そもそも、映画が設定する場所、年代に、慰安所が成り立つほどの軍人がいたのかどうか。穴の中に薪をくべ、ガソリンをかけて火を付け、そこに慰安婦を放り込んで焼き殺したそうだが、当時の日本は「石油一滴は血の一滴」という状況だった。時代考証がなされていないというよりは、「極悪非道の日本人」像を際立たせることを最大の目標に捏造加嘘した結果が「生体焼殺」なのだろう。
封切りから1週間で200万人ほどが、この映画を見たそうだが、韓国紙が伝えた見た人の感想は「日本への怒りが高まった」といった話ばかりだ。
ある高校の歴史担当教師は「子供たちに日帝強制占領期間を教えるうえで映像資料として活用できる良い映画」(朝鮮日報、2016年2月25日)と述べている。韓国人とは、高校の歴史の先生にして、フィクションと史実の区別ができないようだ。
この映画を製作した監督は「ユダヤ人虐殺のような犯罪の話として見てほしい」(朝鮮日報、16年2月5日)と述べている。ならば監督は、焼殺現場の1つぐらい探し出してくればいいのに、そんなことはしない。それでも、観衆はまさに監督が意図した通りに反応している。
かつて左右の全体主義者が得意とした「映画による洗脳」という手法が、韓国では今でも極めて有効なのだ。
■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。