四
『龍ノ王』テストサービスオープンを二週間後に控え、数百メガバイトに及ぶゲームソフトをプレイヤーにダウンロードしてもらうために、専用のストレージと回線を借りることになった。オープン時のラッシュを乗り切りさえすれば良いので、安くて短期間契約できるものがベストだと思い、探した。帯域100Mbps共用でストレージは1GB、24時間障害対応の上、ダウンロードが集中する一週間、5万円で良いというプランを出してきたストレージサービス業者があったので、そこに決めた。
ゲームソフトのインストールファイルのアップロードも完了し、いよいよ先行会員登録を始めることとなった。これが一週間前である。
一週間で三万五千人ほどの会員登録があった。同時接続者数は経験上、五分の一から十分の一に収まるので、サーバースペックとしても何の心配もない。そして、サービス開始三日前に、先行的にダウンロードサーバーをオープンし、当日のラッシュを避けるよう誘導した。
アクセスはそれなりに集中したが、サーバー自体がダウンすることはなかった。だが、ダウンロードができない。遅いのではなく「できない」のだ。試しにファイルを現在ダウンロードされているサーバーとは別のゲームサーバー上にコピーし、サイトにリンクを張った。こちらはそれなりに遅くなったが、できないということはなかった。
慌ててストレージサービスの業者に電話をした。深夜だったが24時間対応の看板に偽りなく、丁寧に対応してもらうことができた。そしてサラッと「あ、同時に張れるダウンロードのセッションは10までです」とのたまった。
電話口で「そんなこと聞いてない、非常事態だからセッションを増やせ」とワガママをまくしたてた。先方のエンジニアは共用の回線だからと随分粘ったが、こちらの粘り勝ちというか、利用の少ない深夜帯になってしまったこともあり、なし崩し的に30くらいまで増やしてくれた。しかしPは激怒して上のものを出せだの電話で長い時間喋っていた。面倒なのでそれは見なかったことにして放置することにした。
次の日、ストレージサービス業者の営業が上司とともに来社した。
頭がきれいに丸められていた。