NY連銀口座から消えた資金-事件の舞台はバングラからフィリピンへ
2016/03/10 15:10 JST
(ブルームバーグ):ニューヨーク連銀にあるバングラデシュ中央銀行の口座から10億ドル(約1100億円)近くを盗み出す企て。マニラのカジノに関係する中国系フィリピン人。緩いマネーロンダリング(資金洗浄)規制。
これらの興味をそそるエピソードは、記録に残るマネーロンダリングとしてはフィリピン最大級となるかもしれない不正事件に登場する。5月のフィリピン大統領選挙を控え、退任するアキノ大統領の功績さえ傷付く恐れさえある。
最初の舞台となったのは人口約1億7000万人のバングラデシュ。同国では最近、低賃金が支える輸出ブームと海外から国内への送金のおかげで外貨準備高が過去最高となった。一部の外貨準備資金はニューヨーク連銀にある口座に預けてあった。
バングラデシュのアブドル財務相は今週、この口座からの1億ドルの未承認の送金につながった「不正」があったとして米連邦準備制度側を非難。バングラデシュ中銀はこの資金がハッカーにより盗み出され、その一部の痕跡をたどるとフィリピンにつながると発表した。
行方の分からなくなった資金について調べている委員会にも参加しているバングラデシュ中銀の当局者は9日、別の送金指示については米連邦準備制度が阻止したと述べた。8億7000万ドルが引き出されようとしていたという。調査は非公開だとして当局者が匿名を条件に明らかにした。
形跡なし米連邦準備制度の報道担当官によれば、連銀システムにハッキングされた形跡はない。口座からの支払い指示は標準プロトコルに準拠し、金融機関が利用している国際銀行間通信協会(SWIFT)のシステムが本物だと承認したと説明した。バングラデシュ当局者は米連邦準備制度側が支払い指示をバングラデシュ中銀に確認すべきだったと指摘、消えた資金を取り戻すため米連邦準備制度に対する法的措置を計画していると語った。
米連邦準備制度の報道官に送金されようとしていた8億7000万ドルやバングラデシュ側の資金回収計画について訪ねたところ、コメントはないと9日に述べた。
フィリピンでは、カジノ監督当局が3つのカジノの銀行口座に疑わしい資金が最大1億ドル入金されたとの報道について調査をしていると発表。カジノの具体名には触れていない。フィリピン議会は2012年、反マネーロンダリング評議会(AMLC)に疑わしい資金の報告を義務付ける機関からカジノを除外することに決定。その後浮上したフィリピンのマネーロンダリング根絶の取り組みが脆弱(ぜいじゃく)である可能性をこの調査が浮き彫りにしている。
抜け穴フィリピン上院で銀行・金融機関委員会の委員長を務めるセルヒオ・オスメニャ議員は、「フィリピンの金融セクター全体にとっての面汚し」と述べ、反マネーロンダリング法に抜け穴があると指摘した。
フィリピン大統領のサニー・コロマ報道官は、バングラデシュ中銀の資金がフィリピンに送られたとの報道についての情報はないと述べ、この問題は独立機関であるAMLCが扱っていると説明。AMLCのトップを兼任するテタンコ・フィリピン中銀総裁にコメントを求め携帯電話に電話したが、応答はない。
フィリピン・デーリー・インクワイアラー紙が中心となってこの問題について報じている。同紙は先月、資金はマニラ首都圏のマカティ市にあるリサール商業銀行のジュピターストリート支店経由でフィリピンに届いた可能性があり、ペソに両替された後に中国系フィリピン人のビジネスマンの口座に預けられたと伝えた。このビジネスマンの氏名の明示はないが、ギャンブラー向けの事業を運営しているという。
原題:The $1 Billion Plot to Rob Fed Accounts Leads to Manila Casinos(抜粋)
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更新日時: 2016/03/10 15:10 JST