばっっっか毎日停電だよね…まだ電気ついてるけど、あと十分でポケモンだけど、途中できれたときのダメージを思うと…ちなみに先週も停電中で見れんかったんよね。しょぼんとしてる長男…。録画もできませんしね。” (via Twitter)
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“てゆってたら停電した。突然だもんなー。心臓にわりーよなー。” (via Twitter)
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被災地ではないけどいつもどおりの生活ではない。そんな生活について大変だって言いづらい、停電くらいで文句言えない、そんな空気の中で我慢が限界になりつつあった。こうやってガス抜きしながら、なんとかバランスをとっていた。
正直いうと、今でもこんなこと言っていいのかと不安な気持ちになる。被災地と比べたらたいしたことない。このくらいで文句をいったらいけない。自分で自分にかけていた圧力は、今もまだ残ったままなんだなと思う。
おわりに
ゆきぼうさんも書いてたけど、震災を機に人間関係ががらっと変わりました。こういうときに人間の本性って出るんだなって思うことがたくさんあった。特に原発事故関連では「外でサッカーをさせるなんて虐待だ」となじられたり、遊びにきた人が突然ガイガーカウンターを出して家中計測しだしたり、驚くことばかりでした。
あれから5年。年長と年少だった子供たちも、それぞれ小5と小3になりました。あのとき感じた恐怖や不安はどんどん薄れています。でもあのときテレビを通してみた光景は忘れられない。
わたしにできることはほんの少し。ずっと続けている募金をこれからも続けることと、忘れないでいることくらい。それでも「そのくらいしかできないけど」と思いながら、これからもずっと続けていきたいと思います。
おしまい。