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福島第一原発 廃炉完了に最長40年
3月11日 5時18分

5年前の東京電力・福島第一原子力発電所の事故では、6つある原子炉のうち1号機から3号機までの3基で核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」が起き、1号機と3号機、4号機で建屋が水素爆発しました。国と東京電力がまとめた現在の工程表では、福島第一原発で設備を取り除いて建屋を解体するまで、すべての廃炉作業が完了するには最長で40年かかるとされています。中でも重要なのは、事故当時、それぞれの建屋の最上階に設けられた「使用済み燃料プール」と、原子炉の中にあったすべての核燃料を取り出すことです。

4号機は取り出し完了

このうち4号機では、事故当時は運転停止中ですべての核燃料が燃料プールに移されていてメルトダウンを免れたことから、おととし12月までにすべての核燃料の取り出しが完了しました。

1~3号機は除染等の段階

一方、1号機から3号機はメルトダウンの影響で建屋内が激しく汚染したため、現在は除染やがれきの撤去を進めている段階で、燃料プールからの核燃料の取り出しは1号機と2号機で平成32年度から、3号機は平成29年度からそれぞれ始める計画です。

最大の難関は溶融燃料

さらにその先には、「溶け落ちた核燃料の取り出し」という廃炉工程の中でも最大の難関とされる作業が待っています。建屋内の汚染や核燃料が出す極めて強い放射線のため、溶け落ちた核燃料がどこにどのような状態であるのかは、事故から5年になる現在も分かっていません。

1号機の調査 徐々に進む

このうち1号機では去年3月、「ミューオン」という素粒子を使ってレントゲン写真のように原子炉建屋を透視する調査を行った結果、核燃料のほとんどが原子炉の底を突き抜け、その外側を取り囲む「格納容器」の中に溶け落ちた可能性が高まりました。格納容器の中に落ちた核燃料の様子を捉えるため、1号機では去年4月にロボットを初めて投入したのに続き、今年度中に別のロボットを開発して詳しく調査する予定でした。ところが、格納容器の底にたまっている汚染水の濁りが想定以上に激しいことが分かり、予定は延期されました。ロボットを開発し直したうえで、調査は来年度中に行う計画です。

2号機3号機は調査のめど立たず

一方、2号機と3号機は具体的な調査実施のめどが立たない状態です。このうち2号機は、今年度中に格納容器の内部にロボットを投入する計画でしたが、建屋内の汚染がひどく、人が作業に当たる現場の除染が難航しています。また、3号機では具体的な方法も決まっていない状態です。

「冠水」か「気中」か

溶け落ちた核燃料を取り出すにあたって深刻な課題となるのが、核燃料から出る極めて強い放射線や放射性物質の飛散です。このため、格納容器を水で満たして放射線や放射性物質の飛散を抑える「冠水工法」と呼ばれる方法が検討されていました。しかし、格納容器のどこに穴が開いているか分からないなかで、水漏れを止めることは極めて難しいと予想され、現在は水で満たさずに取り出す「気中工法」という方法も検討されています。
国と東京電力は来年6月をめどに大筋の方針を示したうえで、平成30年度前半に具体的な方法を決め、5年後の平成33年までに1号機から3号機のいずれかで核燃料の取り出しを始めるとしています。いかに着実に廃炉を進めるか。現場は相次ぐ想定外の事態と、強い放射線との戦いに直面する状況が続いています。

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