六
古いネトゲは、古ければ古いほど、インチキをするためのプログラム(チートプログラム)が充実している。『龍ノ王』は何年も前から韓国語版や英語版が存在しており、その流れでこれ専用のチートプログラムは入手しやすかった。さっそく日本語版にもチートプログラムを用いるプレイヤーが増え始めた。とりわけ、中国からアクセスしてきたと思われるプレイヤーが束になってゲーム内でインチキをしつつ、略奪行為を行う状況が続き、ゲーム内は世紀末救世主伝説の様相を呈していた。
最初は、こういったインチキプレイヤーを、Yから習った管理ツールで一体一体キック(ゲームからの強制退出)しては、そのアカウントDBをJにいじってもらってBANしていた。BANをする機能が『龍ノ王』の管理ツールには備わっていなかったのだ。
「インチキプレイヤーをキックしてJにアカウントをBANしてもらう簡単なお仕事」に疲れつつあったところ、Yにもプライドがあったようで、自らが関わるゲームがインチキプレイヤーにメチャクチャにされていくのを見ていられなかったらしく「私に任せろ、一斉に入れなくしてやる!」と勇ましいことを言う。
YがインチキプレイヤーのアクセスログからIPアドレスを引っ張り出し、疑わしきプレイヤーを一斉にログイン停止にした。
平穏な日は一日と続かず、翌日から停止したはずの見覚えのあるキャラクター名が跳梁跋扈するようになった。
「あれ?Yさんさ、普通BANしたら、二度とゲーム内に入れないはずだし、プレイヤーは同名のキャラも作れないはずだよね?」
「そうです。私が全部パスワードを変更しましたので、二度と入れないです」
「え?今、パスワード変更って言った?」
「はい。怪しいユーザー全部、パスワード変更しました」
私は黙ってゲームサイトの左側にあるログイン窓に併設されたリンク文字列を指さして言った。
「これ、『パスワードを忘れた方はこちら』ってリンクなんだけどさ、これクリックすると、パスワードがユーザーのメールアドレスに通知されるんだよ。おまえさんが変えたパスワードは、これクリックしたら、バレちゃうわけ。しかも一斉に同じヤツに変えたんだろどうせ……」
果たしてYがした対策とは、私の言ったとおりのものだったわけだが。