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北朝鮮が国際通話への取締り一層強化 国際人権団体報告
3月10日 21時07分

北朝鮮が国際通話への取締り一層強化 国際人権団体報告
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北朝鮮ではキム・ジョンウン(金正恩)政権以降、市民による携帯電話を使った海外との通話への取締りが一層強化されているとする報告書を国際的な人権団体がまとめました。「こうした情報統制は個人の権利を侵害しており、不当な制約を撤廃すべきだ」と求めています。
北朝鮮では電話やインターネットなどの通信手段を国家が独占していて、体制の維持を目的に、市民と海外との国際通話にも厳しい制限をかけています。
このため、国際的な人権団体、アムネスティ・インターナショナルは、このほど、韓国や日本に逃れた脱北者17人から聞き取りを行い、情報統制の実態を報告書にまとめました。
それによりますと、海外に逃れた親族や仕事相手と直接連絡を取ろうとする北朝鮮の市民は、密輸されるなどした携帯電話を手に入れたうえで、中国との国境付近で中国側の通信網を使って、ひそかに通話するしかないということです。
これに対し、北朝鮮当局は輸入した高性能の機器で電波を探知したり、妨害したりして取締りを強めているということで、キム・ジョンウン政権以降は、こうした海外の情報にアクセスしようとする市民を追跡する専門の部署も設けられたと指摘しています。
アムネスティは「北朝鮮当局の対応は、市民が海外の情報に触れるのを阻止するとともに、人権侵害の実態を世界に隠すねらいがある」と分析していて、「厳しい情報統制は個人の権利を侵害しており不当な制約を撤廃すべきだ」と求めています。

“中国製携帯電話”

アムネスティの報告書によりますと、北朝鮮の市民が、海外にいる親族などとひそかにやり取りする際に使われる携帯電話は、どこで製造されたものかにかかわらず、「中国製携帯電話」と呼ばれているということです。
北朝鮮は1990年代半ばに「苦難の行軍」と呼ばれる深刻な経済難に直面し、国家による配給が滞りました。報告書では、その結果、庶民レベルの経済活動が活発化して非公然の市場が一般的となり、貿易業者が中国から食料や日用品を密輸する一方、携帯電話やSIMカードと呼ばれるICチップを持ち込むようになったとしています。
これにより、北朝鮮当局に発覚しなければ、中朝国境付近で中国側の通信網を使った国際通話が可能になったということで、報告書では「一般市民が北朝鮮内の電話回線の制約を受けることなく外部世界と接触するのを技術的に可能にしたという意味で、携帯電話は画期的な存在だった」としています。
その後、北朝鮮では2008年に合法的な携帯電話事業が始まりましたが、一般市民の使用は国内通話に限定され、海外との通話は認められておらず、当局が体制に揺らぎが生じないよう警戒を続けていることをうかがわせています。

厳しい情報統制 脱北者証言

今回の報告書には17人の脱北者の証言が掲載されています。
このうち、3年前に脱北したという40代の男性はアムネスティの聞き取りに対し「自分も含め多くの人が携帯電話を使っていたが誰も決してそのことを他言しなかった」と証言しています。
また、4年前に脱北した40代の女性は「海外との通話はごく短く切り上げた。携帯電話は特別な場所で使うが、そこへ行く時も人に見られないよう気をつけた」と明かし、市民が当局の監視網をくぐり抜けようと常に警戒を怠っていないことをうかがわせています。
一方、「母の友人は電話を盗聴され労働訓練所に送られた」という20代の女性の証言や「海外との通話が当局に知られ収容所に送られた」という40代の女性の証言からは北朝鮮当局による取締りの厳しさがうかがえます。
今回の調査で得られた脱北者の証言は、厳しい情報統制のもと、外の世界とつながろうとする北朝鮮市民と、それを徹底して取り締まる当局との攻防の一端をかいま見せています。

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