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危機に揺れた宰相 原発事故に積極介入、菅氏に賛否
政治 真価は

2016/3/11 3:30
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 「評価は歴史の判断に任せたい」。東日本大震災当時、首相だった民主党の菅直人氏は日本経済新聞のインタビューで語った。菅氏の事故対応には今も賛否が渦巻く。

 震災発生後、福島第1原発の全電源喪失がわかると、首相執務室にはホワイトボードが運びこまれた。電源車が何台あるのか。どこを走っているのか。集まる情報はボードに手書きで加えられた。

 東京工業大卒の理系宰相がとった決断は個別の問題に細かな指示を差し挟むことだった。内閣審議官だった下村健一氏のノートには「なぜ非常用ディーゼルエンジンまで止まるんだ」と語る菅氏の言葉が残る。

 原子炉への海水注入、東電本店への電撃訪問――。菅氏は一貫して積極的な「介入」を繰り返した。「日本が崩壊するかもしれない瞬間だった」と振り返る菅氏。一連の行動は適切だったのか。 ドイツ・ルードヴィヒスハーフェン経済大のフランク・レーヴェカンプ教授は一定の理解を示す。「震災時に菅氏が官邸でずっと待機していたらどうだったのか。信用に足るとは言えない東電本店からの助言に基づいて数々の決断を下さねばならなかった」

 震災発生翌日の3月12日。菅氏は福島第1原発を自衛隊ヘリで視察した。「政治的に批判される」。当時、官房長官だった枝野幸男氏はこう反対したが、菅氏は押し切った。法治国家は人間がつくった法律に基づく統治の枠組みだ。人知を超す事態が起きたときには、宰相の現場介入もありうるとの考えに基づく。

 だが、国会の原発事故調査会の報告書は、この視察を「指揮命令系統の混乱を拡大する結果となった」と結論づけた。

 宰相が現場に介入することがあるとしても「良い介入」ではなかったとの見方だ。日大の福田充教授は「専門家の判断を仰ぎ総合的な指示を出すのが最高司令官」と批判。政策研究大学院大の飯尾潤教授は「情報が上がってくるような体制を整えていなかった菅氏自身の問題もある」と言う。

 最善の策の解釈は時代でうつろうこともある。菅氏は1世紀以上前の日露戦争の講和条約交渉にあたった小村寿太郎外相を引き合いに「小村も交渉直後はたたかれた」と話す。歴史はどう判断するか。

■未曽有の危機 津波の濁流は航空自衛隊基地にも押し寄せた

濁流が押し寄せた宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地(2011年3月)=航空自衛隊提供
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濁流が押し寄せた宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地(2011年3月)=航空自衛隊提供

教訓を胸に、復旧した滑走路に飛行チーム「ブルーインパルス」が顔をそろえた(2016年2月、宮城県東松島市)
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教訓を胸に、復旧した滑走路に飛行チーム「ブルーインパルス」が顔をそろえた(2016年2月、宮城県東松島市)


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