小売店や交通機関、街頭などに広く普及している監視カメラだが、その役割は対象を映像で記録して保存するという単純な監視用途から、「映像によるセンシングデバイス」「IoTにおけるエンドデバイス」に姿を変えつつある。
セキュリティおよび安全管理の総合展示会である「SECURITY SHOW」(東京ビッグサイト、2016年3月8〜11日)に多数のネットワークカメラを展示するパナソニックでは、この変化を「人力で調べる監視システムから、必要な情報を自動で検知・解析するシステムへ」という言葉で表現している。変化する監視カメラとその課題とは何か。
監視カメラの位置付け変化、その背景には、カメラ台数の自体の増加、画像認識技術の進化による用途の拡大、遠隔監視への需要増大などを挙げられる。被写体の許可を得ないということもあり、監視カメラによって撮影された映像の利用は個人情報の保護と密接に関連する問題であり、その点についての議論は現状、十分になされているとは言い難い。
ただし個人を特定できない範囲にて、統計情報として活用するという既に取り組みは行われており、「駅改札の混雑情報可視化」「店舗における顧客動線の可視化」などといったかたちで利用され始めている(関連記事:東急が駅混雑の様子を配信、個人特定できない処理を施し)。いわば旧来の「守るための監視カメラ」から、「活用する/攻めるための監視カメラ」へのシフトチェンジが起きているとも言える。
こうした「必要な情報を自動で検知して解析するシステム」を構築する際に問題の1つとなるのが、この解析処理をどこで行うかだ。現在は映像を集積・管理・蓄積するサーバ(ネットワークレコーダー)で全ての処理行うケースが多いが、パナソニックではカメラ側の処理能力を高めて処理を分散する方法を提案している。
現在パナソニックが監視カメラ側の機能として提供しているのは、映像から必要な人物の顔を抽出する「顔ベストショット」や、映像から人物を含む動体を除去する「MOR(Moving Object Remover」などだ。これら機能実装は一部のモデルにとどまるが、今まではサーバ側で行っていた処理をカメラ側で行うことでサーバのストレージやCPU負荷、ネットワークの伝送負荷を軽減し、トータルコストを削減するのが狙いだ。
顔ベストショットでは、顔の検知と静止画切り出し、鮮明な顔画像として利用できるかの処理判定などをカメラ側で行い、顔の年齢判別や性別推定、登録人物との照合などをサーバ側で行う。サーバへ送る画像の圧縮についても、顔周辺の領域に動的に符号を割り当てることで、全体のデータ容量を削減しながらも顔は鮮明という画像の生成を実現している。
MORについてはカメラは1台ながら「未処理の映像を事後検証用として保存、MOR処理を施した個人判別ができない映像をモニタリング用として監視箇所へ配信」といった使い方が可能であり、駅の混雑状況把握や店舗内の陳列棚監視、物流拠点での状態監視などに利用できる。
加えて、そこに人数カウントや導線と滞在時間を可視化するヒートマップをオーバーレイさせる(この処理はサーバ側で行う)ことで、監視カメラ映像を「プライバシーに配慮したマーケティングツール」として活用することも同社では提案している。
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