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2016年3月11日 (金)

就職年齢制限の見直し、自民が検討着手

今朝の日経新聞にさりげに載ってた記事ですが、

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS10H4D_Q6A310C1PP8000/(就職年齢制限の見直し、自民が検討着手 高齢者の社会参加促す )

 自民党は10日、就職時の年齢制限見直しなどを検討する「差別問題に関する特命委員会」の初会合を開いた。平沢勝栄委員長は「高齢者が社会参加するために、どういう年齢差別を撤廃する必要があるのか検討していく」と述べた。一億総活躍社会の実現へ向けた取り組みの一環で、7月の参院選の公約に反映していく考えだ。

 米国などは採用時の年齢制限を設けることを厳しく制限している。日本も年齢制限は原則禁止されているものの、多くの例外を認めており、年齢制限のある場合が多い。

 平沢氏は「地域を回ると高齢者が年齢のせいで働く場が閉ざされているという話を聞く」と指摘した。定年制との関係なども含め、年齢制限をどう見直すか検討する。同委員会は人種差別的なヘイトスピーチ(憎悪表現)の規制や被差別部落問題の解決へ向けた検討も進める。

いや、日本国の六法全書には、まさに年齢制限を禁止している規定がちゃんとあるんですけど。

雇用対策法 (昭和四十一年七月二十一日法律第百三十二号)

第十条  事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

日本の労働問題とは、(世の中にうじゃうじゃいる全然分かってない人々が考えるような)規制(レギュレーション)の問題ではなく、(企業自らがそうやりたいからそうやっているという意味での)慣行(レギュラシオン)の問題であるということが、解雇「規制」とは逆向きの方向で、よく示されているのがこの年齢差別の問題と言えます。

日本国の法律は募集採用において年齢制限するのはダメだよとちゃんと言っていても、人事労務管理の根本が年齢に基づく仕組みを維持している現実の日本の労働社会においては、そんなものは求人票に何歳までという本音をあえて書かないでおくという枝葉末節の対応で済まされてしまうだけのことに終わってしまうということになるわけです。

ちなみに、本日の日経新聞の1面トップは

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS10H5A_Q6A310C1MM8000/(復興から成長、正念場に 東日本大震災5年 )

震災5周年にかこつけて

・・・日本的な慣行を改めるための解雇ルールは厚生労働省が議論している段階から進まない。国民の暮らしに直結する岩盤規制は簡単に変わらない。

などと、何も勉強していないことを露呈するような軽薄な記事を依然として垂れ流していますな。

六法全書にあるのは、西欧諸国の法規定に比べればはるかに簡素かつ曖昧な

第十六条  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

に過ぎず、それで解雇が困難になっているとすればそれはその企業が自らの慣行によって「何でもやらせるから、やらせることがある限りクビにしない」という自己規制ルールに縛られているだけであり、その「慣行」を解雇規制如きで「改める」ことができると思い込んでいること自体がこの記事を書いた記者の軽薄さを露呈しているわけです。

「岩盤」なるものがあるとすれば、それは六法全書の上にではなく、企業の日々の行動、人事労務管理行動の中にこそあるという、ごくごく当たり前の常識を、実はかつては労働規制緩和を声高に主張していた経済学者、たとえば八代尚宏さんなども良く理解するようになってきており、一部の分かってない評論家を除けば、労働契約法16条は諸悪の根源だから廃止せよ、などという言葉の正確な意味での愚かな議論はほとんど見られなくなっています。日経の記者は愚かな評論家並みの知性のまま推移しているようですが。

話を戻すと、上の日経の記事には大変興味深い一節もありました。

・・・同委員会は人種差別的なヘイトスピーチ(憎悪表現)の規制や被差別部落問題の解決へ向けた検討も進める。

これは、小泉内閣時に国会に提出されながらそのときには野党の反対で成立に至らず、その後はむしろ与党内部の反対で進まなかった人権擁護法案の再検討という面もありそうです。

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